◇なぜ……?
「「「ご無事のご帰還お待ちしておりました。皇帝陛下」」」
「あぁ、出迎えご苦労」
目の前にいるこの者は誰なのだろうか
父が連れているのだから例の子供なのだろう…
だが……
美しすぎる
私は皇族だ
数々の美しい者を見ている私はそうそうなびかない
だがこの者はそれを凌駕する程の美しさだ
艶やかな黒髪から覗く輝く青や緑
ダイヤモンドよりも美しいガラスのような煌く瞳
漂う魔力は子供には似合わない膨大な量
どこかミステリアスな少女だ
(この者はどのように利用しようかな?)
「ご無事のご帰還なによりです。父上」
「元気でなによりだ」
父は表情を崩さず返事を返した
少女の表情は無でなにも感じさせない
そろっと父の横に立っていた
私は気にせず普通に会話を始めた
「予定よりも早いご帰還ですね」
「少し用ができてな」
「それは…そこにいる少女と何か関係が?」
私は少女を見た
すると表情には出てないが怯えたように父の後ろに隠れた
皇帝の後ろに隠れるとは…不敬では?
………?
怯えたように?
どうして?
疑問に思ったが顔に出さず会話を続けた
「あぁ、この子はシャルティア。これは余の息子のクリスティルだ」
「むすこ…」
っ……!?
なんだあれは
いつも硬い顔が今は優しい顔
私はあんな顔を見たことがない…
父上はあのような優しい顔ができたのか…
「自己紹介できるか?」
父は少女を見ながら優しく問うたが少女は首を振った
父上があのように優しく聞いているのに…
「そうか、では余がしよう」
………え?
父上が?
「先程も言ったが名はシャルティア・メアリー・グラス。先代殿の住む場所によった際見つけた」
先代殿…
大切な人とは先代様のことだったのか
「その…皇帝たる御方が代わりに紹介など……」
あれは…末端の大臣か
あの者の言うことは最もなことだ
だがそこまで父は愚かではない
……だが
「なんだ、余に意見するのか」
「いえ!?その…」
っ…!?
あれはっ…!
皇族特有の魔力…
危ない…!
父は確かに賢王だが気に入った者にはとことん甘い
あのままでは消される!
「父上!その者を咎めないでください。周囲が思っていることを代表して言ってくれたのです。それに私も気になります」
これで大丈夫だろうか…
父上がこんなことで怒っているとは思わない
が、一応止めた
気に入った者だとしてもそこまではしないだろう………多分
魔力にあてられ焦りあのようなことを考えてしまったがさすがに無いか
それに止めたことによって私の評価が上がるだろう
父の評価もこのぐらいでは傷もつかない
それに私も気になっていた
父上が気にかけるその者のことを…
だが、父上が言ったことは想定外のことだった
聞かなければよかったと思う程に…
「なんだ、言ってなかったか?この者は先日から余の直属となった錬金術師だ」
「錬金術師ですか。そうならそ、うと……え?錬金術師!?」
いやいやいやいや…え?
理解が追いつかない
そんな…
存在していたなんて聞いたことがない
大陸一情報が集まる我が国ですら存在を知らない
幻と言われている錬金術師
金属や鉱石だけでなく、あらゆるものを生むことができる人離れの存在
神しか使えぬ創造の技を唯一使うことができる存在
それが錬金術師
まさに神に愛されし存在
私ではなくあの者が神に愛されている
物語でしか聞いたことがない
魔法を操る全人類が憧れる存在
それが錬金術師
そのような方がこの少女だなんて……
にわかに信じられない
私は意を決して聞いた
「この少女がかの錬金術師、と?」
「そうだ」
そうなのか…
「本物…いえ、父上がそうおっしゃるのです。本物なのでしょう。ですが本当に存在していたとは……」
「あぁ、余も初めは驚いた」
父上ですら驚いたのか
いや、当然だろう
幻と言われる程の存在なのだから
しかし、この少女がかの錬金術師とは…
利用価値が大きくなった
ふふ、私はひどい人だ
私の笑顔と優しさで懐柔しよう
私は少女の目を見た
「私はリステリア帝国第二皇子、クリスティル・フィント・リステリア。よろしくお願い致します、シャルティア殿」
そう言って手を差し出した
最大限に優しく、親しみやすいように
これで落とせるだろう
……………あれ?
いっこうに手を握ってくれない
なぜ?
シャルティア殿を見ると表情は変わらないものも冷や汗をかき目は恐怖に震えていた
瞳孔は開き過呼吸をおこしている
どうして…
「シャルティア?」
父上は異変に気づき話しかけたが少女はそれに気づいてないらしくどんどん呼吸が荒くなっていく
「怖い」
え?
シャルティア殿はそう言って倒れてしまった
「シャルティアっ!」
「シャルティア殿!?」
どうして倒れた!??
いや、なぜだ!
この者は怖いと言った
他の誰でもない
私を見ながら
なぜだ
私の地位か?
いや、違うだろう
父が側にいてそれはない
なら………私の笑顔なのか…………?
気づかれた?
いや、そんなはずはない
私の仮面は完璧だ
ではなぜ……
私はこの者の発した一言が気掛かりになりその日は眠ることができなかった




