変わらない時間
ただ一緒にいるだけの時間。
今回はそんなお話です。
「今日部活だよね、一緒に行こ」
紬にそう言われて、少しだけ驚きながら頷いた。
「……うん」
昨日のことなんて、なかったみたいに。並んで歩く廊下は、いつもと変わらないはずなのに、なぜか少しだけ、意識してしまう。
「なんか今日静かじゃない?」
紬が横から覗き込んでくる。
「そう?」
「うん。いつももっと喋るのに」
くすっと笑われて、
「気のせいでしょ」
そう返すと、紬は「そっか」と軽く流した。
鞄を下ろして、いつもの席に座った。今日は、雨の絵でも描こうかな。そんなことを考えながら、スケッチブックを開く。
「あっ、澪。何描くのー?」
振り返ると、興味津々な顔をした紬が立っていた。
「特に決まってないよ。紬は?」
そう聞くと、
「私も決まってないけど、澪と絵描きたいなーって!」
満面の笑みで、そう言う。あぁ、また。心臓が、きゅっと縮まる。
「じゃあ隣いい?」
当たり前みたいにそう言って、紬はすぐ隣に座った。
肩が少し触れて、また、変に意識してしまう。その顔を見ているだけで、どうしようもなく嬉しくなる自分がいる。
あの子にも、こうやって笑うのかな。
ふと浮かんだその考えに、ぞくっとした。何考えてんの、私。こんなときに。
「澪さ」
紬が、ふいにペンを止める。
「ん?」
「なんか、落ち着くんだよね」
「……なにが?」
「こうやって一緒にいるの」
さらっと言われた一言に、また、心臓が変な音を立てる。
「他の子と描くのも楽しいけどさ。澪だと、なんか違うっていうか」
少しだけ考えるように言って、
「うまく言えないけど」
そうやって笑う。なんで、こんなに嬉しいんだろう。
「……ありがと」
小さくそう返すと、紬は少しだけ驚いた顔をした。
「珍し」
「え?どうして?」
「いや、澪がちゃんとそういうこと言うの」
くすっと笑われて、
「たまには言うし」
ちょっとだけむっとしながら言い返す。
「ふーん」
「なにその顔」
「別に?」
楽しそうに笑う紬に、
つられて少しだけ笑ってしまう。こういう時間、嫌いじゃない。ただそれだけなのに、なぜか少しだけ、胸の奥があたたかくなった。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
少しずつ変わっていく気持ちに、気づかないままの時間。
次もぜひ読んでいただけると嬉しいです!!




