休日のズレ
気づかないフリをしていた恋心が少しずつ形になっていく話です。
駅前のカフェは、少しだけ人が多かった。ドアを開けると、コーヒーの匂いがふわっと広がる。
「あ、いたいた」
手を振りながら、テーブルに向かう。
「やっほー」
「じゃ、さっそくやりますか」
軽い挨拶のあと、机の上に問題集を広げて、筆箱を開ける。今日の予定はシンプルだった。私は友達の雨田 美奈と、カフェで勉強会をする約束をしていた。シャーペンの芯を出して、最初の問題に目を落とす。最初はちゃんと静かな時間だった。
ページを何問か進めていくうちに、カフェの音が少しずつ背景に溶けていく。コーヒーを飲む人の音とか、遠くの笑い声とか。
「ふぅ……」
ストローをくわえながら、美奈が少しだけ体を伸ばした。そして、にやっと笑う。
「なんかさ、勉強だけじゃつまんないし」
その目が、ちょっとだけ楽しそうに細くなる。
「恋バナでもしようよ」
「えっ?」
シャーペンの動きが止まる。
思わず顔を上げると、美奈がじっとこっちを見ていた。
「その顔はさ、なんかあるでしょ」
「え、ないない」
慌てて笑ってみせる。
首も振るし、いつも通りのはずだった。
でも、自分でも分かるくらい、手の中が少し冷たかった。シャーペンの芯が、少しだけ紙に沈んだまま動かない。
「じゃあ先に美奈が言ってよ。好きな人のこととかさ」
私は軽く笑いながらそう言った。本当は、自分のことを話題に出されないようにするのに精一杯だった。
「えっ、まあいいよ」
美奈は一瞬だけ考えてから、あっさりうなずく。
ストローをくるっと回しながら、ぽつぽつと話し始めたのは、学校の先輩のことだった。
「でね、その先輩が私のヘアアレンジ見てさ、“可愛い”って言ってくれて!」
「まじで?!脈ありじゃん!」
気づけば澪も、いつも通りに盛り上がっていた。
でも、どこか心の奥が引っかかる。
こういうのが、恋なんだ
そう思った瞬間、少しだけ息が詰まった。
読んでくださりありがとうございます!!これからも頑張って書くので読んでくれると嬉しいです!!




