↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【9/25番外編追加】幼馴染の『死ぬ死ぬ』が五年続いたので、婚約破棄させていただきます【完結】  作者: 木風


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/8

第四話 誤解を解きたいんだ

 二人は午後いっぱい、食事をしながら話し込んだ。

 王太子だからと過剰に持ち上げる必要もなく、かといって無理に気の利いた話を探す必要もない。

 マルグリットが食べ物の話をすれば、アーヴァインは楽しそうに聞いた。

 アーヴァインが政務で訪れた地方の話をすれば、マルグリットはもっと詳しく知りたいと思った。


 帰り際、アーヴァインは庭園に咲く白い花を一輪だけ摘み、マルグリットへ差し出した。


「今日は楽しかった。また食事に付き合ってもらえるだろうか」

「もちろんですわ」


 即答した後で、マルグリットは少しだけ頬が熱くなるのを感じた。


 それから二人は、何度か手紙を交わした。

 アーヴァインから届く手紙には、堅苦しい挨拶よりも、その日に食べた料理や王城で起きた小さな出来事が綴られていた。

 マルグリットも、侯爵領で採れた果実や、街で見つけた菓子店について返した。


 街で偶然を装って出会い、茶を飲んだこともある。

 王城の庭園を歩きながら、互いの幼い頃の話をしたこともある。

 アーヴァインからの手紙が届く時刻になると、マルグリットは自然と玄関の方を気にするようになった。

 美味しい菓子を見つければ、次に会った時には彼にも食べてもらいたいと思った。


 銀色の髪を見かけると、無意識に目で追ってしまう。

 自分の中に生まれた気持ちが何なのか、もうわからないふりはできなかった。


 婚約解消から二ヶ月ほど経った頃、再び王城で夜会が開かれた。

 マルグリットが両親と会場へ入ると、少し離れた場所にいたアーヴァインがすぐにこちらへ向かってきた。


 周囲の令嬢たちが息を呑む。

 王太子はマルグリットの前で足を止め、恭しく手を差し出した。


「マルグリット嬢。今宵の最初の一曲を、私にいただけないだろうか」


 会場中の声が消えた。

 続いて、大きなどよめきが起こる。

 王太子が夜会の最初のダンスを申し込むことには、大きな意味がある。

 まして相手は、婚約を解消したばかりの侯爵令嬢だ。


「喜んで」


 マルグリットは差し出された手を取った。


 驚きはした。

 それでも、以前のように疑問符で頭が埋まることはなかった。

 彼が自分を特別に扱ってくれていることは、とうに気づいていた。

 そして、それを嬉しいと思う自分もいる。


 音楽が始まると、アーヴァインの手が腰へ添えられ、二人はゆっくりと踊り出した。


「驚かせてしまったか」

「少しだけ」

「少し?」

「手紙をいただくたびに、いずれこういう日が来たらいいな……と、思っておりましたから」


 アーヴァインは目を細めた。


「では、嫌ではなかった?」

「嫌でしたら、お手紙を何度も読み返したりいたしませんわ」


 そこまで言ってから、ずいぶん素直に話してしまったことに気づく。

 マルグリットが視線を逸らすと、アーヴァインの笑みが深くなった。


「それを聞けただけで、今夜は満足だ」

「わたくしの心臓は、まだ随分忙しく動いておりますけれど」

「私も同じだ」


 冗談ではないとわかる表情で言われ、マルグリットの頬が熱くなった。

 曲が終わるまで、二人の視線が離れることはなかった。

 ダンスを終え、火照った頬を冷まそうとバルコニーへ出たマルグリットの前に、思いがけない人物が現れた。


「マルグリット」

「……ユリアン様」


 かつての婚約者は、以前より少しやつれた顔で立っていた。


「話がしたい」

「わたくしにはございません」

「待ってくれ。誤解を解きたいんだ」


 ユリアンは逃げ道を塞ぐように、一歩近づいた。


「ターニャとのことは、もう終わった。あれは僕の気の迷いだったんだ。僕が本当に愛しているのは君だけだ」


 マルグリットは目の前の男を見つめた。

 二ヶ月前まで、この人と結婚するのだと思っていた。

 今では、どうして五年も我慢できたのか、自分でも不思議だった。


「ターニャ様はご存命なのでしょう?」

「ああ」

「では、あのまま結婚なさればよろしいのでは?」

「違うんだ。僕が結婚したかったのは君だ」

「わたくしとの結婚を望む方が、なぜ別の女性と式を挙げるのです」

「だから、あれは君に少し嫉妬してもらいたくて」

ブックマーク、★★★★★、リアクション

よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『無華の花嫁』書影公開
無華の花嫁
~華の加護なき無能な少女は、黒薔薇の殿下に愛される~
和風シンデレラ/異能恋愛/黒薔薇の殿下/虐げられ令嬢/救済&溺愛
本作品の文章・タイトル・設定等の無断転載、無断複製、生成AIへの入力および学習利用を禁じます。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。