第197章:白の核
森の中心。
そびえ立つ白い柱。
その内部から現れた“それ”は――
人の形をしていた。
だが。
輪郭が曖昧。
身体は半透明の白。
内部に、ゆっくりと回転する核のような光。
「……あれが本体」
セラが低く言う。
ミナが肩を回す。
「いいね」
剣を構える。
「さっきのよりは楽しそう」
◆
白の核が、ゆっくりと腕を上げる。
その瞬間。
ドクン。
森全体が脈打つ。
「……やばい」
レイが呟く。
地面が光る。
白い紋様が広がる。
「全員、離れろ!」
◆
ドォン!!
地面から、無数の白い槍が突き上がる。
「うわっ!」
マリーナが飛び退く。
ミナも回避。
「範囲攻撃か!」
◆
セラが解析する。
「この範囲……」
「柱中心に広がってる!」
「つまり?」
ミナが聞く。
「近づくほど危険ってこと!」
「面倒すぎ!」
◆
その瞬間。
白の核が、こちらを見る。
そして――
レイへ腕を向けた。
「っ!」
ピシッ。
空間が歪む。
レイの身体が一瞬、ズレた。
「……は?」
ミナが固まる。
レイの姿が、わずかに二重に見える。
セラが叫ぶ。
「存在干渉!」
「位置をズラしてる!」
◆
レイが歯を食いしばる。
「こいつ……同じことしてきてる」
自分と同じ系統。
だが――
精度が違う。
◆
「レイは後ろ!」
ミナが前に出る。
「近接はあたしがやる!」
ドン!!
一気に距離を詰める。
だが。
ザンッ!!
斬撃が――
すり抜ける。
「は?」
手応えがない。
セラが叫ぶ。
「位相がズレてる!」
「タイミング合わないと当たらない!」
「クソゲーじゃん!」
◆
リオンが即座に判断。
「合わせる」
短く言う。
レイを見る。
「干渉で固定できるか」
レイが頷く。
「一瞬なら」
◆
作戦が決まる。
「レイが固定!」
「その瞬間に叩く!」
ミナが笑う。
「シンプルでいいね!」
◆
白の核が再び動く。
槍の嵐。
ドドドド!!
マリーナが叫ぶ。
「炎で相殺!」
爆炎をぶつけ、進路を確保。
セラが拘束魔法を展開。
完全には止まらないが、動きが鈍る。
◆
「今だ!」
レイが手を上げる。
集中。
干渉。
空間を“掴む”。
「止まれ!」
ピシッ。
一瞬。
白の核の輪郭が、はっきりする。
「今!!」
◆
ミナが突っ込む。
ドン!!
最大速度。
ザンッ!!
今度は――
当たる。
「入った!」
◆
リオンも同時に踏み込む。
ズバッ!!
コアに直撃。
白い光が揺れる。
◆
だが次の瞬間。
ドクン。
核が強く脈動。
吹き飛ばされる。
「ぐっ!」
ミナが転がる。
「硬っ……!」
◆
セラが叫ぶ。
「ダメージは通ってる!」
「でも再生してる!」
見ると。
傷がゆっくり塞がっていく。
しかも――
周囲の白い森から、粒子が集まっている。
「……やっぱり」
レイが呟く。
「森と一体化してる」
◆
「つまり?」
マリーナが聞く。
「核だけ壊してもダメ?」
「いや」
レイは首を振る。
「壊せば止まる」
「ただし――」
核を見る。
「一気にやらないと再生される」
◆
ミナがニヤッと笑う。
「じゃあさ」
「最大火力でいくしかないでしょ」
マリーナが頷く。
「任せて!」
魔力を集中。
セラも補助に入る。
リュシエルが圧縮で空間を整える。
リオンがタイミングを測る。
◆
レイが手を上げる。
だが――
少し揺れる。
ミナが気づく。
「レイ?」
「……大丈夫」
だが明らかに負荷が来ている。
それでも。
目は逸らさない。
◆
「一回で決めるぞ」
全員が頷く。
◆
白の核が、再び槍を構える。
だがその前に。
「今だ!」
レイが干渉。
空間固定。
完全ではない。
だが――
十分。
◆
「いけええええ!!」
ミナが突っ込む。
リオンも同時。
マリーナの極大魔法が放たれる。
セラの補助が重なる。
リュシエルの圧縮が一点に集中。
◆
全てが重なる。
そして――
コアへ。
直撃。
◆
白の核が、初めて大きく歪む。
光が暴れる。
空間が軋む。
レイが歯を食いしばる。
「……砕けろ」
手を握る。
◆
パキッ。
小さな音。
次の瞬間。
バンッ!!!
コアが、砕けた。
◆
白い柱が崩れ始める。
森の白が、揺らぐ。
ミナが息を吐く。
「……勝った?」
セラが周囲を見る。
「反応が……消えていく」
マリーナが座り込む。
「はぁ……やっと終わった……」
◆
だが。
レイだけが、空を見ていた。
わずかに残る“違和感”。
「……いや」
小さく呟く。
「まだ、終わってない」
その言葉と同時。
砕けた核の奥から――
黒い“何か”が滲み出す。
白とは違う。
もっと深い。
もっと“向こう側”の気配。
ミナが顔をしかめる。
「……は?」
「第二形態?」
レイの目が細くなる。
「違う」
低く言う。
「本体に繋がってる」
◆
白の森の奥。
さらに深い“何か”が、目を開く。




