第3話
店長らしき男性が慌ててやってきた。
「これはこれはヴァーシヴァル様。うちの店員が椅子も出さないで申し訳ありません」
レインの前に椅子が置かれる。
「それに貸し切りもせず、申し訳ありません。よく言い聞かせますのでお許し下さい」
「そこまでしなくていい。椅子はまあ、座らせてもらおう」
椅子に座るレインの後ろに、アルビーは立つ。
男性は冷や汗をかく。
しばらくして、店員がやってきた。
「大変お待たせしました」
ビビをレインの前に促す。
レインの前に立ったビビは、すっかり変わっていた。
髪は解かされ、大きな赤いリボンのヘッドドレスを着けて、小さなリボンが散りばめられているワンピースを着ている。
「気に入ったか?」
にこにこと笑うビビから、男性に顔を向ける。
「とりあえず十着ぐらい用意して後で屋敷に届けろ」
「はい。ありがとうございます」
ビビは嬉しそうに笑う。
「服、ありがとう。レインお兄さん」
にっこり笑うビビを、レインは見下ろす。
「これから何かあれば、私に言いなさい」
「はあい」
ビビはくるりと回りスカートが舞った。
レインの手を掴むビビはにこりと笑う。見下ろすレインはその手を振り払うことはしなかった。
執事長は顔には出さず驚いていた。
レインが眠る少女を抱き抱えているからだ。
「お嬢様の名前を伺ってもよろしいですか?」
「ビビだ。部屋を用意しろ」
「客室でよろしいでしょうか?」
わざわざ確認する執事長に、レインは眉を寄せる。
「いえ、その。隣の部屋かと、思いまして」
今は使われていないレインの隣の部屋は、妻となる女性が使うことになっている。
今現在、レインにそんな女性はいない。
レインは冷たい眼差しを向ける。
執事長は冷や汗をかく。
「大変失礼いたしました」
歩き出したレインにアルビーと執事長が続く。
「旦那様。ビビお嬢様を養女にするのですか?」
レインは凍てついた眼差しを執事長に向けた。
「お前が考えることではない」
「失礼いたしました」
「何か言う者がいれば、私に報告しろ」
「承知いたしました」
軽く頭を下げる執事長は、気持ちよさそうに眠るビビを見る。
いつまでもレインを恐れないでいてほしい、と思うのだった。




