第205章:境界剣技
地下空間。
崩れる天井。
歪む壁。
巨大な“目”が、ゆっくりと開く。
『……危険認定』
『……排除開始』
◆
次の瞬間。
ドゴォォッ!!
通路全体を埋め尽くすほどの黒い腕が襲いかかる。
「多っ!?」
マリーナが顔を引きつらせる。
◆
「ガルド!」
「おう!」
大盾が展開。
ドンッ!!
黒い腕を押し返す。
だが止まらない。
押し潰される。
「力バカかよ!!」
◆
ミナが突っ込む。
ザンッ!!
数体を切る。
だが再生。
「キリない!」
◆
レイは一歩前へ出る。
右手の剣が脈動する。
ギィ……
まるで、何かを求めるように。
◆
(……分かる)
頭の中へ流れ込む感覚。
この剣。
ただ斬るためじゃない。
“境界”に干渉する。
なら――
◆
「レイ!」
ミナが叫ぶ。
「なんか来る!」
巨大な黒槍が形成される。
一直線。
レイ目掛けて。
◆
だが。
レイは動かなかった。
剣を構える。
静かに息を吐く。
◆
「……いける」
初めてなのに。
なぜか知っている。
◆
剣を下段に構える。
蒼い光が刃を走る。
空間が揺れる。
◆
「――境界断」
小さく呟く。
そして。
一閃。
◆
ザンッ――
音が、遅れて来た。
◆
巨大な黒槍が。
空間ごと。
真っ二つに裂ける。
しかも。
後ろの壁にまで一直線の裂け目。
◆
沈黙。
「……え?」
ミナが止まる。
ガルドも固まる。
「今、何した?」
◆
ユーノが即解析。
「違う……」
「ただ斬ったんじゃない」
「“存在の繋がり”を断った」
◆
巨大な目が揺れる。
『……異常』
『……理解不能』
◆
レイ自身も驚いていた。
「……今の」
普通じゃない。
剣が導いた。
◆
だが次の瞬間。
もっと巨大な黒い波が押し寄せる。
通路全体を覆うレベル。
「うわっ!」
「避けられない!」
◆
レイの中で、何かが閃く。
もう一つ。
剣が教えてくる。
◆
剣を握る。
魔力。
いや、もっと深い感覚。
向こう側との境界。
それを、刃に乗せる。
◆
「……なら」
目を細める。
「まとめて消えろ」
◆
剣を横へ構える。
蒼い紋様が広がる。
地面に魔法陣。
でも普通じゃない。
空間そのものに刻まれる。
◆
「《境界剣技・虚空裂界》」
◆
振り抜く。
ドンッ――!!
◆
世界が、一瞬止まった。
◆
次の瞬間。
空間そのものに、巨大な斬撃線。
黒い波が。
壁が。
侵食空間が。
まとめて――
裂けた。
◆
静寂。
完全消滅。
再生なし。
◆
全員が絶句。
ミナが一番最初に言った。
「……それズルくない?」
◆
レイは肩で息をする。
「……反動エグい」
膝が少し震える。
剣も不安定に揺れる。
◆
アイリスが目を見開く。
「その技……」
「本来なら使えない」
◆
巨大な目が、初めて後退する。
『……危険度上昇』
『……優先排除対象変更』
◆
“目”が完全にレイだけを見る。
空気が凍る。
◆
レイは剣を構え直す。
少し笑う。
「……来いよ」
「次は核ごと斬る」
◆
その瞬間。
地下深部から――
さらに巨大な反応が目覚める。
ユーノの顔色が変わる。
「待て……」
「これ、まだ前座だ」
◆
地下最深部。
何かが――
起き始めていた。




