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この度、妹にペットされまして……双子の兄弟は先輩の大根と妹を愛育しながら旅をする!  作者: 三田黒兎素
第7章 かいほう

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いい子いい子

 未開地の森林は草木が生い茂って、小さな獣が通れるような道しかなかった。

 ヒナタとフウタは、交代で進路を邪魔する枝や背を追い越す草を刈りながら、前へと進んでいく。


「延々と草刈りばかりで毎日で培った草刈りの技術がこんなところで役に立つとは、なっ!」


 先頭でフウタが草刈り鎌でサクサクと草を刈っていく。その姿はベテランの域に達している。


「ボクも、何度、草刈り鎌を作り直したことか……いい思い出だよね」


 ヒナタは先程まで先頭で草刈りをしていたので、今は最後尾で草刈り鎌を肩に担いで、襲ってきそうな魔物がいないか、周りを警戒しながら、フウタが作ってくれた道をのんびり歩いている。


「ふうちゃ、止まって~」


 ミヒメが小さな草刈り鎌を手に持ちながら、フウタの傍へと駆けて行った。


「ふうちゃ、動かないでね」


 ミヒメはフウタの足元の近くでしゃがみ込み、雑草に紛れていた薬草をミヒメ専用の草刈り鎌で刈り取っていた。その横では、どらちゃんも自慢のギザギザの葉を器用に操り、ミヒメも見逃していた薬草を刈り取っていた。


「もう、いっぱいになっちゃった……」


 畳2畳分の使い切りの収納袋は満杯になってしまい、ミヒメが今刈り取った薬草は行き場を失ったからか、ミヒメの手の中で元気がさなそうに見えた。

 どらちゃんが刈り取った薬草は、どらちゃんが身に着けている小さなポシェットの中にちゃっかり仕舞っていた。まだ少し、余裕がありそうだった。

 どらちゃんが身に着けているポシェットは、湖での夜番中に、ヒナタが端切れの革で極小の鞄を作り、フウタが内側にこれまた極小の袋を作り、小さな刺繍で魔導陣を引いた、どらちゃんの新装備になったミニミニポシェットだった。


「なんだって、ヨモギばかり採ってるんだか……」

「おくすりにもなるし、お茶にもなるし……ヨモギ団子が食べたいんだもん!!」

「あ~ヨモギ団子ね~」

「あ~ヨモギ団子か~」


 ヒナタとフウタの頭の中に、ヨモギ団子のほろ苦い記憶が蘇ってきた。

 ヨモギ団子は、旅に出る前によく母のリゼットが作ってくれたのだが――ミヒメが生まれる前までは、兄弟喧嘩の原因となるおやつだった。

 どうしてかヨモギ団子は奇数で、最後の一個をヒナタとフウタで取り合いの喧嘩になった。

 今考えると、最後の一個は半分にすれば良かったのだが、ミヒメと同じく、大好物であるからこそ、お互いに譲れなかった食い意地を懸けた取っ組み合いの喧嘩にまで発展していった黒歴史に、ヒナタもフウタも思わず苦笑いする。

 流血沙汰にまではならなかったというか、その辺は父のナイトが見計らって兄弟喧嘩を止めていたので、打撲程度で済んでいたが、その時の喧嘩で手加減を覚えたし、ワザと奇数のおやつを用意したのだろうなと思い返していた。


「ふうちゃ、食べたい! 作ってくれるよね?」

「はいはい」


 軽くミヒメの『お願い』が発動していると思いながら、フウタは抵抗することなく了承する。


「はいは、一回だよ」

「……はい」

「ふうちゃ、いい子いい子するから、しゃがんで」

「はいはい」


 フウタは、「しょうがねぇなあ」とボソッと呟きながら、ミヒメに言われた通りに、しゃがんだ。


「だから、はいは一回」

「はいよ~」

「う~。まあ、いっか。ふうちゃ、いい子いい子」


 嬉しそうにミヒメに頭を撫でられるフウタを見て、ヒナタはミヒメと同じ年の頃にリゼットに「いい子いい子」と頭を撫でられた記憶を思い出していた。


「ミヒメも。いい子いい子」


 此処はヨモギの群生地のようで、魔物除けにも効果があるのか、魔物が近くに居る気配も、近づいてくる気配もないことを確認し、ヒナタもフウタとミヒメに「いい子いい子」されにいった。


「ひーたんも、いい子いい子~」

「くぅ~ん」


 くぅちゃんも子狼になり、「いい子いい子」待ちをしながらヒナタの後ろに並んでいた。

 どらちゃんは弟妹のために、ヨモギの新芽をポシェット一杯に摘み、モモちゃんは、新米よろしくお花摘みに夢中になっていた。

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