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ノヴァリアの魔導師〜転生したら全属性使いだった〜  作者: にゃふ
第18話:北方遠征編

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第199章:境界の底

 暗闇。


 だが前とは違う。


 ただの“何もない空間”ではない。


 底がある。


 深さがある。


 そして――


 沈んでいる感覚。


 ◆


 レイは、ゆっくりと目を開けた。


「……ここは」


 声が響く。


 空間が応答するように、わずかに揺れる。


 足元を見る。


 黒い水面のようなもの。


 その上に立っている。


 だが沈まない。


「またこの感じか」


 呟く。


 だが、前より深い。


 明らかに。


 ◆


 遠くに、光が見える。


 白い点。


 そして――


 黒い点もある。


 複数。


「……増えてるな」


 あれが“観測者”。


 理解できてしまう。


 ◆


 一歩、歩く。


 波紋が広がる。


 その中に、映像が浮かぶ。


 ミナ。


 自分を背負っている。


「……ちゃんと運んでくれてるか」


 小さく笑う。


 だがその映像が歪む。


 ノイズが走る。


 ◆


『……観測……安定……』


 声。


 前に聞いたもの。


 振り向く。


 最初に会った“影”がいる。


 少しだけ、輪郭がはっきりしている。


「また来たのか」


『……ここは近い……』


 短い返答。


 ◆


「近い、ね」


 レイは周囲を見る。


 確かに。


 ここはもう“向こう側に寄りすぎている”。


「で?」


「また勧誘?」


 少し皮肉っぽく言う。


 影は揺れる。


『……違う』


『……警告……』


 レイの目が細くなる。


「珍しいな」


 ◆


『……干渉過多……』


『……崩壊進行……』


 レイは自分の手を見る。


 輪郭が、微妙に揺れている。


 現実で言われた“ズレ”。


 それと一致する。


「……やっぱりな」


『……このままでは……消える』


 静かな宣告。


 ◆


 レイは少しだけ考える。


 そして――


 肩をすくめる。


「それでもいいって言ったら?」


 影が止まる。


 わずかに揺れる。


『……理解不能……』


「だろうな」


 小さく笑う。


 ◆


「でもさ」


 レイは顔を上げる。


「まだ終わってないんだよ」


 ミナたちの姿が、波紋に映る。


 セラ。


 マリーナ。


 リオン。


 リュシエル。


 「まだやることある」


 ◆


 そのとき。


 空間が大きく揺れる。


 ドクン。


 黒い波が広がる。


 別の気配。


 もっと濃い。


 もっと重い。


「……来たな」


 ◆


 空間が裂ける。


 そこから現れるのは――


 より巨大な“観測者”。


 形は曖昧。


 だが圧が違う。


 明確な“格上”。


 ◆


『……発見……干渉核……』


 レイを見ている。


 完全に。


 標的として。


「はぁ……」


 レイがため息をつく。


「やっぱそうなるか」


 ◆


 最初の影が言う。


『……退避……推奨……』


「できるならしてる」


 だが身体は動く。


 いや――


 ここでは動ける。


 ◆


 巨大な観測者が手を伸ばす。


 空間そのものが歪む。


 レイの身体が引き裂かれそうになる。


「っ……!」


 痛み。


 現実以上の感覚。


 ◆


(……まだだ)


 レイは歯を食いしばる。


 手を上げる。


 ◆


「ここは――」


 声が響く。


「まだ、俺の側だ」


 ◆


 空間が揺れる。


 わずかに。


 ほんの少しだけ。


 だが――


 抵抗できる。


 ◆


 巨大な観測者が止まる。


 一瞬。


 レイを“認識し直す”。


『……異常……』


 ◆


 レイは笑う。


 苦しそうに。


 それでも。


「知ってるか?」


 小さく言う。


「しぶといんだよ、俺」


 ◆


 だがその瞬間。


 身体の輪郭が崩れる。


「っ……」


 限界が近い。


 ◆


 最初の影が言う。


『……選択……最後……』


 レイを見る。


『……残るか……戻るか……』


 ◆


 沈黙。


 ほんの一瞬。


 レイは――


 目を閉じる。


 ◆


 ミナの声。


 「戻ってきなよ」


 あの言葉。


 ◆


「……決まってる」


 目を開く。


「戻る」


 ◆


 その瞬間。


 空間が弾ける。


 光。


 音。


 全てが崩れる。


 ◆


 現実。


 ◆


 ミナの背中。


 夕焼け。


 その中で。


 レイの指が、はっきりと動く。


「……っ」


 ミナが気づく。


「レイ!?」


 ◆


 ゆっくりと。


 レイの目が、開く。


 まだぼやけている。


 だが――


 確実に戻ってきた。


 ◆


 その瞳の奥。


 一瞬だけ。


 “深い何か”が揺れた。

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