婚約者 江里子
営業部神山は、ぼんやりと一人の人物を眺めていた。
通販部の上田の婚約者らしい。
なぜか、支店に主張中の営業部の神山が面倒をみることになっていた。
「えー、うーん...」
上田の婚約者、江里子は、支店の中で、ウロウロとしたり、ぼーっとして過ごしている。
「何か、山の方の営業所で事故に巻き込まれたらしいよ」
支店の社員の人が教えてくれた。
へえ、何か大変なことがあったんだな。
しばらく、そっとしておいた方がいいかも。
そう思って、神山は自分の次の仕事に集中した。
□
それから、しばらくして。
江里子は、支店の隣町、つまり本社がある方のボランティア団体に引き取られることになった。
「それで、神山さん」
「はい」
「あの辺、治安悪いでしょ?」
まあ、確かにそうなのだ。
「私たち、ちょっと心配でね。
江里子さんをボランティア団体に合流するまで、一緒に連れて行ってほしいんだけど」
「えっ、私がですか?」
「いやいや、一人でいけなんて言わないよ。支店の社員も一緒に行くから」
「はあ...」
神山もこのぼんやりした江里子を、あの治安が悪い地域に一人で送り出すのは、少し心配ではあった。
「じゃあ、決まりね」
□
「大変な目にあった」
神山は、あれからぼんやりと病院のベッドの上で考えていた。
あのボランティア団体は、嘘の団体で実態は、テログループだった。
それから江里子の付き添いをしただけで、テロリストと間違われて、会社の人間に逆にテロリスト扱いされたりして、襲われたり...。
何がなんやら。
あれから江里子は、テログループに残ったらしい。
去り際に江里子が、なぜ冷たいのかとか、注文が多いとか色々文句を言ってきた。
どうやら神山は、損しただけになってしまった。




