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ノヴァリアの魔導師〜転生したら全属性使いだった〜  作者: にゃふ
第17話:学院編

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第182章:観測者の囁き

 その夜。


 レイは、浅い眠りの中にいた。


 夢ではない。

 だが現実とも違う。


 視界が、ゆっくりと白く染まる。


「……またか」


 立っているのは、何もない空間。


 上下も、距離も、曖昧。


 それでも――


 見られている。


 はっきりと分かる。


「起きているね」


 声がした。


 方向はない。


 響く、というより――

 直接、思考に触れる感覚。


「……出てこい」


「出る必要はない」


 穏やかな声音。


「君は、もう“座標”を持っている」


 レイは、拳を握る。


「学院の観測装置、あれはお前か」


「一部は」


 淡々と。


「だが私は、装置ではない」


 空間に、波紋が広がる。


「君に、確認したい」


「何を」


「君は、なぜ拒絶した?」


 あの接続試行のことだ。


「……必要なかったからだ」


「必要とは?」


「俺は、お前に観測される理由がない」


 短い沈黙。


 そして、わずかな笑い。


「違う」


 声は静かだが、確信を含む。


「君は、拒否できることを知っていた」


 胸が、わずかにざわつく。


「……何が言いたい」


「君は“干渉する側”だ」


 空間が、ゆっくり歪む。


「観測される存在ではない」


 レイの周囲に、薄い光が浮かぶ。


「だから私は、興味がある」


「興味?」


「君が、どこまで自覚しているか」


 ◆


 景色が一瞬変わる。


 学院の上空。


 街。


 森。


 遠くの山脈。


 全てが、俯瞰で見える。


「……これは」


「観測視点だ」


 声が続く。


「世界は、常に測られている」


「誰にだ」


 答えは、即座には来ない。


「君が知るには、まだ早い」


 レイは、苛立ちを押し殺す。


「だったら何のために出てきた」


 わずかな間。


「警告だ」


 空間が、ゆっくり暗くなる。


「学院内部の“空白領域”は、

 まだ浅い」


「浅い?」


「下層がある」


 その言葉に、背筋が冷える。


「君が踏み込めば、

 本格的な干渉が始まる」


「脅しか?」


「違う」


 声は穏やかだ。


「選択だ」


 光が、レイの足元に集まる。


「観測される側でいるか」


「干渉する側に回るか」


 鼓動が、強くなる。


「……俺は」


 一瞬、ミナたちの顔が浮かぶ。


「一人じゃない」


 即答だった。


「俺が動けば、仲間も巻き込む」


「理解している」


「だから、勝手に“選択”はしない」


 沈黙。


 やがて、声がわずかに低くなる。


「……理性的だ」


「意外か?」


「少し」


 空間が、ゆっくり薄れていく。


「では、次に会う時は」


 最後の言葉。


「君が自分の立場を決めた後にしよう」


 光が、消えた。


 ◆


 レイは、目を開ける。


 自室。


 汗が、額を伝っている。


「……夢じゃない」


 魔力の感触が、まだ残っている。


 扉を叩く音。


「レイ?」


 セラの声。


「今、魔力が揺れたわ」


「……ああ」


 扉を開けると、ミナとリュシエルもいる。


「また何かあったでしょ」


 ミナが鋭く見る。


 レイは、少し迷い――


「直接、来た」


 リュシエルの目が、僅かに見開く。


「接触……?」


「夢みたいな場所で」


 短く説明する。


 “選択”。


 “干渉する側”。


 “下層”。


 沈黙。


 リュシエルが、低く言う。


「……想定より早い」


「何が」


「直接接触は、最終段階のはずでした」


 ミナが、歯を鳴らす。


「つまり、もう“最終段階”近いってこと?」


 リュシエルは答えない。


 だが、その沈黙が答えだった。


 レイは、静かに言う。


「俺たちは、もう観測対象じゃない」


 全員を見る。


「“参加者”だ」


 学院内部の調査は、

 次の段階へ入る。


 空白領域の“下層”。


 そこに踏み込むかどうか。


 選択は、近い。

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