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19話 属性アップ訓練(炎帝編)2

 訓練場も夜になり、辺り薄暗くなると、地面からの赤い光が立ち上り、遠くから見るとその凶悪さから”地獄の灯り”と呼ばれる光景が広がった。

 ベリッサは、その不気味な赤い光を前に、胸の前で手を組みながらうっとりとつぶやく。


「……薄暗い中、ルキアーノ様に手を引かれ、溶岩石の上を渡るのですわ。 途中で足を滑らせて落ちる所をルキアーノ様に抱きとめてくださり、二人はそのまま……  きゃーーーー! いけませんわ!ルキアーノ様。 でも、誰も見てない今でしたら…………」


 完全に妄想が暴走していた。 いや暴走だけで終わってなかったのだ。 妄想と現実の境界線が解けて混ざり合ってしまったのだ。


 つまり……


「きゃーーー!!ベリッサさんが、()()()()()()()()したわ――!!」


 その瞬間を見た生徒たちは口をそろえて言う。 ベリッサが満面の笑みを浮かべ、頬を紅潮させ、くねくねと身をよじらせながら飛び込んだと。 そして、うわごとのようにこうつぶやいていたという。


「いけませんわ!ルキアーノ様」

 もちろん、誰がどう見ても“いけません”なのはベリッサの方だった。



「溶岩の河に飛び込んだだと!?」


 ベリッサの事を聞いたダリオは

「あのベリッサが意味もなく馬鹿な事をするはずはない、これにはきっと裏があるに違いない。 ……はっそうか! 火柱に焼かれるよりも、溶岩の河に飛び込んだ方がダメージがでかい、という事は展開される防御魔法もより魔力が必要になる……」


「やるな、ベリッサ、だが、炎帝の(ぬし)の座は俺様のものだあぁぁぁ!!」


 そう叫ぶとダリオは、一切の躊躇なく、、溶岩の河にダイブした。


「うわぁちゃぁああああああぁぁぁぁ!!!」


 ダリルの状態は皮膚という皮膚は真っ赤に腫れ上がり、ところどころは黒く焦げ、服は溶けて皮膚に張り付いている。髪はチリチリに焼け落ち、眉もまつ毛も跡形もない。

 唇は乾ききってひび割れ、声を出そうとしても、かすれた呻きしか漏れなかった。


 「……お、俺様……の……勝ち……だ……ろ……?」


 次の瞬間、意識が途切れ、ダリルはそのままリタイアとなった。



「あれ?先生、ここの地面、ぐらぐらしていません?」


 生徒たちが足を乗せると、その“地面”がぐらりと傾いた。 足裏から伝わるのは、石の硬さではなく、熱を帯びた柔らかい脈動。

 まるで、石そのものが溶岩に沈みかけながら、絶妙なバランスで浮かんでいるかのようだった。


 それに揺れは一定ではない。 右に傾いたと思えば、次の瞬間には左へ急激に沈み込んだ。 足を踏み替えようとしただけで、石が「ボコッ」と沈み、熱気が噴き上がって足首を焼きそうになる。


 滑れば終わり。 踏ん張れば焦げる。 立っているだけで体力が削られていく。

 講師はそんな地獄の足場を前に、涼しい顔で言い放つ。


「ええ、ここから先の地面は溶岩に浮かんだ、特殊な溶岩石の上を渡ってもらいます。勿論落ちれば即リタイアになると覚悟しておいてください」


 なんでもない事のように言うが、どれほど残酷な過酷か、生徒たちは一歩踏み出した瞬間に理解した。

 溶岩の地面は、進めば進むほど足場が狭くなっていく。 しかも、その足場となる溶岩石は常にぐらぐらと揺れ、足を滑らせれば、そのまま溶岩の河へ落ち、一瞬の油断が即リタイアにつながる。


「はぁ……はぁ……頭が、朦朧とする……」

 訓練場そのものの暑さに加え、足元から吹き上がる溶岩の熱に、生徒たちの体力も集中力も、じわじわと削られていく。


「わぁあ!!」

 わずかに意識が途切れた瞬間、足場が傾き、バランスを崩した生徒が次々と溶岩の河へ落ちていった。



 そんな中、ミア、ルキアーノ、ベリッサの三人は、まるで別世界の住人のように危なげなく進んでいた。

 ミアは足場をわざと揺らしながら、目を輝かせて進んでいた。

「おおおお! まさに地獄のアスレチック!」


 ルキアーノはというと、揺れる溶岩石の上を軽やかに飛び移りながら、

「よっ、これはなかなか……」

 と、余裕すら感じさせる声を漏らす。


 そしてベリッサは……

「ルキアーノ様……過酷な試練に立ち向かうそのお姿……まさに勇者! そして私は捕らわれの悲劇の姫……勇者様は、姫が溶岩の河に落ちる瞬間、颯爽と抱きとめ……」


 ドボォォォン!!


「きゃああーーーーー!!ベリッサさんが溶岩の河に落ちた!!」


 妄想が暴走したベリッサは、落下の瞬間すら幸せそうな笑みを浮かべていた。

 そして引き上げられた時には、頭がチリチリに焼けて見事なアフロヘアとなっていた。


「ルキアーノ様……どうか……どうかこの手を…… 落ちゆく私を抱きとめ…… “必ず迎えに行く”と……

 あの優しい声で……囁いて…… ここですわ!」


 ドボォォォン!!


「きゃああーーーーー!!ベリッサさんが溶岩の河に()()()()落ちた!!」


 ミアが

「なんで溶岩の河にもう一回落ちたんだろ?」

「そっそうだね… なんでかなぁ???」

 ルキアーノはミアの質問にゴマかした。



「ダリオ君とベリッサ君もリタイアか。少し厳しくしすぎたかな?」

 灼熱の試練場の講師が、後ろを振り返り、少し後悔している気配だった。

 そこには特殊な溶岩石の上で全員が落ちないように一歩も動けない状態だった。


「なので、ここからはルキアーノ君とミア君の二人で…」

 そこまで言いかけたところで講師が急に振り返った。そしてそこに立っていたのは…


「ルキアーノ様との初めての共同作業にふさわしいのは、このベリッサ・ノクティアだけですわ。」


 ミアがベリッサの迫力に気圧されて

「どーぞどーぞ」と速攻で譲った。


「おほん、えーでは、ルキアーノ君とベリッサ君の二人で最後の試練を始めるとしようか」


 灼熱の訓練場全体が激しく揺れ始めた。 あちこちから火柱が立ち上りひと際でかい火柱が上がるとその中から、炎の鳥が現れた。炎の鳥は周りの火柱からの炎を纏い、巨大になってゆく。

挿絵(By みてみん)

 最終的には50Mもの、巨大な炎の鳥、不死鳥が現れた。

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