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ノヴァリアの魔導師〜転生したら全属性使いだった〜  作者: にゃふ
第18話:北方遠征編

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第194章:目覚めの代償

 暗闇。


 何もない空間。


 音も、光も、境界も曖昧な場所。


 レイは、そこに立っていた。


「……またここか」


 呟く声すら、どこか遠い。


 夢。


 だが前とは違う。


 “誰かに呼ばれた”感覚ではない。


 これは――


 自分が沈んでいる場所。


 ◆


 足元に、波紋が広がる。


 黒でも白でもない、透明な揺らぎ。


 その中に、何かが映る。


 学院。


 戦い。


 ミナたち。


 そして――


 空に開いた亀裂。


「……やりすぎたか」


 小さく苦笑する。


 あの瞬間。


 確かに届いた。


 干渉。


 いや、それ以上の何か。


 だがその代償が、これだ。


「動けない、か」


 身体の感覚が薄い。


 意識だけが浮かんでいる。


 ◆


 そのとき。


 波紋の奥。


 “何か”が動いた。


 レイの視線が鋭くなる。


「……来たな」


 ゆっくりと現れる影。


 形は曖昧。


 だが分かる。


 あの“観測側”の気配。


 しかし――


 前より近い。


 はっきりしている。


『……安定……確認』


 ノイズ混じりの声。


 だが、以前より明確だ。


 レイは眉をひそめる。


「ここまで来れるのか」


『……違う』


 影が揺れる。


『……ここは……接続点……』


「接続点?」


 理解が追いつかない。


 だが直感で分かる。


 ここは夢ではない。


 境界の中間地点。


 ◆


『……干渉者』


 その言葉に、レイはため息をつく。


「その呼び方、好きじゃないな」


『……適合度……上昇……』


 影が近づく。


 圧はない。


 だが――


 深い。


 底が見えない。


「……で?」


 レイは動かない。


「何しに来た」


 影は、わずかに揺れる。


『……観測……ではない』


 その言葉に、レイの目が細くなる。


『……提案……』


「は?」


 予想外だった。


 ◆


『……干渉者は……不安定……』


『……このままでは……崩壊……』


 レイは自分の手を見る。


 確かに、輪郭が少し曖昧だ。


「……それが代償か」


『……そう』


 短い肯定。


『……だから……選択……』


 またその言葉。


 レイは苦笑する。


「最近そればっかだな」


 影が続ける。


『……我々に近づくか』


『……このまま消耗するか』


 沈黙。


 レイは少し考え――


 鼻で笑った。


「断る」


 即答だった。


 影がわずかに揺れる。


『……理由……』


「決まってるだろ」


 レイは顔を上げる。


「そっち側に行く気はない」


 影が沈黙する。


 ◆


 次の瞬間。


 空間が揺れた。


 別の“何か”が近づく気配。


 さっきの影とは違う。


 もっと荒い。


 もっと敵意に近い。


『……別個体……接近……』


 最初の影が言う。


「仲間じゃないのか」


『……違う……』


 その瞬間。


 空間が裂ける。


 黒い歪み。


 そこから、別の影が現れる。


 より歪で、鋭い。


『……排除……対象……』


 レイを見た瞬間、明確な敵意。


「は?」


 レイが呟く。


「派閥マジであるのかよ」


 最初の影が言う。


『……時間切れ……』


『……現実へ戻れ……』


「勝手に決めるな」


 だが身体が引っ張られる。


 現実へ。


 意識が浮上する。


 最後に、影の声。


『……次は……選べ……』


 ◆


 目が開く。


 白い天井。


 医療室。


 視界がぼやける。


「……レイ?」


 ミナの声。


 すぐ近く。


「……起きた?」


 レイはゆっくり瞬きをする。


「……ああ」


 身体が重い。


 だが動く。


 ミナがほっと息を吐く。


「よかった……マジで」


「どれくらい寝てた」


「二日」


「長いな」


 苦笑。


 だがそのとき。


 レイの手が、わずかに歪む。


 ミナが気づく。


「……今の何?」


「……さあな」


 レイも見つめる。


 魔力じゃない。


 もっと深い何か。


 セラとリュシエルも入ってくる。


「目覚めたのね」


「体調は?」


「最悪じゃない」


 だが――


 セラが真剣な顔で言う。


「でも」


「あなた、前と同じじゃない」


 沈黙。


 レイも分かっている。


 あの感覚。


 あの空間。


 あの存在。


「……ああ」


 小さく頷く。


「ちょっとだけな」


 そしてベッドから起き上がる。


「次、行くんだろ」


 ミナが笑う。


「もちろん」


 拳を軽く合わせる。


 だがその裏で。


 レイの中で、何かが静かに変わっていた。


 干渉者としての力。


 そして――


 その代償。

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