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短いけどキリがいいので
結局サツキは薮木の家に居候することになった。あれでいて面倒見の良い薮木は帰る場所のないサツキを放っておけなかったのだ。一週間のうちに鉄や優とも知り合った彼女はゆっくりとではあるが元気になっているように見える。とはいえ――
――リョーに対してだけ随分遠慮が無くなっちゃったけど、まぁ良い傾向なのかもねぇ。
薮木たちと別れてから、光矢はひとり街を歩いていた。
今日遊ぶ女の子との待ち合わせ場所にむかって、だ。今日の相手は体育地区のスポーツトレーナーをしている三つ上の女性だ。彼が普段足を運ばない体育地区を歩いているのはそういう事情がある。
時計の短針はぴったり3を指し示していた、思ったよりも薮木たちに時間を割き過ぎたようだ。光矢は近道を使うことに決めた。
今は体育地区となっているこの土地は昔は緑の豊かな場所だったらしい。その名残かところどころに林が茂っている。
地区としては、開発が住んでいない範囲は通らないように呼びかけているが、地元民は近道としてよく使っていた。
――でも、サツキちゃんもそろそろ元気になってきたし、詳しいことを調べるべきかもしれないな
この一週間、光矢たちはサツキの詳しい事情について本腰をいれて調べようとはしなかった。彼女の心が安定するまではいたずらに不安にさせるのはまずいと全員で話し合ったからだ。
彼女の心がある程度安定してきた今、事情を説明して深い部分に踏み込むときではないだろうか。
どちらにせよ一人で考えていても埒が明かない。今晩にでも皆に相談して――
突然のことだった。突然光矢は自分の耳に飛び込んできた音に足をとめた。それはここ数年で聞きなれてしまった音。日本では滅多に聞くことのない音。
「……銃声?」
光矢は駈け出した。何も考えず銃声のしたほうへと。もともと大きくもない林だ。すぐに茂みを分けて音源へとたどり着く。
そして光矢は早速たどり着いたことを後悔していた。
拳銃を右手に持っている若い男。光矢とそう変わらない年に見える。茂みをかき分ける音に気づいていたようで顔はこちらを向いている。
そしてその空間にはもう一人、いや、もう一人だったモノがあった。うつぶせに倒れているそれは、自分から流れた血でおぼれている一人の女だった。




