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【9/25番外編追加】幼馴染の『死ぬ死ぬ』が五年続いたので、婚約破棄させていただきます【完結】  作者: 木風


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3/8

第三話 随分と生命力の強い令嬢だと思って

 夜会から三日後。

 アーレンス侯爵家へ、王城から正式な招待状が届いた。


「王太子殿下から、直々のお招き……?」


 差出人の欄には、アーヴァイン・フォン・エーレンバルト王太子の名が記されている。

 マルグリットは文字を見つめたまま青ざめた。


 夜会の翌日、侍女から「あのお方は王太子殿下です」と教えられた時には、膝から力が抜けそうになった。

 相手が誰とも知らずにローストビーフを取り合い、挙げ句の果てに「妥当ですわね」などと返してしまった。


 不敬に当たるのだろうか。

 王族の望んだ肉を奪おうとした罪。

 そのような罪名があるかは知らないが、昨夜からマルグリットの頭には最悪の想像ばかりが浮かんでいた。


「お父様、お母様。わたくし、処刑されるかもしれません」

「なぜローストビーフを半分にしただけで、そこまで話が飛躍するんだ」


 父は額を押さえ、母は娘の背中を撫でた。


「殿下も半分召し上がったのでしょう?」

「ええ」

「ならば大丈夫よ。処刑するつもりなら、全部召し上がっているわ」


 母の理屈もよくわからなかったが、呼び出しを無視するわけにはいかない。

 マルグリットは覚悟を決め、王城へ向かった。


 案内されたのは謁見の間ではなく、庭園に面した小さなサロンだった。

 窓からは柔らかな日差しが入り、白い花が咲く庭を見渡せる。

 少なくとも処刑台ではなさそうで、ほっと胸をなでおろす。


 扉が開いたその先には、白いテーブルクロスを掛けたテーブルと、湯気を立てる料理が並んでいた。

 中央には、大皿いっぱいのローストビーフ。


「よく来てくれた、マルグリット嬢」


 アーヴァインがにこやかに立ち上がる。


「あ、あの、殿下。先日は大変なご無礼を」

「無礼?」

「ローストビーフを奪おうといたしました」

「奪おうとしたのは私も同じだろう」

「それでも、王太子殿下に向かって妥当などと」

「妥当だった。綺麗に半分に分けただろう」


 アーヴァインは楽しそうに笑い、向かいの席を勧めた。


「今日は、あの日食べきれなかった分を心ゆくまで食べてもらおうと思ったんだ」


 大皿を見つめた。

 夜会で見たものより厚く、香りも素晴らしい。

 処刑を覚悟していた反動もあり、目頭が熱くなりそうだった。


「殿下。わたくし、感激しております」

「大袈裟だな。冷めないうちに食べよう」


 食事が始まると、緊張はすぐに解けた。

 アーヴァインは気さくで話しやすく、食事の好みもよく合う。


 やがて話題が婚約解消へ移り、マルグリットは教会で起きたことを包み隠さず話した。

 ターニャが五年もの間、余命わずかだと訴え続けたこと。

 ユリアンが何度も彼女を優先したこと。

 最後には、本物同然の結婚式まで挙げ、誓いのキスまでしたこと。


 アーヴァインは最初こそ真面目に聞いていたものの、結婚ごっこのくだりで耐えきれなくなったらしい。口元を押さえ、肩を震わせた。


「笑い事ではございませんのよ」

「すまない。だが、五年も余命を更新し続けているなら、随分と生命力の強い令嬢だと思って」

「わたくしも、そう思っておりました!」

「医師の診断書は確認したのか?」

「一度も見せてもらえませんでした。ユリアン様は、ターニャ様を疑うこと自体が残酷だと」

「主治医に確認は?」

「していないと思います」

「五年間、一度も?」

「はい」


 アーヴァインは目を閉じ、何とも言えない顔をした。


「ヴァイドナー公爵家は、嫡男へもう少し人を疑う教育を施すべきだったな」


 マルグリットはつい吹き出した。

 一度笑うと、今まで胸の中に溜め込んでいたものまで、すべて可笑しく思えてきた。


「本当に、その通りですわ」

ブックマーク、★★★★★、リアクション

よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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『無華の花嫁』書影公開
無華の花嫁
~華の加護なき無能な少女は、黒薔薇の殿下に愛される~
和風シンデレラ/異能恋愛/黒薔薇の殿下/虐げられ令嬢/救済&溺愛
本作品の文章・タイトル・設定等の無断転載、無断複製、生成AIへの入力および学習利用を禁じます。
― 新着の感想 ―
王太子なら令嬢と取り合わず初めから厨房から取り寄せなさいよ…
え? ギャグ? ギャグなの!? お母さん、面白いわー!
>ならば大丈夫よ。処刑するつもりなら、全部召し上がっているわ お母様www 実は結構混乱してらっしゃる??
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