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この度、妹にペットされまして……双子の兄弟は先輩の大根と妹を愛育しながら旅をする!  作者: 三田黒兎素
第7章 かいほう

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終幕

「――さあ、『始まりの地』を目指して旅立とう!」


 新しくミヒメの『ペット』になったラズリアが元気よく拳を青空へと突き立てた。


「…………」


 ミヒメたちは無言で後片付けをしていて、誰もラズリアには反応を示さなかった。ちらっと見ることもなかった。黙々と収納魔法や収納機能を備えた鞄やポシェットに仕舞っていく。


「調子に乗ってすみません……」


 ラズリアは身を屈めてしゃがみ込み、背中を丸めた。

 旅の仲間全員に、手を出すなと言われているから、後片付けに参加することはできなかった。



 ラズリアの属性魔法は、『へんたい』だった。変態であり、変体でもある。

 身体の形態を変化させることに特化した稀有な固有魔法の持ち主だった。

 臆病ではあるが、積極的でもある。その他にも様々な二面性を併せ持ち、態度も体裁もコロッと変わる、とても厄介な元聖女の錬金術師が仲間になってしまった。

 魔導陣を一切必要としない物質を創りだせるラズリアは錬金術師としては有能ではあったが、日常生活に於いては、堕落していた。

 先ず、後片付けができない。一色淡に纏めてしまうため、探すのに苦労する。ラズリアの脳の仕組み自体がそうであるから、錬金で創った道具も当然、同じ仕組みになる。

 創った武器を見せてもらったが、誰でも使える一般的なものではなかった。使い手を選ぶのか、使い勝手の悪い武器だった。

 仲間になった記念にと、ミヒメはラズリアにスコップを創ってもらったが、形は整っているが使いづらかった。ヒナタがミヒメの為だけに作ったスコップの方が断然使いやすかった。

 錬金料理も、味は普通。そう、普通としか評価できない。何も食べるものがなければ、仕方なく食べようと思うくらいで、フウタの愛情が籠った料理と比べると雲泥の差で、ラズリアの錬金料理はラズリアが一人で食べた。


「あたし、万能薬創れます!」


 ラズリアは片眼鏡でどらちゃんを見て、発展途上中の胸を張って宣言した。

 けれども、どらちゃんはラズリアを家族と認めないとばかりに、プイッと顔を逸らし、ミヒメのポシェットの定位置の寝床に隠れてしまった。己の素材は渡さないと拒絶の意を表していた。


「オレたち、中級くらいの万能薬なら作れるから。上級の方も少しずつ成功率上がってるな」


 リゼットに学んでいたフウタは、旅に出る前から調理魔法を駆使して下級万能薬は作れるようになっていた。旅の間も、暇を見つけては万能薬作りの練習を重ねて、最近では上級万能薬にも挑戦し、10%の確率で成功していた。調剤器具はすべてヒナタのお手製だ。


「ミミもお手伝いして、作ったよ!」


 ありとあらゆる種類の薬が一式収納されている薬箱を出して、ミヒメもこれから発展していく胸を張った。

 自信満々で胸を張るミヒメと比べて打ちひしがれていくラズリアは、『へんたい』魔法を使おうかと本気で悩んだ。


「ソレ――鑑定眼鏡か?」


 ヒナタがラズリアの片眼鏡をしきりに気にしてはいるものの、自分からは絶対に質問はしないと決めこんでいるようで、顎で「訊け」と圧力をかけてくるヒナタの代わりに、フウタも気になっていたのは同じだからと覚悟を決め、ラズリアに問いかけることにした。


「そうなんです! よくぞ聞いてくれました! これは、錬金で創った、あたしの最高傑作で隠蔽されていようが、どんなものでも鑑定できる優れもので――」

「――悪いが、自慢話を永遠と聴いている暇はねぇんだ。ソレは、神聖教会の誰もが持っているのか? 使えるのか? ――質問にだけ答えろ」


 自分が質問して正解だったと、フウタはラズリアが熱く語ろうが無視を決め込み、話の途中でぶった切った。


「あ……えと、はい。これほど有能な鑑定器はない、です。この片眼鏡は、あたしの魔力でしか視れない、です」

「他の錬金術師は?」

「あたししかいない。あたしが最後の……そう最後の……」


 母親のように慕っていた椿の聖女のことを思い出してしまい、ラズリアは下唇を噛んで俯いてしまった。


「ミヒメがあんたを『ペット』しちまったし、ミヒメもまだ『ペット』の契約解除もできないみたいだし……このまま野放しにもできねぇ」


 フウタは家族(ペット)と最後にミヒメ(ごしゅじん)を見回していった。

 ヒナタは苦虫を嚙み潰したような顔をしているし、どらちゃんは頭すら出さない。くぅちゃんは自慢の毛を勝手に武器に使われて、隙あらば噛みつこうとしていて、モモちゃんもお尻の針をスタンバイしていた。

 ラズリアを『ペット』にしてしまえば『お願い』して家族を助けられると怒りのままに『ペット』してしまったが、『ペットスキル』を上手く扱えていないミヒメは、『ペット』解約することは叶わなかったことで、落ち込んでいた。

 たとえ、ペット解除できたとしても、放置していくわけにもいかないと痛いほど理解もしているミヒメ一家は、連れて行かないという選択肢は選べなかった。


「あまり役に立ちそうにはないが、一応、錬金術師としては有能そうだし? このまま放っておいて教会に逆戻りされても困る。ナイトさんの妹でもあるわけだし……連れて行くしかないが――聖女の心臓不要のダンジョンコアを創る上で、ミヒメを実験体にだけはするな! その『へんたい』魔法――戦闘には許可するが、オレたちもだが、絶対にミヒメには使うな。それがあんたを連れて行く条件だ。その条件を呑むなら、連れて行ってもいい。どうする――?」


 ご主人と先輩ペット一同の視線がラズリアを厳格に射抜く。


「あたし……その条件、守ります!! 絶対に守るから、一緒に連れて行ってください。お願いします」


 ラズリアは地面に頭を付けて土下座した。顔面にダイブした土には、『ペットされているから、その条件、最初から吞まされているし』と愚痴を吐き出しきって、最終的には誠心誠意で服従した。


「ラブちゃん、立って!」

「――はい!」


 ミヒメの『お願い』にラズリアは従順に立った。

 心も愛らしくなるようにと願いを込めて、ペット認定したミヒメはラズリアを『ラブちゃん』と命名(ペット)した。


「ふうちゃ」

「はいよ――ラブちゃん、目を瞑ってろ」


 ミヒメと以心伝心するフウタは全身泥だらけのラズリアを洗濯魔法で丸洗いした。乾燥魔法で最後の仕上げにピカピカフワフワにした。

 フウタは小汚かったラズリアを身綺麗にできて、解放感も得られスッキリしていた。

 ヒナタは『ラブちゃん、か……ヒメサマに『お願い』されたら呼ぶしかないか』と心の涙を流しながら、遠い目をしていた。

 発音が言葉(ラブ)にならない3頭は、我関せずと本能のままに好きなことをしていた。


「ラブちゃん……」


 ラズリアは目を瞑り丸洗いされる中、胸の契約紋にしっかりと『ラブちゃん』と刻まれたのを感じていた。自分の口から出した言葉に恥ずかしさが増し、暫く俯いたままだった。

 ようやく立ち直り、恥ずかしさを誤魔化そうと元気よく拳を突き上げたら――邪険にされた。


「――ラブちゃん、立って。行くよ!」

「はいっ!」


 ミヒメの掛け声(めいれい)にラズリアは元気よく従った。


「しゅっぱ~つ!」


 新しい仲間(ペット)も加わり、三兄妹たちの旅は続く――。

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