第203章:王都地下異変
ギィィィィン――!!
警報音が、作戦室全体を震わせる。
『地下第七層にて観測異常発生!』
『非戦闘員は直ちに退避!』
赤い警告灯。
張り詰める空気。
◆
カレンが即座にコートを翻す。
「説明は移動しながら!」
ガルドも立ち上がる。
「久々にデカいの来たな……!」
ユーノは既に端末を操作している。
「反応速度が異常だ」
「発生から拡大まで三十秒未満」
「自然発生じゃない」
◆
レイが眉をひそめる。
「誘発された?」
「可能性大」
ユーノが即答する。
その横で。
アイリスが静かに目を閉じていた。
そして。
「……近い」
小さく呟く。
「すごく嫌な感じがする」
◆
ミナが剣を担ぐ。
「つまり当たりってことね」
「前向きだなぁ……」
マリーナが苦笑する。
◆
一行は中央魔導院の地下通路へ向かう。
重厚な扉。
石造りの階段。
下へ行くほど、空気が冷たくなる。
◆
「王都地下ってこんな広いの?」
マリーナが周囲を見回す。
「元々は旧時代の遺構です」
リュシエルが答える。
「その上に王都が築かれた」
「つまり」
ミナが嫌そうな顔をする。
「ヤバいもん埋まってそう」
「実際かなりあります」
「うわ」
◆
さらに下へ。
そのとき。
レイの頭に、ノイズが走る。
『……来る』
ピタッ。
レイが止まる。
「レイ?」
ミナが振り返る。
◆
次の瞬間。
通路の壁が――
グニャリと歪んだ。
「っ!?」
空間が曲がる。
石壁が液体みたいに波打つ。
そして。
そこから“腕”が伸びる。
黒い腕。
人ではない。
◆
「敵襲!」
カレンが即座に抜刀。
赤い魔力刃が走る。
ズバァッ!!
腕を切断。
だが。
切れた部分が空中で蠢く。
「気持ち悪っ!」
ミナが飛び込む。
ザンッ!!
追撃。
◆
だが壁全体が歪み始める。
ボコッ、ボコッ、と。
無数の黒い腕。
「増えてる!」
マリーナが炎を放つ。
ゴォォ!!
炎が通路を埋める。
だが完全には止まらない。
◆
「通常個体じゃない!」
セラが叫ぶ。
「空間そのものから出てる!」
◆
アイリスが前へ出る。
「下がって」
静かな声。
次の瞬間。
彼女の瞳が金色に発光する。
ピシッ。
空間が“固定”される。
壁の歪みが止まる。
◆
レイが目を見開く。
(……同じ)
自分と似た力。
だが使い方が違う。
もっと安定している。
◆
アイリスが言う。
「レイ」
「中心を探して」
「……分かるのか?」
「あなたなら見えるはず」
◆
レイは目を閉じる。
集中。
ノイズ。
無数の歪み。
その奥。
一番深い場所。
◆
「……下だ」
目を開く。
「もっと深いところに“核”がある」
◆
ユーノが舌打ちする。
「やっぱりか」
「上層でこれなら、核はかなり危険だぞ」
◆
その瞬間。
地下全体が大きく揺れた。
ドゴォン!!
天井から瓦礫が落ちる。
「うわっ!」
マリーナが叫ぶ。
◆
『警告』
『地下第七層、崩壊開始』
『繰り返す――』
警報が途切れる。
ノイズ。
そして。
聞いたことのない声が混ざる。
『……観測成功』
全員が凍る。
◆
レイの背筋が冷える。
今のは。
警報じゃない。
“向こう側”だ。
◆
アイリスが低く呟く。
「……直接侵食」
カレンが剣を握り直す。
「最悪ね」
◆
そのとき。
通路の奥。
暗闇の中に――
“目”が開いた。
巨大。
黒い。
人間ではない。
◆
ガルドですら顔を引きつらせる。
「おいおい……」
「王都地下に何飼ってんだよ……」
◆
レイは静かに前へ出る。
胸の奥がざわつく。
あれを知っている。
いや。
“向こう側”が、こちらを見ている。
◆
黒い目が、ゆっくり細まる。
そして。
『……干渉核』
レイへ向けて。
『……発見』
◆
地下空間が、大きく歪み始める。




