第201章:中央招集
数日後。
王都行きの列車は、雪原を抜けて南へ走っていた。
窓の外を流れる景色を眺めながら、ミナがぼそっと言う。
「……でっか」
遠く。
巨大な城壁が見えてくる。
王都。
王国最大の都市。
政治、軍事、魔術、経済――
すべての中心。
◆
「緊張してる?」
マリーナが聞く。
「してない」
即答。
だが尻尾は少し落ち着きなく揺れている。
レイが横で笑う。
「分かりやすいな」
「うるさい」
◆
列車が減速する。
ホームには、既に兵士たちが並んでいた。
「歓迎って感じじゃないね」
ミナが小声で言う。
「警戒されてる」
リオンが短く返す。
◆
扉が開く。
王都の空気は、北方と違った。
人が多い。
音が多い。
熱量がある。
だがその裏に――
妙な緊張感。
◆
「学院所属の遠征隊だな」
迎えに来ていたのは、王国直属の騎士。
白銀の装備。
鋭い視線。
「案内する」
愛想はない。
◆
王都内部。
巨大な街並み。
高層魔導塔。
複雑な水路。
魔導式交通路。
マリーナが完全にきょろきょろしている。
「すご……」
「田舎者丸出し」
ミナが笑う。
「ミナも見てたじゃん」
「見てないし」
レイが苦笑する。
◆
やがて。
一行は中央区へ到着する。
そこにあったのは――
巨大な白い建造物。
「王立中央魔導院」
セラが静かに言う。
「王国最高機関の一つ」
◆
中へ入る。
空気が変わる。
静かだ。
だが鋭い。
ここにいる人間全員が、“何か”を知っている。
そんな感覚。
◆
案内されたのは、円形会議室。
扉が開く。
中には既に複数人。
軍。
魔術師。
研究者。
そして――
王国上層部。
◆
「来たか」
低い声。
中央席に座る老人が、レイたちを見る。
「北方遠征隊」
その視線は、真っ直ぐレイへ向いた。
「特に君だ」
◆
レイは少し眉をひそめる。
「……何か?」
老人は静かに言う。
「君は、“向こう側”を見たな?」
空気が止まる。
◆
ミナが即座に警戒。
セラも目を細める。
だが老人は続ける。
「安心しろ」
「責めるつもりはない」
「むしろ逆だ」
◆
「我々は、君を必要としている」
◆
沈黙。
レイの目が細くなる。
「……どういう意味だ」
◆
老人が指を鳴らす。
部屋中央に、立体魔法陣が展開。
王国全土の地図が浮かぶ。
そこには――
無数の赤い光点。
「っ……」
マリーナが息を呑む。
「こんなに……?」
◆
「観測異常は増加している」
老人が淡々と続ける。
「北方だけではない」
「西部海域」
「地下遺跡」
「旧帝国領」
「王都地下」
次々と赤い点が灯る。
◆
「そして」
老人の声が低くなる。
「通常の魔導士では対処できない段階に入った」
その言葉の意味。
全員が理解する。
◆
レイが静かに聞く。
「……だから俺?」
「そうだ」
即答。
「干渉者」
その単語に、会議室の空気が揺れる。
◆
ミナが前に出る。
「ちょっと待って」
「レイを便利道具みたいに扱う気?」
鋭い声。
一部の騎士が反応する。
だが老人は冷静だった。
「違う」
「彼は既に中心にいる」
◆
レイの背筋に冷たいものが走る。
「中心……?」
老人は地図を見る。
「観測者は、君を認識している」
「そして」
静かに告げる。
「君を通して、“こちら側”へ干渉し始めている」
◆
部屋が静まり返る。
セラが小さく呟く。
「……そんな」
リュシエルも顔を曇らせる。
「進行が早すぎる」
◆
「だから時間がない」
老人が立ち上がる。
「王国は、対観測者組織を正式に編成する」
「その初動部隊として――」
視線が集まる。
レイたちへ。
「君たちに参加してもらいたい」
◆
王都。
国家。
世界。
全てが、動き始める。
そしてレイは理解する。
もう戻れない。
これは学院の事件じゃない。
世界規模の戦いだ。
◆
その瞬間。
レイの耳にだけ――
声が響く。
『……見つけた』
ゾワッ。
背筋が凍る。
誰にも聞こえていない。
だが確かに。
“向こう側”が近づいている。




