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この度、妹にペットされまして……双子の兄弟は先輩の大根と妹を愛育しながら旅をする!  作者: 三田黒兎素
第7章 かいほう

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釣り

 密集した林を抜けると、拓けた場所にでた。その奥には大きな湖があった。

 一帯は空気が澄んでいて、魔物の気配は一切感じられない。

 林の向こう側、一定の場所でウロウロしている魔物の気配は感じられるものの、こちら側には侵入できないようだった。

 見回すと、湖周辺はヒイラギの木に囲まれていた。魔除けの効果があると言われているから、聖霊樹とは違った、結界が張られているようだった。


「まだ明るいけど、今日はここで野宿しようか」

「は~い」


 ヒナタの提案にミヒメがすぐに同意した。従魔たちも反対の様子はなく、どらちゃんは日当たりの良い地面に埋まっていて、くぅちゃんは子犬のように小さくなって、ミヒメに抱かれている。新しく家族になったモモちゃんは、周辺の咲いている花々を順々に飛び回っている


「湖の水も、そのまま飲んでも大丈夫だ。透き通っているから、底も良く見えるが、深いようだから、落ちないようにだけは注意だな。あと、魚もいたから、釣りしようぜ!」


 片膝をついて湖を覗き込みんでいたフウタは、偵察が終わったようで、ヒナタたちの方に振り向いた。


「さかな……つり……魚釣り! ミミもしたい!!」


 旅に出る前に一度だけ川べりで魚釣りをしたことを思い出したミヒメはくぅちゃんを抱いたまま、釣りの準備を始めているフウタのところで飛んでいった。

 ミヒメはくぅちゃんを地面に下ろすと、背中のリュックから、ヒナタが作った釣竿を取り出していた。

 疑似餌のついた釣竿を勢いよく振り上げて湖へと投げ入れようとするも、背後に埋まっていたどらちゃんを釣り上げていた。


「どらちゃん、みずうみのお魚さん、つかまえられる?」


 ミヒメに問われたどらちゃんは、ブルブル震えながら疑似餌に絡まったギザギザの葉っぱを外そうと必死になっていた。

 見かねたフウタがどらちゃんを疑似餌から解放し、ミヒメをサポートして、今度は無事に釣竿を湖に投げ入れた。

 それらのやりとりを野営の準備をしながら眺めていたヒナタの顔はとても幸せそうだった。

 フウタとヒナタに交じりたいとほんの少しだけ嫉妬する気持ちもあるけれども、ヒナタが作った釣竿を今も大事に使ってくれているミヒメへの感謝の気持ちの方がそれ以上に勝っていた。


「平和だね~」


 そう呟くヒナタの声音も幸せの気持ちが乗っかっていた。

 ヒナタが居る場所まで避難してきたどらちゃんにしがみ付かれた足元のズボンが湿っている以外は、平和そのものだった。

 どらちゃんのエキス、疑似餌の代わりになるだろうかと物騒なことを考えながら、ヒナタは中断していた野営の準備を再開し、此処にくる途中で拾ってきた薪をくべて、焚き火を起こした。


「これで準備完了かな」


 予め用意していた水を鍋に入れて、お湯を沸かした。沸騰したお湯に茶葉を入れた。数分煮だしたら、天満茶の完成となる。

 夕食分の魚を釣り上げたようで、フウタとミヒメがヒナタのところに戻ってきた。


「おつかれ~。はい、どうぞ」


 程よく煮だしされ、温度も熱すぎない程度に冷ました天満茶をカップに淹れて、ヒナタは両手でフウタとミヒメに同時に差し出した。


「くぅちゃんも、召し上がれ」


 ヒナタの足元に行儀よく座っている子狼姿のくぅちゃんにも、先に冷ましてあった湯気の立っていない天満茶の入った皿を置いた。子狼の方が可愛がってもらえると分かってからは、ミヒメを乗せて歩く以外は、子狼の姿になっていることが多かった。

 どらちゃんは、既に台の上のお茶碗の天満茶風呂に浸かっていた。


「今日の夜は、金銀の満月の日だから、天満茶の葉の在庫も少なくなってきたから、どらちゃん、よろしくね」

「よろしくね、どらちゃん」


 追従するミヒメのお願いに、どらちゃんも今夜は張り切って、天満茶作りに貢献してくれることだろうと、ヒナタは釣ってきた魚を捌いていた。


「あ~、オレも手伝うわ」

「ミミも~」


 釣ってきた魚はニジマスで、フウタが煮魚、揚げ魚に、ヒナタが焼き魚に調理した。フウタの料理魔法には敵わないけど、ヒナタは火加減には自信があった。

 残ったニジマスは、マリネにして、ニジマス満載の夕食になった。


「おいしい~」


 ミヒメは頬を綻ばせながら、全てのニジマス料理を平らげた。


「今日の一ばんはね、マリネ~」


 マリネ作りだけは、ミヒメも参加した。どの料理も美味しくて優劣は付けれなかったから、ミヒメがメインで手伝ったマリネを一番にした。


「自信あったんだけどな……」

「焼き魚だけは、自信あったんだけどね……」


 シュンとするフウタとヒナタは気持ちを入れ替えるように、空を見上げた。

 夜空には沢山の星が煌めいていた。

 瑠璃(ラピスラズリ)の空に、ふたつの流れ星が流れていった。その後にもうひとつ、小さな流れ星が追いかけてるように流れていった。

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