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ノヴァリアの魔導師〜転生したら全属性使いだった〜  作者: にゃふ
第17話:学院編

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第190章:崩れた安全地帯

地下からの帰還。


 階段を駆け上がる足音が、やけに大きく響く。


「急いで!」


 リュシエルが先導する。


 後ろでは――


 まだ“何か”が軋んでいる気配。


 レイは振り返らない。


 振り返れば、足が止まると分かっているから。


 ◆


 最上層へ出た瞬間。


 全員が、言葉を失った。


「……は?」


 ミナが固まる。


 目の前に広がっていたのは――


 壊れた学院だった。


 廊下の壁が崩れ、床に亀裂。


 魔力灯は明滅し、いくつかは完全に消えている。


 遠くで、爆発音。


 煙。


 そして――


「助けて!!」


 学生の叫び声。


 マリーナが息を呑む。


「こんな……」


 ◆


 中央棟。


 大広間の天井が一部崩落している。


 教師たちが必死に結界を張り直しているが、追いついていない。


「結界が安定しない!」


「魔力が逆流してる!」


 セラがすぐに状況を読む。


「観測層の影響……!」


「まだ繋がってる」


 レイが低く言う。


 あの亀裂。


 完全には閉じていない。


 だから――


 学院全体が“引っ張られている”。


 ◆


「分かれて動く!」


 リュシエルが即座に指示を出す。


「負傷者の救助を最優先!」


「了解!」


 マリーナが走る。


 崩れた柱の下にいる学生の元へ。


「大丈夫!?今助ける!」


 火属性魔法で瓦礫を焼き切り、道を作る。


 ◆


 セラは別方向。


「こっちの魔法陣が暴走してる!」


 床に展開された防御陣が不規則に光っている。


「このままじゃ爆発する……!」


 魔力回路に手を当てる。


 解析。


 修正。


「制御、書き換える……!」


 額に汗。


 だが――


 バチン!!


 一部が弾ける。


「くっ……!」


 ◆


 リオンは静かに動く。


 崩れた壁の隙間から、閉じ込められた生徒を発見。


「動くな」


 短く言う。


 剣で瓦礫を正確に切断。


 最小限の動きで道を開く。


「……ありがとう」


「後ろへ」


 淡々と誘導。


 ◆


 ミナは――


「そっち危ない!」


 崩れかけた柱を見つけ、全力で蹴る。


 ドォン!!


 柱の倒れる方向を変える。


 ギリギリで生徒を守る。


「ふぅ……」


 肩を回す。


「これ、戦いより大変じゃない?」


 それでも笑っている。


 ◆


 そして――


 レイ。


 立ち尽くしていた。


 壊れた学院。


 叫び声。


 混乱。


 全部が目に入る。


(……俺たちが開けた)


 あの扉。


 あの亀裂。


 結果が、これだ。


「レイ!」


 ミナの声。


 ハッとする。


「ボーっとしてる場合じゃない!」


「ああ……!」


 拳を握る。


 動く。


 ◆


 そのとき。


 学院上空。


 結界の一部が、大きく歪んだ。


 ビシッ。


 空間に、細い亀裂。


 教師の一人が叫ぶ。


「上空に異常反応!」


「何だあれ!?」


 全員が空を見る。


 そこに――


 **“薄い穴”**が開いていた。


 完全ではない。


 だが確実に、向こうと繋がっている。


 レイの背筋が凍る。


「……まだ続いてる」


 リュシエルが歯を食いしばる。


「下層の影響が、地上まで……」


 その穴の奥。


 “何か”が、こちらを見ている。


 干渉体ではない。


 もっと遠い。


 だが確実に――


 観測されている。


 セラが小さく呟く。


「これ……」


「学院だけじゃ済まないかもしれない」


 沈黙。


 その中で、ミナが笑う。


「じゃあさ」


 全員を見る。


「ここで止めるしかないでしょ」


 レイも頷く。


「……ああ」


 壊れた学院。


 崩れた安全地帯。


 だが――


 ここが、守る場所だ。


 レイは空を見上げる。


 亀裂の向こう。


「今度は、こっちから行く」


 静かな決意。


 戦いは、まだ終わらない。

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