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あ、お前の推し、死んでるから  作者: まつり


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帰宅

足が…終わった…!

帰ってきてすぐに布団へダイブしたい程に眠たかったのに、頑張ってお風呂に入ったら起きた時多少マシかと思ってたけど、甘かった。


一つも良くなってない。


「そらそうだろうよ。

普段運動なんてしてないんだから。


タケやんはそのまま腹出して寝ててもいいから、アイデアを出してくれよ。

足は死んでも耳は無事だろ?


俺の未練なんてさ、もう残りかすみたいなもんなんだから、いつ召されるかわからねぇ。


時間はないぜ。


もし次にディーンのアニメ化が決まった時のために、アニメ一本分に必要な曲、書き上げちまわねーと!」


やる気だねぇ。

デルタはさ、分かってるの?

そのやる気を出せば出すほど、自分が消えるのが近づいて行くんだよ。


「分かってるよ。

でもな、やらねぇとここに居る意味がない。


そんな奴はとっとと輪廻に還った方がいいだろ。

元々反してんだよ、摂理に。


やらなきゃならないことをやる為に、死んでも尚ってハナシなんだから。」


僕は…。


うん、でも手伝いたくはないなぁ。


「なんでよ。


作者だろ?頭には、このシーンにはこんな曲が伴奏されてたら良いなってのがあるもんだろ。」


あるよ。

あるけどね。


普段さ、デルタは自分の作品って何パーセントぐらい自分の思い通りに行ってる?


僕はね、せいぜい5%とかなのさ。


脳をカポッと外して、読者にカポッと入れ替えられたら、もっと面白いものが伝わるのにっていつも思っているよ。


でもたまに、なにかの拍子に30%ぐらい伝わるように描けたかもっていう日があるんだよ。


それは外的要因なのか、自分の心が応えてくれたのかは分からないけどさ。


「何が言いてーのよ。


完成度の話なら少し分かるよ。

完璧な曲を書けたって思いは、完成して2秒ぐらいのもんだからな。


だから、少しでも完成度上げるためにタケやんが曲の雰囲気を決めた方がいいだろ。」


楽すんなよ、デルタ。

僕の完璧を目指してデルタが作ったら、多分大したことないものしか出来ないよ。

それはデルタの完璧ではないからね。


デルタの完璧で、僕の完璧をこえてみろよ。


「かっこいい台詞だけどな、それがどんだけ難しい事かって話をしてたんじゃねぇのか?


今、まさに。」


そうだよ。


でも、頼むよ。


「……頼まれたなら、仕方ねぇか。


その代わり、時間かかるぜ、間に合わなくなっても知らないからな。」


間に合わないのは許せるけど、完成させないのは許さないからね。


ま、アニメ化の話なんて影も形もないし、時間はたっぷりあるよ。


「そうなぁ。


作者様がそういうなら、俺なりに全力を尽くさせていただきますよ。」


うん。


あ。


えーと…。


「なに?俺の正体もわかった事だし、今更聞きにくい事もないだろ。

気を遣わずになんでも聞けよー。」


あのさ、デルタの両親は?


「割と早いうちに死んじゃった。

だから俺は高校の頃から一人暮らしなんだよ。

幸い保険金とかで普通に生きて行くのは問題なかったから。


俺も早く死んだし、我が三角家はジョースター家なみに早逝家系だなぁ。


あはは。」


笑いにくいんだよ。

じゃあさ、恋人は?


「なんだよ、何を探りたいんだ?」


いや、普通にさ、僕はデルタに仕事を依頼している訳だから、賃金が発生するもんだろ。

技術に金銭を払わないなんて、技術職である漫画家の僕が許容する訳がない。


支払い先がね、あれば良いなって。


「あー。

そういうこと。


…当時は、いたよ。

ふつーに。


っていうかさ、先輩がなんとなく言ってたろ?

バンドマンなんて、恋人に支えでもして貰わなきゃ生活がままならないんだよ。


ほら、よくバンドマンはモテるっていうだろ?

あれは逆なんだよ。

モテないやつはバンドを続けらんねぇのよ、金銭的に。」


世知辛…。

そういえば遅咲きの漫画家に表彰とかで会う機会があるけれど、そういう人たちはみんな人当たりいいし、清潔感ある気がするわ。


社会人生活を経てるからそうなのかと思ったけど、バンドマンと似た事情もあるかもしれないね。


「な。


っていうかよ、身近な人間も魅了出来ないようなやつが舞台に立ったって輝くのは難しいんじゃないの。」


そういうもんかね。

…じゃあ、もしもデルタの曲でお金が遺った場合は、その人に渡せばいいのかな。


「いやー、タケやんの懐に入れちゃっていいよ。

何年も前に死んだ男の財産が転がり込むって、なんかあんまり良くないって。


当時はちゃんと好きだったし、感謝もしてるけど、俺の願いは上手く忘れてくれることぐらいだよ。


別に先輩んとこと違って子供が居たわけでもないしな。」


そっか、そうだね。

もしかしたら、もう結婚して幸せにやってるかもしれないしね。


「そゆこと。

生きてる人には邪魔になるよ。


その辺は弁えてるさ。

死者は死者。

でも、ほら、タケやんもそうだけど、作品は死なないってのが、俺らの救われる所だよなぁ。


もしも俺が遺した何かで稼ぎが出来て、遣うのをためらうなら、寄付でもしたらいいさ。」


お布施でもしようかな。

宗教に。


「え?なんか特定の宗派だったっけ。

墓暴くぐらいだから信心深くないと思い込んでたわ。」


うん、スパゲッティモンスター教。


「え?」


スパゲッティモンスター教。


「ごめん、聞こえはしてたけど、脳まで届きそうにないわ。」

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