第191章:空からの侵入者
学院上空。
歪んだ結界の一点。
そこに開いた“薄い穴”。
最初は、ただの歪みに見えた。
だが――
ピシッ。
その縁が、ゆっくりと裂ける。
「……広がってる」
セラが息を呑む。
レイの目が鋭くなる。
「来るぞ」
次の瞬間。
ドンッ!!
何かが落ちてきた。
中庭の石畳に激突し、砂煙が上がる。
煙の中から現れたのは――
黒い影。
だが地下で見たものとは違う。
形が安定している。
輪郭がはっきりしている。
「……強化されてる」
リュシエルが低く言う。
その一体が、顔を上げた。
光点が二つ。
そして。
ゆっくりと立ち上がる。
◆
「学生は全員後退!」
教師たちが叫ぶ。
だが、遅い。
影が動いた。
ドン!!
一瞬で距離を詰める。
教師の防御結界を――
バキン!!
一撃で砕いた。
「なっ……!?」
教師が吹き飛ぶ。
ミナが舌打ちする。
「硬すぎ!」
「地下より強い」
リオンが剣を構える。
そのとき。
上空の亀裂が、さらに広がる。
ピシッ。
ピシッ。
そして――
ドドドドド!!
複数の影が一斉に落下してきた。
「うわ、増えた!」
マリーナが叫ぶ。
セラが歯を食いしばる。
「完全に侵入フェーズ……!」
◆
「迎撃する!」
レイが前に出る。
ミナが並ぶ。
「任せて!」
ドン!!
二人同時に突っ込む。
最前線。
影の群れが迫る。
一体が拳を振り上げる。
レイは手をかざす。
ピシッ。
空間が歪む。
拳の軌道がズレる。
「そこ!」
ミナが横から斬り込む。
ザンッ!!
腕を切断。
だが再生する。
「やっぱ再生ある!」
「コア狙え!」
レイが叫ぶ。
◆
別方向。
マリーナが詠唱。
「火炎弾幕!」
ドドドド!!
火球の雨。
影をまとめて吹き飛ばす。
「今のうちに!」
セラが拘束魔法を展開。
複数の干渉体の動きを一瞬止める。
リオンが飛び込む。
ズバッ!!
ズバッ!!
正確な連撃。
コアを切断。
影が消滅する。
◆
だが。
空から、さらに影が落ちる。
終わらない。
「キリないじゃん!」
ミナが叫ぶ。
その瞬間。
地面が揺れる。
ドォン!!
より大きな影が落ちてきた。
周囲の干渉体より、明らかに巨大。
「……あれは」
リュシエルの声が低くなる。
「中核個体」
影がゆっくりと立ち上がる。
四つの腕。
歪んだ身体。
そして胸の奥に――
大きなコア。
ミナが笑う。
「ボス来たじゃん」
レイも頷く。
「こいつ倒せば流れ変わる」
◆
だが次の瞬間。
その中核個体が、空を見上げた。
そして――
腕を上げる。
ピシッ。
上空の亀裂が、さらに広がる。
「え」
セラが凍る。
「ちょっと待って」
「まさか……」
ドドドドド!!
さらに大量の干渉体が落下する。
ミナが叫ぶ。
「増やしてるんだけど!?」
レイが歯を食いしばる。
「まずいな……」
このままじゃ押し切られる。
そのとき。
学院全体に、低い音が響いた。
ブゥン……
空気が変わる。
リュシエルが顔を上げる。
「これは……」
学院中央塔。
巨大な魔法陣が起動する。
結界が、再構築される。
そして――
学院長エルドの声が響いた。
『全員、持ちこたえろ』
落ち着いた声。
『ここからは、学院が対応する』
空に、巨大な光の陣が展開される。
干渉体の動きが、一瞬止まる。
レイが呟く。
「……切り札か」
戦場の空気が変わる。
だが。
中核個体は止まらない。
ゆっくりと、レイたちを見た。
そして。
動く。
「来るぞ!」
ミナが笑う。
「いいね」
剣を構える。
「ボス戦、開始!」
学院防衛戦は、
決戦フェーズへ突入する。




