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この度、妹にペットされまして……双子の兄弟は先輩の大根と妹を愛育しながら旅をする!  作者: 三田黒兎素
第7章 かいほう

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幕間

 歴代の聖女の心臓(ダンジョンコア)が並べられている地下室の一室――。


「――これで簡単に暴走を抑えられるとは」


 瑠璃の聖女が創った封印箱を暴走していたダンジョンコアに被せると、あっという間にダンジョンコアの暴走は治まった。

 置き土産とでもいうように、沢山のガラス箱の封印具を残していったから、当面は困ることはなさそうだと、琥珀の神官長は胸を撫でおろした。

 瑠璃の聖女が去ったあと、錬金スキル持ちは一人もいなくなった。当然、聖剣モドキを創る者もいない。

 大神官長たちは祝福(かんてい)で『錬金』スキルを探しているが、なかなか見つからないようでイライラしていた。反神聖教会派が警戒しているようで、最近は祝福する子供の数も減っていると言っていた。


「大神官長は暴走を抑えられなかったようだね――」

「――っ!?」


 琥珀の神官の真後ろに教皇が立っていた。叫びだしそうになった口を慌てて閉じた。


「まあ、分かっていたがね……あ、そうそう。有能な錬金術師の聖女の式神――消えたよ」


 話しかけられているというのに、目の前に居るにも関わらず、気配が読めない。琥珀の神官長の背に冷汗が流れていく。


「一緒に、『椿の心臓(ダンジョンコア)』も浄化されてしまった……残念だよ」


 教皇が琥珀の神官長の耳元で囁いた。


「そう、ですね」


 嚙みそうになりながら、心の底では同意していないことを誤魔化し、何とか言葉を紡いだ。

 聖服の中のシャツの背中側はびっしょりと濡れていた。


「大神官長に伝えてもらえるかな? 『聖女の心臓(ダンジョンコア)』の暴走の原因も分からないし、まだ充分あるから、聖剣も急がなくていいと」

「了解しました。必ず、伝えます」

「頼んだよ――またね」


 足音も立てずに、教皇は部屋を出て行った。

 部屋の中に一人になっても、暫く息を止めていた。

 少しでも息を吐きだしたら、何もかも懺悔をしてしまいそうで、吐き出せなかった。

 どうしても苦しくなって、ようやく息を吐き出せた。息を吸うのが精一杯で、懺悔の言葉を出す暇がない。

 荒い息遣いの音だけが響く地下室の一室で琥珀の神官長は考えを纏めていく。

 教皇は恐らく知っている。琥珀の神官長が瑠璃の聖女を逃したことを。椿の聖女がダンジョンコアを創ろうとしていたことも。『聖女の心臓』を解放しようとしていたことも全て。

 何故かは分からないが、教皇は黙認している。


 教皇は一介の聖職者が逢うことは適わない。教皇を知っているのは、大神官長と神官長くらい。

 琥珀の神官長は、教皇から洗礼を受けたから、幼い頃から教皇を知っていた。

 洗礼を受けてから40年以上が経つというのに、その姿は今も変わらない。

 今なら、琥珀の神官長の方が年上に見えるだろう。そう見えるくらいに、若い姿だった。

 外部と繋がる隠し通路も、教皇が教えてくれた。

 琥珀の神官長も、何度か入ったことがあったが、本気で逃げたいと思えなかったからか、迷路の中の何処を歩いても最後には行き止まりに辿り着いてしまった。そして、還りは一瞬で、最初の入り口に戻っていた。


『外に出たいなら、迷ってはいけないよ』


 教皇は、そう言っていた。

 どんな役割を充てられているのかは今も判らないが、黙認しているということは、教皇の意に沿っているのだろう。

 式神は、隣の部屋で管理されている。そこには、琥珀の神官長のも同じく在している。

 洗礼を受けると、式神は一部を式髪へと変え、白いリボンとなり、本来の名を縛る。

 式神には、洗礼名が上書きされ、本来の名を隠される。

 亡くなると同時に、その者の式神は燃えて――消える。


「瑠璃の聖女の式神は燃えた、か。その意味するところは――」


 この世から去ったわけではない、琥珀の神官長はそう確信していた。


「解放されたんだね。おめでとう。そして――ありがとう」


 琥珀の神官長は首が折れそうになるくらいに天井を見上げた。

 遠くない未来、椿の聖女の元に会いに行けるだろう――そう願いながら、目を閉じ琥珀色の瞳を隠し、朱色の瞳を瞼に映した。

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