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ノヴァリアの魔導師〜転生したら全属性使いだった〜  作者: にゃふ
第18話:北方遠征編

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第200章:帰還、そして静かな不安

 北方の空は、帰路に入ってからもずっと灰色だった。


 雪が降りそうで降らない。


 重たい雲。


 冷たい風。


 その中を、遠征隊は静かに進んでいた。


 ◆


「……ほんとに歩けるの?」


 マリーナが心配そうにレイを見る。


「無理ならまた背負うけど」


 ミナが横から言う。


 レイは苦笑した。


「それ、地味に恥ずかしいからやめろ」


「生きてるだけマシでしょ」


「それはそう」


 短いやり取り。


 だが、その空気だけで少し安心できた。


 ◆


 とはいえ。


 レイの顔色はまだ悪い。


 身体の奥が、妙に冷えている。


 魔力切れとは違う。


 もっと深い部分。


 “存在”そのものが軋んでいる感覚。


 ◆


 セラが横を歩きながら、小声で言う。


「……無理しないで」


「してない」


「嘘」


 即答だった。


 レイは少し黙る。


「……そんな分かりやすい?」


「かなり」


 ◆


 リュシエルも後ろから口を開く。


「あなたの状態は極めて不安定です」


「干渉能力の使用は控えてください」


「了解」


 返事は軽い。


 だが全員、分かっていた。


 もう以前と同じではない。


 ◆


 二日後。


 北方拠点都市グランヴェル


 雪と石造りの街。


 防壁に囲まれた北方の中継拠点。


 遠征隊が門をくぐった瞬間――


「戻ったぞ!」


 兵士たちがざわつく。


「北の森から生還したのか!?」


「しかも中心部まで行ったって……」


 視線が集まる。


 特にレイへ。


 ◆


 拠点内部。


 緊急医療室。


「じっとして」


 セラがレイをベッドへ押し戻す。


「いや元気なんだけど」


「倒れた人は全員そう言う」


「ぐうの音も出ない」


 ◆


 ミナが近くの椅子へ座る。


「結局さ」


「レイのアレ、何なの?」


 部屋の空気が少し止まる。


 セラとリュシエルが視線を合わせる。


 レイ自身も少し黙った。


「……分からん」


 結局、それしかない。


「でも」


 レイは天井を見る。


「向こう側に近づいてる感覚はある」


 ◆


「それ危なくない!?」


 マリーナが即反応。


「めちゃくちゃ危ない」


 レイも普通に認める。


 ミナが呆れる。


「自覚あるんだ」


「ある」


 ◆


 リュシエルが資料を机へ置く。


「北方の白化現象は停止しました」


「ですが」


 次の紙を出す。


「別地点で新たな歪みを確認」


「うわぁ……」


 マリーナが頭を抱える。


「休ませる気ないじゃん」


 ◆


 地図が広げられる。


 赤い印。


 王国西部。


 海沿いの都市。


「今度は海?」


 ミナが眉を上げる。


「反応パターンが違います」


 セラが真剣な顔で言う。


「北方は“侵食型”」


「でもこれは――」


 リュシエルが続ける。


「“転移型”です」


 ◆


 レイの目が細くなる。


「……向こうから来るんじゃなく」


「こっちがズレるタイプか」


「その可能性があります」


 空気が重くなる。


 ◆


 そのとき。


 コンコン、と扉が叩かれる。


「失礼する」


 入ってきたのは、北方拠点の司令官だった。


 壮年の男性。


 険しい顔。


「学院の諸君」


 視線が、レイへ向く。


「特に君だ」


「……俺?」


「中央から要請が来ている」


「要請?」


 司令官は静かに言った。


「王都へ来てもらう」


 ◆


 沈黙。


 ミナが口を開く。


「え、急に?」


「状況が変わった」


 司令官は低い声で続ける。


「“観測者”について、王国も動き始めた」


 ◆


 レイはゆっくり目を閉じる。


 学院だけじゃない。


 北方だけでもない。


 世界が、もう動き始めている。


 ◆


 窓の外。


 灰色の空。


 その向こう。


 誰かが、こちらを見ている気がした。

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