第208章:限界の先
地下最深部。
巨大な“門”。
黒い霧。
そして――
目の前に立つ、黒い外套の人物。
「……遅かったな」
その声。
どこか、自分に似ている。
レイの背筋に寒気が走る。
◆
ミナが一歩前へ出る。
「誰?」
剣を構える。
「敵ってことでいい?」
◆
黒衣の人物は答えない。
ただ。
ゆっくりと手を上げた。
その瞬間。
空間が、歪む。
ドゴォッ!!
通路全体に圧力が走る。
「っ!?」
ガルドが即座に盾を展開。
だが押される。
「重っ……!!」
◆
ユーノが顔を変える。
「まずい!」
「こいつ、空間干渉のレベルが違う!」
◆
レイの目が細くなる。
(……似てる)
違う。
似ているんじゃない。
同じ系統だ。
◆
黒衣の人物が低く言う。
「“門”に近づくな」
「今のお前では壊れる」
◆
レイが眉をひそめる。
「……何者だ」
「今は敵でいい」
その瞬間。
消えた。
◆
「レイ!!」
ミナの声。
直後。
ドンッ!!
レイが横へ吹き飛ぶ。
壁に叩きつけられる。
「っ……!」
速い。
見えなかった。
◆
「囲む!」
カレンが叫ぶ。
ミナ、ガルドが同時に動く。
だが。
ザンッ!!
斬撃が空を切る。
いない。
◆
背後。
黒衣が現れる。
アイリスが干渉固定。
「今!」
ミナが飛び込む。
だが。
ピシッ。
固定が“壊される”。
「嘘っ!?」
◆
レイは息を整える。
右腕のヒビ。
侵食傷。
限界に近い。
でも。
目の前の相手。
分かる。
ここで止めなきゃいけない。
◆
(全部使う)
危険なのは分かってる。
壊れるかもしれない。
それでも。
◆
レイが剣を握る。
蒼い光。
さらに深い黒。
二つが混ざる。
空間が震え始める。
◆
「レイ!?」
ミナが顔を変える。
「それヤバいやつ!」
◆
「……止まれない」
静かな声。
「ここで負けたら、もっとヤバい」
◆
剣が変化する。
紋様が増える。
蒼と黒の光。
地下全体が軋む。
ユーノが青ざめる。
「干渉値が暴走してる!」
◆
レイが構える。
「――《境界剣技・零界断》」
◆
消えた。
黒衣の人物の前。
一瞬。
剣がぶつかる。
衝撃。
空間が割れる。
◆
「……成長は早い」
黒衣が低く言う。
「でも、まだ甘い」
◆
次の瞬間。
鋭い衝撃。
レイの身体が止まる。
「……っ」
◆
視界が揺れる。
身体から力が抜ける。
相手の攻撃が、深く入った。
動きが止まる。
◆
「レイ!!」
ミナの声。
空気が凍る。
◆
だが。
レイは倒れなかった。
息を乱しながら。
剣を、まだ握っている。
「……まだ」
声が震える。
「終わってない」
◆
黒衣の人物が、初めて目を細める。
「……そこまで立つか」
◆
ミナが怒った顔で前へ出る。
「もう十分!」
「今度はあたしたちも戦う!」
カレンも剣を構える。
アイリスが干渉準備。
◆
そして。
巨大な“門”が――
ゆっくり開き始める。
奥から。
もっと異質な気配が漏れ出す。
◆
黒衣の人物が初めて焦りを見せる。
「……最悪だ」
「間に合わなかったか」
◆
戦いは。
次の段階へ進もうとしていた。




