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「んじゃ、秒で終わらせるから!」

「分かってると思うけど、そいつらはただの巨大カマキリじゃないから!」

「おっけー。だったら本気でいくね!」

「おうよ! サキュバス諸共吹き飛ばしてやらぁ!」


 エリックの声にクーとネイラが頷く。同時に『本気』を出す二人。


「んじゃ、秒で終わらせるから!」


変身メタモルフォーゼ>を解除したクー。そこに立つのは6本の足を持つ蜘蛛の下半身。黒と黄色のまだら模様は美しくもありそして狂気的。そこで生み出される糸はあらゆる物体を捕らえ、その動きを封じていくだろう。

 クーも高揚しているのか、その頬は赤く熱っぽい。舌先でちろりと唇を舐める様子は、見知っているエリックでさえ唾をのむほどだった。そのままクーは腕を振るい、指先から放出する糸で周囲を自らのテリトリーに変化させていく。


「あはっ、切ってもいいよ。もっと早く切らないと、捕まっちゃうよ」


 エンプーサの呼び出したカマキリはクーの糸を切るように鎌を振るう。だが、その腕の動きさえも捕らえるかのようにクーは糸を放ち、少しずつ動きを捕らえていく。僅か一秒の攻防の末に、カマキリは身動き一つできないほどまで糸に絡み取られていた。


「変身! バスター! ヘラクレス!」

「【第一の誓い(ファースト・オース):人道のために戦う】……承認」


 ネイラの叫びと同時に、ヘラクレスと思われる声が響く。

 ネイラの拳に、黒く光るナックルガードが装着される。


「【第二の誓い(セカンド・オース):名乗りを上げ、正々堂々と戦う】……承認」


 ネイラのを守るように、黒の胸当てが宛がわれる。


「【第三の誓い(サード・オース):弱き者に攻撃を振るわない】……承認」


 ネイラの腕と足に黒の甲冑が生まれる。


「【第四の誓い(フォース・オース):礼節を尽くし、毅然とした態度を取る】……承認」


 ネイラの顔を隠すように、黒のヘルメットが形成される。


「【第五の誓い(フィフス・オース):魔物討伐のために戦う】……承認」


 今しがた生まれた兜に、大きな角が生える。


「我が名はバスターヘラクレス! 世に仇為す魔の一族を討つ滅ぼすため、ここに見参!」


 そしてポーズを決めるネイラ。


「……やってる間に攻撃すればいーじゃんと思うのは、あーしだけ?」

「まあまあ、誓い(オース)ってそういうものらしいから」

「行くぞ!」


 そして突撃するバスターヘラクレス。相手の斬撃を甲羅で受け流し、そのまま拳を叩きつける。圧倒的な防御力と圧倒的な攻撃力。まさしく重戦車ジャガーノートの名に恥じぬ戦い方と、強さだ。


「成敗!」

「はーい。あんたが最後ね。おつかれちん!」


 まさに秒殺。呼び出されたカマキリは、クーとネイラの手によってあっさり戦闘不能に追い込まれた。

 そしてその矛先は、カマキリの主であろうエンプーサに向けられる。


「次はお前だ。降伏するなら痛みなく葬ってやろう!」

「――とか言ってる間にあーしが貰った!」


 丁寧に宣告するネイラの横から、クーが糸を解き放つ。四方から迫るクーの糸。速度やタイミングの完璧。エンプーサは反応すらできずに糸に捕らわれ、


「大したものね、アラクネ。タイミングはバッチリだったわ」


 糸に捕らわれたエンプーサの周囲の空間が切り裂かれ、血色の鎌が現れる。持ち手がいない鎌が空を舞い、クーの糸を切り裂いていた。


「ならばこれはどうだ!」


 エンプーサが鎌を掴んだ瞬間に、バスターヘラクレスが走る。三歩目で地を蹴り、足を突き出すようにして飛び蹴りを放つ。圧倒的なパワーから生まれる蹴りは、岩をも砕く大槌の如く。


「その鎧、もしかして聖人セイント? 驚いたけど、誓いにとらわれ過ぎね」


 ネイラの蹴りが直撃――すると同時に赤い霧のような姿になり、消え去るエンプーサ。霧はすぐに元に戻り、余裕の笑みを浮かべるサキュバスが二人を見降ろしていた。


「この程度かしら? 子供の遊びに付き合うのは飽きたんだけど」

「何その態度、あったまくるんですけど!」

「クソッタレが! ……おおっと、【第四の誓い(フォース・オース)】が解けちまう。そう言っていられるのも今のうちだぞ!」

「……アンタ、それ着てるとき結構ストレス抱え込むんじゃね?」


 エンプーサの挑発に、慌てて言葉を言いなおすネイラ。それをあきれ顔で呟くクー。


「それじゃ、そろそろ頂こうかしら。女は趣味じゃないんだけど――っ!」


 余裕の笑みを浮かべるエンプーサは、背後から巨大カマキリに切られたことで顔を歪ませる。完全に予想外だったらしく、何があったかが分からない表情だ。

 見れば、自分の呼び出した巨大カマキリがいた。その鎌についているのは自分の血液だろうか。何故こいつがそんなことをする? 私を裏切るはずがない。その表情がそう語っていた。

 エーテルの流れを見る魔眼でそのカマキリを見て、どういう状態なのかを察知する。その瞳は、すぐにエリックを睨む


「ど、どうも。迷惑でしょうけど、操らせてもらいました」


 睨まれたエリックは、謝罪するように頭を下げる。

命令オーダー>でクーの糸に捕らわれたカマキリを操り、エンプーサに襲わせたのだ。戦いの最中に<感覚共有シェアセンス>でクーと意志疎通をして、カマキリの一匹だけ拘束を解いてもらっていた。


「……貴方が操ったのね。どういう技かは知らないけど、私の子供を籠絡するなんて」


 怒りの表情のまま、エンプーサは指を鳴らす。空間に穴が開き、そこから赤い鎌が出てくる。鎌はエリックを引っかける様にして、穴の中に引きずりこんだ。


「夢の中で溺れてなさい」

「エリっち!?」

「大将!」

「貴方達もよ。子供達が受けた痛みは、その胎で償ってもらうわ」


 エリックが捕らわれて生まれた隙をつくように、クーとネイラの足元に空間の穴が開く。そこから伸びてきた赤い無数の手に捕らわれ、穴の中に引きずり込まれていく。

 動揺さえしていなければ反応はできただろうが、時すでに遅し。

 三人を封殺したエンプーサは、限界とばかりに近くの木にもたれかかった。。


「……血鎌に血霧化、血界門三連続。まったく血の使い過ぎね。おまけに私も子供達も痛い一撃喰らったし。たった三人なのに割に合わないわ。

 まったく、ファーガストの嘘つき野郎には後できっちり請求しておかないと」


 ため息をつくと同時に、よろけながら歩き出すエンプーサ。これ以上の魔力消費を押さえるため、ノーコストで移動を開始した。

 館の建物が開き、サキュバスを迎え入れて閉じた――


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