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この度、妹にペットされまして……双子の兄弟は先輩の大根と妹を愛育しながら旅をする!  作者: 三田黒兎素
第6章 かいとう

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終幕

「――お世話になりました」

「お世わになりました」

「いろいろとありがとうございました」


 ヒナタを筆頭に、ミヒメとフウタも一斉にボウたち家族に向かってお辞儀した。

 くぅちゃんの首輪には、くぅちゃん仕様の身体の大きさが自由自在に成るロケットペンダント型の魔導具が装着されていた。

 蓋を開けると、土台には魔導陣が組み込まれていて、その中央に『小さいモノ』の紅い魔石ががはめ込まれており、陣の発動も担っている、ヒナタとフウタの合作魔導具だ。

 くぅちゃんの額飾りに嵌めてある灰色の石の裏側には、金銀を交じり合わせ錫で加工した魔導陣が刻まれている。石が簡単には外れないよう額と密着しつつ、防御と攻撃力上昇も組み込まれているという優れものだった。それらはボウ製作で、胴環と安全具も魔導陣が追加されたくぅちゃん仕様で大きさが変わる、ボウの特別級品に改良された。


「オレサマの専門は、防御特化だからな。オレサマにかかれば、ちょちょいのちょいよ」


 ボウは胸を張りながら、誇らしそうに鼻の下を指で擦った。


「うちの旦那、自分のことをオレサマって言うの、昔からなんだよ。面白いでしょ?」

「え、あ。そ、そうですね」


 ミヒメたちを見送りに来たイオリの同意を求める声に、ヒナタがたじろぐ。

 面白いとは思うよりも、気にはなっていた。個性だとは思っても、自分だったら、絶対に言わないと思っていたので、当たり障りのない言葉で返した。フウタも気持ちは同じなのか、終始無言だった。

 ミヒメは会話には参加せずに、小さくなったくぅちゃんを持ち上げて抱っこしていた。


「偉そうにしているわけじゃなくて、自分で自分に敬意を払っているだけなの。過去の自分(オレ)にサマをつけて、今の自分(オレ)が敬っているんだって。可愛いでしょ、うちの旦那は」

「は、はい」


 名を捨てるしかなかったとしても、親から贈られた名を大事に保管するボウの想いが『オレサマ』になったのだと解り、可愛いかは別として、今も以前も名を大切にしているのだと、ヒナタたちは感銘を受けた。


「おっかちゃん、その話はいいから……お前たちへの餞別だ。受け取れ!」


 照れくさそうにボウが魔導鞄から取り出した簡易鎧や肘や膝当てなど革防具一式を、それぞれに渡していく。


「お前さんたちが倒した錫を中に入れてある。大王の錫だからな、軽いが丈夫だ。それに成長にも合う仕様になってる、オレサマの超特別防具だ。大事にしろよ」

「こ、こんなの貰えない……」

「それに金だって……」


 お金を払うとしても、一生涯かけても到底払えそうもない、優れた防具だった。

 ヒナタだけでなく、フウタも恐縮していた。


「礼なら、充分、貰ってる。ニールを助けてもらった。おっかちゃんもウォルテも世話になった。オレサマも、お……ジン師匠からの返事が来た。近々、遊びに来るってよ。お前たちのおかげだ。ありがとな」


 父子としては名乗り合えなくとも、魔導具師として、師匠と弟子という新たな関係を築くことができた。名を捨てざる負えなかったボウにとって、これ以上の幸せはない。

 親父が魔導武器なら、息子の自分は最高の魔導防具を作りたい、その熱い想いが、ボウの心に火をつけた。だから、お金という価値では図れない、ボウの誠意と旅の安全祈願が魔導防具に込められていた。


「大事に使わせていただきます」

「一生大事にします。ありがとうございます」

「大切にします。ありがとうございます」


 ヒナタたちは、ボウの想いを汲み、受け取った防具を早速装着していった。

 どらちゃんにもとても小さな額飾りの魔導具が用意されていて、覚束ないミヒメをヒナタが手伝っていた。


「そうそう、これも受け取れ!」


 ヒナタには、ジン師匠からのカフス仕様の魔導具の作成書と図案が渡された。『これでミヒメ仕様のカフスを作れ』という指令書が入っていた。ジンが作るよりも、ヒナタが作る方が喜ぶからと。

 フウタには、自動回収型魔導鞄を見本として。作れ、という眼圧も一緒に。

 ミヒメとくぅちゃんには、小さな巣箱を渡していた。


「あの、これは……」


 ヒナタの顔が少しばかり引き攣る。

 どう見ても蜂の巣箱だった。くぅちゃんのロケットペンダントの横に装着できるように細工が施されていた。


「この子がくぅちゃんたちと一緒に旅したいんだって。怪我したら、助けるんだって。それに……ハチミツもこの巣箱にいっぱい貯めていくから、一緒に連れてって――と言ってます」


 ニールがハナちゃんたちの通訳をしながら、一緒に旅をしたいという花蜜蜂を紹介する。

 ミヒメの手くらいの大きさで、それ以上、大きくなることはないとニールは通訳する。

 ハナちゃんも身体の大きさを自由自在にできる魔導具を首飾りの身に着けていた。これから花蜜大女王蜂になった時には、家を出入りするのも難しくなるし、今の大きさでも村の周りをウロウロするのは目立つ。防犯対策もばっちりな魔導具となっている。

 ヒナタとフウタの合作と比べても、ボウの魔導具とは雲泥の差ではあったが、くぅちゃんは尻尾をパタパタさせて喜びを露わにしていた。これから自分たちも魔導の腕を上げて、改良していこうと、ヒナタとフウタは互いを見て頷いていた。


「この子も一緒に連れて行きたい! ダメ?」


 ミヒメの必殺技、『お願い』がヒナタとフウタに向けて発動された。


「ハチミツも自給自足しようよ! ひーたんの分、ミヒメが食べてあげる」


 ミヒメも力を制御できるようになったのか、ギリギリの範囲でジワジワと追いつめていくような『お願い』攻撃をフウタよりヒナタに多く、発射しているようだった。


「ボクも花蜜のハチミツは好きだよ。元気になるからね。だから、ボクのボクが食べるよ」

「オレもオレの分は食べるからな」

「え~!! そんな~」

「ヒメちゃん、独り占めはだめだよ」

「そうだぞ。みんなで仲良く食べような」

「うん、分かった。じゃあ、ペットしていいんだね。やった!」


 ミヒメのとても嬉しそうにする姿に水を差すわけにもいかず、蜂への心的外傷も克服したことから、ミヒメが花蜜蜂をペットするのをヒナタは静かに見守った。

 フウタの頭の中は、ハチミツを使った料理やお菓子のレパートリー探しに大忙しだった。


「ペット~」


 ミヒメのペット成就のお祝いなのか、空に虹の橋がかかった。


「モモちゃんだよ、よろしくね」


 新しくミヒメのペットになった花蜜蜂のモモちゃんの触覚は桃の形をしていた。


「いってきま~す!」

「いってらっしゃーい」


 弟のウォルテを抱っこするニールの隣にはハナちゃんが寄り添っていて、2人と1匹の兄弟はお揃いの衣装を着ていた。そのすぐ後ろでは大泣きするボウをイオリがレースが見事なハンカチで涙を拭っていた。

 ボウ一家に見送られ、新しい仲間も加わり、ワートル村を旅立った。

 ヒナタとフウタはそれぞれの手で、ミヒメの手を繋ぎ、兄妹仲良く――次の目的地は?


「次はどこに向かうの?」

「えっ? ……まだ決めてない」

「そういえば、決めてなかったな」

「え~!? あっ、どらちゃん? あっち、なの?」


 どらちゃんがポシェットのポケットから頭だけを出して、ギザギザの葉っぱの先でみっつの山が連なる方角を差した。


「それじゃあ、あっちに向かってしゅっぱ~つ!」


 どらちゃんが指し示す向こうには、何が待っているのかは分からないけど、何かがありそうな予感がして、ミヒメはワクワクしながらスキップしていた。

 しばらくはのんびりまったりとした旅をしたいと思いながら、ヒナタとフウタはミヒメと手を離さずに、ミヒメに歩調を合わせて3人並んで歩いて行った。

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