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神秘の結晶〜世界最後の錬金術師〜  作者: 聖華
第1章〜出会い〜
32/37

◇私はまだ知らない

誤字・脱字などがありましたらお伝え下さい


明朝より出立した

場所は皇都から南に約3キロ進んだ場所にある小さな森

しばらく進むと大きな館が見えた

随分と廃れている


「ここか」

「そのようですね」


それにしても私は兎も角、父まで来るとは…

この人はこの国の皇帝だというのに

よほど、シャルティア殿が心配なのか?


「行くぞ」

「はい」


考えても仕方がない

私は近衛に守られながらも館へと進んだ

………私は弱くないのだがな

見張りはおらず、警戒しながら中に入った

だが誰もいない


「…父上」

「あぁ、分かっている」


強大な魔力を感じる

肌を刺すようなピリピリした魔力

一度感じたことがある魔力

おそらくそこにシャルティア殿がいるのだろう

父は近衛たちに的確な指示をしていた


「魔力保有量が多い者はついてこい。他は見張りにまわれ。警戒を怠るな」

「「「ハッ!」」」


魔力保有量が少ない者だと強大な魔力に呑まれる

それを踏まえての指示だろう

この魔力は危ない

私は魔力保有量は皇族なので当然多く同行を許可された



少しずつ警戒しながら魔力を感じる場所に向かっている

近づいていく度にどんどん魔力が強まって濃厚になっていくのが分かる

すると突然父が走りだした

まるで何が危ないものに気がつき焦るように

私達は急いで父のもとに走った


「父上!どうなされたのですか!」

「陛下、危険ですのであまり我らから離れないでください」


それでも父は走るのを止めない

それどころかスピードを上げている


「父上!」

「…このままではシャルが死ぬ」

「え…?」


それはどういう…


あっという間にシャルティア殿がいるであろう場所につき、そのままバンッ!と扉を開けた


「シャル!大丈夫、か…………これは…」


やっと追いつき扉の先を見て驚いた

壁や天井からは様々な鉱石で埋め尽くされ

天井からは大きな檻が吊り下がっている

それも鉱石…いや、宝石でできていた

そしてその大きな檻を眺めるように見る椅子に座った子供がいた

その子供は振り向いた

………とても無邪気な笑顔で


「あ、帝王様!皇子様も…!助けに来てくれたんですね…!」

「何をしている」

「え?殺そうとしています」


………ころ、す?

何を言っているんだ?

檻を見ると内側から針が伸びているのが分かる

あの速さならものの数分で串刺しだろう

つい最近まで人に対しおどおどして怖がっていた子供が殺すなんて行為できるはずがない

それになんだこの無邪気な笑顔は…

私は一度だけシャルティア殿の笑顔を見たことがある

復讐することを話している時だ

あのときはいつものシャルティア殿とは似ても似つかない堂々とした態度だった

どうしたんだ、シャルティア殿は……


「なぜだ」


父は気にせず話しかけた


「だって、この人たち殺したんです、サフィアを。サフィアが倒れてたのは見たけど生きていたのでしょう。でもこいつらに捕まえられて奴隷にされそうになって弱ったからといって捨てられた。あの魔物の生みの母と呼ばれるルテリケルの森に……」


サフィアとは誰だ?

話からしてシャルティア殿の村の者だろう

近衛の者たちは顔には出していないものの指が少し震えている

魔力にあてられたのか?

いや、それだけではないだろう

シャルティア殿の表情も含めて、だろう

あの顔は一度見たことがある私でも怖い

私達が恐怖を感じている間にも話は進んでいく


「それって殺したのと同じですよね?だから殺すんです。復讐の為に…………サフィアと同じ…いや、それ以上の恐怖を味わえばいい」


ズンッと一気に魔力がのしかかってくる

重い、それに濃い

無邪気な笑顔からは打って変わり感情が抜け落ちたような無表情となった

私はあの者を救うことはできない

それがとても……辛い


「やめろ」


ちち、う、え?

父はこれを見ても尚、シャルティア殿を止めようとしていた

たとえ父でもあんなに大きな恨みを持っているシャルティア殿を止められるはずがない

もちろんシャルティア殿は拒否した

なのに父はやめない


「な、んで…なんで!こいつらはボクの唯一を奪った!ボクの大事な、大事な……こいつらを殺して何が悪い…!サフィアはボクに仕えてくれた…ボクに仕えて幸せだって言ってくれた……ボクの大事なサフィアを、親友を奪ったんだ……止めないでよ……」


シャルティア殿は顔を歪ませて叫んだ

大事な人を奪われた、か

私にはその気持ちが分からない

心を押し殺しているうちに大切な人とはなにかを忘れてしまった

強いて言えば身内か…

私も身内を失えばこうなるのだろうか…

いや、それはないだろう

私に心などあるはずがない

()()()()()()()()

それにシャルティア殿は身内だけでなく知っている人全てを失ったのだから…

これを止めるなど、もう…


「そうか、お前の気持ちは余には分からん。余はサフィアという者を知らんからな。だがシャルよ。サフィアとやらは弱ったからという理由で捨てられたと言ったな。もしもだ、もしサフィアとやらが生きていたらとしたらどうする」


父上はなにを…


「もし生きていて再会できたら、お前は以前と同じように話せるか?……人殺しとなったお前は」

「!?」

「お前が信じないでどうする。サフィアとやらを知っているのはお前だけだ」


父上は諦めないのか

シャルティア殿を救おうと…

父上はサフィアという者が生きている可能性を説いた

それに復讐は殺すだけではないとも

極めつけに生きていることを信じろ、と

それにシャルティア殿は応えた

生きていることに希望を抱いた

父は止めたのだ

私にはできないことを父はやってみせた

私はただ傍観することしかできなかった

私にはまだそれはできない



シャルティア殿は檻は崩れていき奴隷商たちをしばっていた

その時なにかボソッと耳打ちをしていた

奴隷商たちは青ざめていた

失神している者もいる

何を言ったのだろう


「シャル、行くぞ」

「はい、今行き、ま………あれ?なんだ、か目がグラグラ、す……る………」

「シャルティア殿!」


間一髪支えることができた


「これは………まずいな」

「父上、これは」

「魔力が底をついている…このままだと命に関わる」


そんな…

あんなに大きな魔法を使っていたのだ 

たとえ錬金術師とはいえまだ子供

負担が大きい


「クリスティル、魔力を流し込め。お前ならできるだろう?」

「はい」


魔力を流し込む行為は繊密な魔力操作が必要

父は私の実力を信じて頼んだのだろうか

私はシャルティア殿に手をあて魔力を少しずつ流し込んだ

だが反発してうまく流し込めない


「流れない…」

「やはり無理か…」

「やはり?」

「錬金術師は謎に包まれているがいくつか解明されているものがある。その中の一つに錬金術師の魔力は普通のものと違うというものがある」

「普通と違う…ではどうすれば」

「それは……ん?なんだ」


周りを見渡すと光の粒子が舞っていた

それがシャルティア殿に降りかかり中へと入っていく


「これは…」

「魔力が回復していく。この光はなんだ」


どんどん光が増えていきシャルティア殿の周りで舞っている

それはとても幻想的で魅入ってしまう

光が収まったところで帰城した


その後医師に見せたがなにも問題はなかったらしい

ただの魔力枯渇だった

私はすぐシャルティア殿の見舞いに行った

まだ目覚めてないらしい

私はこの者のことをまだよく知らない

目覚めたら一度話をしようと決意し私は公務へと戻った







これでクリスティル編は終わりです

付き合ってくれてありがとうございました

次回からは本編に戻ります

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