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テンプレ地雷客だわ!

六本木、暗めの照明にシーシャの煙が漂う会員制ラウンジ。

 開始五分前。私は完璧なメイクと余裕の笑みを携え、指定の個室へ足を踏み入れた。


「こんばんはー♪。はじめまして。よろしくお願いします」


 部屋には既に、若手起業家風の男二名と、私と同じタイミングで呼ばれたらしい女の子が一人。

 大学生風の彼女は、開始早々、男の一人に耳元で何かを囁かれ、困惑した笑顔で固まっていた。


「……で、本当はもっと稼ぎたいんでしょ? この後、二人だけで抜けようよ。内緒でプラス出すからさ!?」


 最初はまともに談笑しているフリをして、テーブルの下で太ももを撫でながら、こっそりねちっこく追い込んでいく――いわゆる『隠れ地雷』。

 ――ふぅん。相変わらず、陰険で安っぽい攻め方。


「ねぇねぇ! 私、そういう内緒話、混ぜてくれないと寂しくて死んじゃいますよ?」


 私は強引に男二人の間に座り、彼女の太ももを這っていた男の手を、自分の手で上から押さえつけて解放した。

 驚く男の耳元に顔を寄せ、魔力を静かに流し込む。

 権能――【虚栄の暴走ラグジュアリー・ハイ】。


「ふふふ、そんなに焦ってこっそり誘わなくても、『本物の余裕』がある人なら、指一本触れずに女の方から縋らせるのがいいんじゃないですか?」


 同時に、もう一人の男にも魔法を飛ばす。

 男たちの間で「どちらがよりスマートな成功者か」という見栄の競い合いに火をつけた。


「……ハッ、そうだな。確かに、こそこそ口説くのはダサいか」

「当たり前だろ。おい、その子に無理させんな。今日はこの店で一番高いボトル開けて、チルしようぜ。シーシャのフレーバーもいいやつに変えて」


 暗示にかかった男たちは、競い合って『神客』を演じ始めた。

 ねちっこく探っていた手は引っ込み、彼らは高価な酒とシーシャの煙に巻かれながら、自分のビジネス哲学を語ることで「格の違い」を見せつけようと躍起になりだす。

 私は適当に相槌を打ちながら、男たちから溢れ出した『歪なエゴ』を丁寧にドレインしていく。

 

 一時間後。

 精気を抜かれ、心地よい賢者タイムに包まれた男たちは、満足げに時計を見た。


「……あー、なんか今日はこのくらいで解散するか。」


 男たちは「楽しかったよ」と、数枚の万札をチップとして私と彼女に握らせた。見栄をブーストされた彼らにとって、ここでケチってもしょうがないのだ。


 店を出て、エレベーターを降りる。


「あのっ! 本当にありがとうございました。助かりました……」


「いいよ。思ったより(チップ)多かったし。ふふふ」


 私はスマホのQRコードを表示した。

 現場を合わせることはできなくても、地雷客の共有や『裏の連絡網』は作れる。


「何かあったらラインして。……夜道、気をつけてね。良ければギャラ飲みのグルチャも招待するね」


 彼女と別れ、私はスマホを操作する。

 サキュバスの記憶。港区の夜。

 ここは私にとって最高の狩場であり、彼女たちを守ろうかな、と密かに誓う。

 

 さて、六本木の週末の夜はこれからだ。

 次は二十二時。

 できれば終電には間に合いたい。


 今度はどんな『毒』を、札に変えてやろうかしら。


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