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ノヴァリアの魔導師〜転生したら全属性使いだった〜  作者: にゃふ
第17話:学院編

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第181章:極秘通信

深夜。


 学院西棟の上階、監査官用個室。


 窓から月光が差し込み、机上の書類を白く照らしている。


 リュシエル・ハーグレイは、静かに筆を走らせていた。


 ――境界干渉保持者、接続拒否成功。

 ――観測装置、逆遮断確認。

 ――対象は高い自己制御意識を持つ。


 書き終えた瞬間。


 机の隅に置かれた小型水晶が、淡く光った。


 ぴし、と空気が震える。


「……来ましたか」


 彼女は立ち上がり、簡易遮音結界を展開する。


 水晶が、低い音を鳴らす。


 通常回線ではない。


 学院正式記録に残らない経路。


 光の中に、文字が浮かぶ。


 ――《監査官リュシエルへ。状況報告を要求する》


 差出人名は、表示されない。


 だが彼女は、誰か分かっている。


「……定期報告は学院長経由で提出済みです」


 冷静に答える。


 水晶の光が強まる。


 ――《学院経由の報告は不十分。直接観測データを送れ》


 リュシエルの目が、わずかに細くなる。


「直接?」


 間。


 そして次の文字。


 ――《対象は“想定外”。再評価が必要だ》


 胸の奥で、小さく何かが軋む。


「……再評価とは?」


 返答は即座だった。


 ――《管理不能と判断された場合、拘束段階へ移行》


 室内の空気が、冷える。


「……それは、学院の決定ではありませんね」


 沈黙。


 数秒後。


 ――《君の役割を忘れるな》


 短い一文。


 それだけで十分だった。


 リュシエルは、机に手を置く。


(私の役割……)


 監視官。


 抑止装置。


 必要ならば――


「……拒否します」


 静かに告げる。


 水晶の光が一瞬、強く揺れる。


 ――《理由を述べよ》


「対象は制御可能範囲にあります」


 冷静に。


「現時点での拘束は、敵側の観測を助長します」


 論理的な反論。


 だが、もう一つの理由を、彼女は言わない。


(あの目は、暴走者の目ではなかった)


 返答。


 ――《判断を保留。だが監視は強化する》


 光が弱まり始める。


 最後に一文。


 ――《学院内部の“空白領域”も継続監視せよ》


 通信は切れた。


 結界を解き、部屋は再び静寂に戻る。


 ◆


 リュシエルは窓辺に立つ。


 月下の中庭。


 遠く、訓練場の影。


(……二重の監視)


 学院がレイを監視する。


 そして、学院を監視する何者かがいる。


 彼女は深く息を吐く。


「……面倒ですね」


 小さく呟くが、声音は冷静。


 机に戻り、別の書簡を取り出す。


 学院長エルド宛。


 正式経路の報告。


 そこに、あえて一文を加える。


 ――《監査権限の範囲外通信を確認》


 あえて、残す。


 痕跡を。


 ◆


 翌朝。


 調査班が再集合する。


 ミナがリュシエルを見る。


「寝不足?」


「問題ありません」


「嘘っぽい」


「気のせいです」


 やり取りは軽い。


 だが、レイは気づく。


 昨日よりも、彼女の視線がほんの少し鋭い。


「何かあった?」


 直球。


 一瞬の沈黙。


「……監視が増えました」


「は?」


 ミナが眉をひそめる。


「私たちだけでなく、学院全体が」


 リュシエルは淡々と言う。


「つまり、内部にもう一つ“上”がある可能性が高い」


 セラが小さく息を呑む。


「学院の上に……?」


「断定はしません」


 だが目は真剣だ。


「ただし――」


 彼女はレイを見る。


「あなたの扱いは、

 これからより慎重になります」


 それは警告か。

 それとも、守る意思か。


 まだ分からない。


 だが確実に言えることは一つ。


 敵は学院の外だけではない。


 そしてリュシエルは今、

 板挟みの中心に立っている。

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