第206章:蒼き閃
地下通路。
崩壊しかけた空間。
裂けた壁の向こうで、“目”が震えている。
『……危険度上昇』
『……優先排除対象――』
その言葉が終わる前だった。
◆
ドンッ。
レイの姿が――消えた。
「……え?」
ミナが目を瞬かせる。
◆
次の瞬間。
ザンッ!!
黒い腕が、空中で断たれる。
再生する前に。
さらに。
ザンッ!!
ザンッ!!
ザンッ!!
蒼い斬光だけが、地下空間を駆け抜ける。
◆
「速っ……!」
カレンが目を見開く。
さっきまでとは違う。
剣に“慣れてきている”。
いや。
剣がレイに馴染み始めている。
◆
レイは地面を蹴る。
空間を踏むように。
一瞬で位置を変える。
黒い侵食体の死角。
真上。
背後。
壁際。
次々と移動。
◆
「《境界歩法》……」
アイリスが小さく呟く。
「まさか自然に……?」
◆
レイは剣を振る。
「遅い」
ザンッ!!
侵食体の“核”だけを切る。
再生前に崩壊。
◆
さらに三体。
腕が迫る。
だが。
ピシッ。
空間干渉。
一瞬だけ軌道がズレる。
「そこ」
斬る。
消える。
◆
ミナが笑い始める。
「なにそれ!」
「急に主人公すぎ!」
「自分でもよく分からん!」
レイも返しながら次を斬る。
◆
ガルドが豪快に笑う。
「ははっ!前衛いらねぇじゃねぇか!」
「いや必要!」
マリーナが即ツッコミ。
「全部任せたら倒れるでしょ!」
◆
その通りだった。
レイの呼吸は少しずつ荒くなる。
剣の蒼い光が、不安定に揺れる。
力は強い。
だが負荷が大きい。
◆
巨大な“目”が動く。
空間が歪む。
黒い槍が無数に展開。
『……排除』
◆
「レイ!」
ミナが叫ぶ。
だが。
レイは静かだった。
剣を握る。
目を細める。
◆
(核……見えた)
目の奥。
深い場所。
繋がっている点。
◆
「一気に行く」
姿勢を低くする。
蒼い光が足元へ走る。
空気が震える。
◆
「《境界剣技・閃界連刃》」
◆
――消えた。
次の瞬間。
地下通路に蒼い軌跡だけが残る。
ザンッ!!
ザンッ!!
ザンッ!!
連続する斬撃。
黒い槍が次々と崩れる。
侵食体が消える。
歪みが閉じる。
◆
そして最後。
巨大な“目”の前。
レイが現れる。
「終わり」
◆
一閃。
ザァァンッ!!
“目”が真っ二つに裂けた。
沈黙。
そして――
黒い空間が、崩れ始める。
『……接続……断絶……』
◆
ミナが剣を肩に担ぐ。
「強すぎでしょ」
少し笑う。
でもその目は少し心配そう。
「……大丈夫?」
◆
レイが剣を消そうとした瞬間。
ギィ……
剣が不自然に震える。
手に、痛み。
ピシッ。
腕に薄い光のヒビが走る。
「っ……」
◆
アイリスの顔が変わる。
「まずい」
「使いすぎ」
◆
そのとき。
地下最深部から――
ドクン。
重い脈動。
さっきとは比較にならない気配。
ユーノが青ざめる。
「冗談だろ……」
「今倒したの、本当に前座だった」
◆
地下のさらに奥。
巨大な“門”のような反応が――
ゆっくり開き始めていた。




