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この度、妹にペットされまして……双子の兄弟は先輩の大根と妹を愛育しながら旅をする!  作者: 三田黒兎素
第6章 かいとう

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幕間

「――錫魔大王蜂とは、とうとう遭遇しなかったな。あいつの錫を手土産にするつもりだったんだけどな」


 ナイトは最後の錫魔蜂の王を難なく斬り伏せた。


(キング)だけでも、相当の数が出てきたけど、大王はダンジョンの中にまだ居るのかな?」

「どうだろうな。ダンジョンの暴走も治まったみたいだし、わざわざ中に入っていっても、時間の無駄になるだけだろうな」


 ナイトとリゼットは、スズナリダンジョンが暴走したという知らせを受け、ミヒメたちの後を追うのを取り辞め、ダンジョンから溢れてきた魔獣討伐に向かった。

 少し前に聖騎士を伴った神官が慌ててダンジョンへと入っていくのが見えた。見たことのない面々ではあるが、鉢合わせは避けたい。


「大崩壊するなら、その隙にダンジョンコアを保護するつもりだったんだけど、それも無理そうだね」

「それにしても――あそこのダンジョンは、いろんな金属が豊富だから、定期的に魔獣の数は討ち減らしているはずなんだがな……」

「最近、あちこちでダンジョン暴走が起きているみたいだし、魔獣の数は関係ないんじゃない?」

「そうかもしれないが、あそこの魔獣、毒持ちしかいないのかよ。俺の魔剣が啼いてる……」


 ナイトの魔剣――ノクスタリオンは、ジジジと小刻みに振動していた。魔導回路の自動洗浄が働いている証拠だが、毒が強いのか、様々な液体が混ざった故に、なかなか自動回復していかない。

 ネームド級の魔獣が暴れた土地は瘴気のよる穢れが酷く、浄化するために万能薬を振りまいていくリゼットに、ついでに魔剣ノクスタリオンにもかけてもらい、清めていく。


「ん~、何か、イマイチ?」


 清潔な布で拭いていくも、太陽の光に反射する剣の輝きが鈍い。


「研いでみるか――」

「そんなことしても、意味がねぇ。研ぐ以前の問題だ――このどあほうが!」


 大地が轟くほどのしわがれた怒鳴り声がナイトの背後から聞こえてきた。


「あら、ジンさん。お久しぶりです~」


 離れた場所を浄化していたリゼットは衝撃を受けなかったようで、ナイトの背後の人物を確認して、いつも通りに挨拶していた。ナイトは間近で衝撃を受けた分、頭の中がグワングワンと揺れていた。魔剣を落とさずに器用に持ったまま両手で頭を抱えていた。


「元気そうで何よりじゃ――貸せ。魔導回路がイカレとる。手入れをサボっておったな。特別にワシが直してやるとしよう。有難く思え」


 武器専門の魔導具師――ジンがナイトから魔剣ノクスタリオンを奪い取り、修理に必要な道具を取り出して、その場で修理していく。

 魔剣ノクスタリオン製造の親元がジンでもあるから、1時間も掛からずに修理だけでなく、改造もしていった。


「ほらよ。大事に扱えよ」

「ありがとう、ジンさん……お代だが」


 修繕・改造された魔剣ノクスタリオンを受け取ったナイトは、早速とばかりに魔力を流して機能を確認していく。自動回復機能だけでなく、切れ味は勿論、その他の性能が抜群にアップしていた。魔力を定期手に流すことで、魔導回路の修復機能も加わっていた。


「そこで振りまいていた万能薬、2,3本くれたらいい」

「あ、いや……それだけじゃ……」

「お前たちの子供たちから充分な礼を貰っておるからな、気にすんな」

「それって、どういう――!?」

「息子のような弟子ができてな。その弟子を紹介してくれたのが、ヒナタとフウタじゃ。ミヒメちゃんたちにも弟子の息子――ワシにとっては、孫のような子とそのお友達を助けてもらったんじゃよ」


 ジンはこれから、弟子に会いにいくという。

 遠回りにはなったが、弟子へのお土産に錫を買いに、ススラン村に行く途中だと話していたので、ナイトたちが討伐した錫魔蜂の王を全部、ジンに渡した。


「錫魔大王蜂じゃが、弟子が倒したらしい――といっても、子供たちと従魔たちの活躍がなけりゃ、危なかったそうじゃ。弟子は、防具専門の魔導具師じゃからな。大王蜂の鎧の錫で、子供たちの防具を誂えたようじゃから、旅のお守りになるじゃろうて。しばらくは弟子のところにおるから、用事ができたら、ワートル村にきとくれ。ではな」


 ジンはホクホク顔で、回れ右をして、軽い足取りでワートル村へと向かっていった。



「……みんな、無事でよかった」


 ジンの後ろ姿が見えなくなったところで、リゼットが呟くように言った。

 子供たちの怪我も大したことがなかったと分かり、リゼットは心の中で胸を撫でおろしていた。


「ほんと、無事でよかったよ」


 ジンの話だけでは、詳細までは分からなかったが、相当な危機を乗り越えたはずだ。

 ヒナタもフウタも、少しずつ強くはなってきているが、まだまだネームドと対峙できるほどではなかった。特にヒナタは錫魔蜂への心的外傷が酷かった。今回のことで、ヒナタも大きく成長したのだろう。

 会うのを楽しみにしているナイトではあったが――。


「このまま、ヒナタたちと合流する?」

「――逃げたという聖女も気になる。ダンジョンコアの暴走もしているようだし、もう少し、情報を集めてから、合流したい」


 目的の『始まりの地』までは、まだまだ遠い。旅をした距離に換算すると、4分の1にも満たない。

 これからも大王級の魔獣と遭遇するかもしれない。心配だからと、傍にばかりいては、子供たちの成長を妨げてしまうかもしれない。


「できるだけ近い距離を保ちつつ、ある程度の情報を集めたら、合流するか」

「逃げた聖女も必ずしも聖人君主とは限らないだろうし、接触する前には合流したいな」


 ウマが合わない同僚もいた。神聖教会で過ごした過去を思い出して、ナイトとリゼットの口から苦笑が漏れた。


「ねぇ、もんちゃん……今度、危険察知したら、教えてね」


 大地の上でのほほんと日光浴をしている大根(もんちゃん)がリゼットに鋭い視線を向けられて、慌てて身を起こした。

 もんちゃんを両手で拾い上げると、湿り気を感じた。

 もんちゃんが横たわっていた地面を見てみると、じっとり濡れていた。

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