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後悔しても、君が好き  作者: ぽてと。
2/5

いつも通り、じゃなかった日

いつも通りの放課後が、少しだけ変わる回です。

よければ最後まで見ていただけると嬉しいです!


「あれ、澪、結局抹茶にしたの?」

紬が不思議そうにのぞき込んでくる。

「そうだよ。一口いる?」

そう言うと、紬は待っていたみたいにぱっと顔を明るくして頷いた。その瞬間、また、胸の奥がきゅっと締めつけられる。

どうして、こんなことで。

「じゃ、もらうね」

 紬はそう言って、私の手元のお菓子に顔を近づける。思ったよりも距離が近くて、ほんの少しだけ息が触れた気がした。

「……っ」

変な声が出そうになって、慌てて口を閉じる。

「ん、おいしい」

何も気にしていないみたいに笑う紬に、私だけが、さっきよりもずっと落ち着かなくなっていた。

「澪もチョコ食べる?」

「え、あ、うん……」

差し出されたそれを受け取るとき、指先が少しだけ触れて、それだけで、また胸が騒ぐ。

「ねえ澪」

紬が、ふいに声を落とした。

「なに?」

できるだけ普通に返したつもりだったけど、少しだけ声が硬くなる。

「うちさ」

ほんの少しだけ間を置いて、紬はいつもより小さな声で続けた。

「ちょっと気になってる人、いるんだよね」

その瞬間。さっきまで確かにあったはずの温度が、すっと引いていく。

「……へえ」

自分でも驚くくらい、あっさりした声が出た。

「どんな人?」

聞かなきゃよかったのに、そう思う前に、言葉が出ていた。

「んー、なんていうか……」

紬は少しだけ考えるように視線を上げて、

「一緒にいると、楽しい人」

そう言って、いつもみたいに笑った。それが、自分じゃないことくらい、わかってるのに。

胸の奥が、じんわりと痛む。

「そっか」

それだけしか、言えなかった。最悪だ、道路を見つめながら目の奥が熱くなっていくのを感じた。

「あ、やば。もうこんな時間じゃん」

紬がスマホを見て、少しだけ慌てた声を出す。

「ほんとだ」

つられるように画面を見ると、いつもより少し遅い時間だった。

「ごめん、今日ちょっと寄るとこあるから、ここで別れてもいい?」

その言葉に、一瞬だけ反応が遅れる。

「……あ、うん。全然いいよ」

できるだけ普通に答えたつもりなのに、どこかぎこちない気がした。

「ありがと!じゃあまた明日ね」

軽く手を振って、紬はいつもと違う方向へ走ってく。その背中を、ただ見ていることしかできなかった。たったそれだけの話が、どうしてこんなに引っかかるんだろう。

「……そっか」

小さくつぶやいた声は、すぐに車の音にかき消された。ポケットの中から抹茶味のお菓子を取り出す。甘いはずなのに、なぜか、少しだけ苦かった。

 抹茶味にしたのは、紬が喜ぶ顔が見たかったから。

そんなことを思っていた、ほんの数分前の自分が、少しだけばかばかしく感じた。

ここまで読んでくださり本当にありがとうございます!これからも読み続けてくれると嬉しいです!!

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