口は災いの元
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線を描くようにまっすぐと男にむかっている
村の仇
せめて死に様は見ようと顔を上げ男をみた
「なっ…!」
笑っている…?
なぜ笑っているんだ!?
その顔は恐怖を感じていない
むしろ殺せるものなら殺してみろと言っているかのようだ
そのことに恐怖を覚える
おもわず短刀を止めてしまった
「なんだ、殺さないのか?」
「っ……、?」
あれ?
声がだせない
「親の仇なのだろう?」
「……なぜ、逃げない」
「逃げてほしかったのか?余は罪を犯してないというのになぜ逃げる必要がある。余が背を向けるなどあってはならぬ」
罪を犯してない?
なら仇じゃないの?
嘘の可能性もある……けど
なんとなく本当な気がする
仇じゃないなら殺す必要がない
普通なら疑うところだろう
だが村が壊され、絶望的に追い詰められていたからかあまり頭が回らないこともあり仇ではないと判断した
後にこの判断は間違いではなかったと知ることになる
仇じゃないと判断したボクは短刀を消した
「いいのか?」
「仇、じゃ…ないなら…」
「そうか」
「どうし、て……ここに…?」
あれ?
本当に声が出しにくい
どこか体が拒否反応をおこしている
なんで?
「ある人に会いに来た」
「ある人…?」
ボクの村にあの人を知っている人はいないだろう
ならなぜ
あの人は誰…?
「ああ、大切な人でな…?おい、どうした」
あれ?
頭がぐらぐらする
視界が一気に黒く染まっていく
そのまま闇の中へと落ちていった
落ちるまでの一瞬だが見てしまった
血を流して倒れているサフィアを……
⬜⬛⬜
『母上、ボクね…』
『ボク?女なのだから私でしょう?』
母上はボクを女と見る
母上は女の子が欲しかったらしい
それに女顔だったから…
一人称を変えるだけでぶたれていた
『父上、ボクね刀匠になりたいの!』
『お前は次男だろ。だめだ!勉強でもしていろ』
父上は夢を語っただけでご飯を抜かれる
ついでに物を投げられる
父上も母上も誰もかもボクが言葉を発するたびにすべてを否定される
友達もできず、兄弟にも邪険にされだんだんボクは無口になって、周りの視線に気を使って
そしたらもう人見知りへと直行だ
ある日本を読んでいるとある言葉が視界に入った
<口は災いの元>
まさにそうだと思った
ボクが口をひらくたびに不幸がやってくる
この世は不公平の塊だ
⬜⬛⬜
「んっ…ここは…?」
あれは、夢…?
そっか…ボクは忘れていた
村の人達が優しくて…ボクを受け入れてくれて…
だから忘れていた
ボクは重度の人見知りだということを
前世は記憶だけでボクとは別人…
そう思っていた
いや、そう思わなくてはやっていけなかった
でもやっぱりボクの前世はボク自身なんだ
切っても切れない関係、か…
嫌な思い出を思い出したボクは今どんな顔をしているのだろうか
ハハッ……ボクはほんと、どこに行っても不幸のままだ




