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ノヴァリアの魔導師〜転生したら全属性使いだった〜  作者: にゃふ
第18話:北方遠征編

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第193章:広がる異常

戦いの後。


 学院には、重い静けさが残っていた。


 崩れた建物。

 焼け焦げた地面。

 あちこちに残る魔力の残滓。


 そして――


 空に残る、細い亀裂。


 完全には閉じていない。


 ◆


 臨時対策本部。


 学院中央棟の一室に、主要メンバーが集められていた。


 レイは医療室へ運ばれている。


 意識はまだ戻らない。


 ミナは腕を組んだまま、壁にもたれている。


「で?」


 短く言う。


「どれくらいヤバいの」


 空気が一瞬止まる。


 学院長エルドが、静かに口を開いた。


「結論から言う」


 その声はいつも通り落ち着いている。


 だが内容は――


「学院単体の問題ではない」


 ◆


 机の上に、複数の報告書が並べられる。


 セラが目を通し、顔色を変えた。


「これ……」


「各地の観測機関からの緊急報告だ」


 エルドが続ける。


「同様の“歪み”が確認されている」


「同様って……」


 マリーナが身を乗り出す。


「ここみたいな亀裂?」


「規模は様々だがな」


 指で地図を示す。


 王都。

 北方の砦。

 交易都市。

 そして――未踏の森。


 複数の地点に印が付いている。


「……増えてる」


 リュシエルが低く言う。


「連鎖している」


 ◆


「原因は一つ」


 エルドが言い切る。


「観測層の開放」


 ミナが舌打ちする。


「やっぱそれか」


「正確には」


 エルドの視線が鋭くなる。


「“干渉者の出現”だ」


 沈黙。


 その意味を、全員が理解する。


 セラが小さく呟く。


「……レイ」


 ◆


「観測は一方通行ではない」


 エルドは続ける。


「こちらが“見る”ことで、向こうも“見る”」


「それが、あの視線……」


 マリーナが震える。


「そして」


 エルドは地図を指す。


「“見ることができる地点”が増えた」


「つまり」


 リュシエルが言葉を継ぐ。


「侵入口が増えている」


「そうだ」


 短い肯定。


 ◆


 部屋の空気が重くなる。


 ミナがため息をつく。


「……で?」


「どうすんの」


 その問いに。


 エルドは迷わない。


「対処するしかない」


「雑」


「事実だ」


 そして一枚の新しい資料を出す。


「各地の異常地点には、既に対応班が向かっている」


「学院だけじゃないんだ」


 マリーナ。


「当然だ」


 エルドは言う。


「これは“世界規模の現象”だ」


 ◆


 セラが資料を見つめる。


「でも……」


「どの地点も、完全な解決には至っていない」


「当然だろう」


 エルドの声が少し低くなる。


「相手は“観測の外側”だ」


 理解しきれない存在。


 だからこそ。


「従来の戦力では足りない」


 その視線が、ミナへ向く。


 そして――


 いないはずの一人へ。


「干渉者が必要だ」


 ◆


 沈黙。


 ミナが小さく笑う。


「つまり」


「レイ頼みってこと?」


 エルドは否定しない。


「現状ではな」


「はぁ……」


 ミナが天井を見る。


「面倒なことになったね」


 だがその目は、すでに決まっている。


 ◆


 そのとき。


 リュシエルが口を開く。


「もう一つ、報告があります」


「何だ」


「観測波の解析結果です」


 資料を出す。


「今回の亀裂反応」


「単独ではありません」


「どういう意味だ」


 エルドの目が細くなる。


 リュシエルは静かに言った。


「複数の“観測主体”が関与しています」


 部屋の空気が凍る。


 セラが息を呑む。


「一体じゃない……?」


「はい」


 リュシエルは頷く。


「少なくとも三つ以上の異なるパターン」


 つまり――


 敵は一つじゃない。


 ミナが呟く。


「派閥とかある感じ?」


「可能性は高い」


 エルドが答える。


「観測者同士が干渉し合っているのかもしれん」


 ◆


 窓の外。


 空の亀裂が、ゆっくりと揺れる。


 静かに。


 だが確実に。


 広がっている。


 ◆


「……面白くなってきたじゃん」


 ミナが笑う。


「世界規模でバトルってことでしょ?」


「軽く言うな」


 セラが呆れる。


 だが完全には否定できない。


 これはもう――


 学院の外の話だ。


 ◆


 エルドが最後に言う。


「準備を整えろ」


「レイが目覚め次第、次の任務に入る」


「次はどこ?」


 マリーナが聞く。


 エルドは地図の一箇所を指した。


「北方」


 そこには、大きく歪んだ印。


「最も反応が強い地点だ」


 レイたちがかつて訪れた――


 あの森に近い場所。

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