第202章:対観測者部隊
会議終了後。
レイたちは、王立中央魔導院の上層区画へ案内されていた。
長い廊下。
白い壁。
静かな空気。
だが、すれ違う人間全員から“ただ者じゃない”気配がする。
「胃が痛くなってきた」
マリーナが小声で呟く。
「今さら?」
ミナが笑う。
「北の森の方がヤバかったでしょ」
「怖さの種類が違うの!」
◆
案内役の騎士が立ち止まる。
「ここだ」
巨大な扉。
そこには新しい紋章が刻まれていた。
円環の中に、歪んだ星。
「これ……」
セラが目を細める。
「対観測者部隊の仮紋章です」
リュシエルが説明する。
「急造組織なので、まだ正式名称も定まっていません」
「行き当たりばったり感すごいね」
ミナが苦笑する。
◆
扉が開く。
中は広い訓練兼作戦室。
そして――
既に何人かがいた。
◆
最初に目に入ったのは。
長い赤髪の女性。
軍服風の黒コート。
鋭い目。
壁にもたれたまま、こちらを見る。
「……へぇ」
口元だけ笑う。
「例の干渉者って、もっと化け物っぽいの想像してた」
◆
ミナが即反応。
「感じ悪」
「事実確認よ」
赤髪の女は肩をすくめる。
「私はカレン・ヴァルディア」
カレン・ヴァルディア
「王国軍特殊戦術部隊所属」
「前線担当ってところ」
◆
次。
部屋の奥。
本を読んでいる少年。
年齢はレイたちと近い。
銀髪。
眼鏡。
こちらを見ずに言う。
「騒がしい」
「……誰こいつ」
ミナがひそひそ言う。
少年は本を閉じる。
「聞こえてる」
淡々と立ち上がる。
「ユーノ・アステル」
ユーノ・アステル
「解析専門」
「戦闘は苦手」
「でも君たちより観測理論は理解してる」
「うわ性格」
「事実だ」
◆
さらに。
窓際にいた大柄な青年が手を上げる。
「おー、来た来た!」
明るい声。
筋肉。
でかい。
「俺はガルド!」
ガルド・ベイラン
「前衛担当!」
「よろしくな!」
ミナが少し安心した顔になる。
「やっと普通っぽい人来た」
「失礼ねぇ」
カレンが笑う。
◆
最後。
部屋の中央。
一人の少女が静かに座っていた。
黒髪。
白い外套。
目を閉じている。
だが――
レイは、その瞬間に分かった。
(……この子)
“近い”。
向こう側に。
◆
少女がゆっくり目を開ける。
金色の瞳。
視線が、真っ直ぐレイへ向く。
「……初めまして」
静かな声。
「私はアイリス」
アイリス・ノクス
「あなたと同じ」
少し間を置く。
「“見える側”の人間」
◆
空気が止まる。
セラが息を呑む。
「……まさか」
リュシエルの表情も変わる。
「適性保持者……」
◆
ミナがレイを見る。
「レイと同じって?」
アイリスは静かに答える。
「完全ではないけど」
「私は“観測”に触れても壊れない」
◆
レイの背筋に寒気が走る。
初めてだ。
自分と似た存在。
◆
アイリスはじっとレイを見る。
そして、小さく呟く。
「……でも」
「あなた、かなり深いところまで行ってるね」
その瞬間。
レイの中で、何かが反応した。
ピシッ。
一瞬だけ空間が歪む。
カレンが即座に警戒姿勢。
ガルドも真顔になる。
ユーノだけが冷静に呟く。
「……やっぱり危険だ」
◆
だがアイリスは動じない。
むしろ少しだけ安心したように言う。
「よかった」
「まだ戻って来れてる」
◆
レイは目を細める。
「……何を知ってる」
アイリスは少し黙る。
そして。
「全部じゃない」
「でも」
静かに言った。
「“向こう側”は、もう王都の近くまで来てる」
◆
その瞬間。
部屋全体が――
微かに揺れた。
全員の顔が変わる。
ユーノが即座に魔法端末を見る。
「……反応増大」
カレンが舌打ち。
「最悪のタイミングね」
◆
次の瞬間。
警報が鳴り響く。
ギィィィィン!!
『緊急警報!』
『王都地下層にて歪曲反応発生!』
『観測異常、急速拡大中!』
◆
沈黙。
そして。
ミナがニヤッと笑う。
「歓迎会、派手すぎない?」
レイは静かに立ち上がる。




