表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あ、お前の推し、死んでるから  作者: まつり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/9

エゴサ

やめとけって、配信1回目の野良Vtuberが話題になってる訳ないだろ。


出て来ても悪口しか書かれてないって。


配信から世が明けた朝、幽霊の癖に朝っぱらから僕のスマホを使ってSNSの巡回を開始するデルタ。


「んあー、なーんも書いてない。

出てこない。」


そんなもんだって。


僕は僕で、デルタのモデリングに時間を使いすぎて本業がヤバい。

本当は起きたくない朝にこうやって頑張って目覚めて、作業を進めるしかないのだ。


「あ、マシュマロに一通質問が来てる。

えーと?ちくりんが受けですか、デルタくんが受けですか、だって。」


あー…。

そっか、そうだよね。

昨日の配信聞いてたら、僕と同棲してる野郎がVtuberを始めたって受け取るよね。


だってマジで幽霊だなんて思わんもん、普通。


しかもデルタのやつ、他に話題がないからって僕の事ばっかり話しやがってさぁ。


ほぼほぼ、実況!パワフル野郎の同棲生活だったもの。

記念すべき第一通目のマシュマロが、BL確信レターとかどうなの。


ある意味それもあれじゃない?

傷じゃない?もはや。

デジタルタトゥーじゃない?


「こういう質問って、また次の配信で返せばいいんだよな。」


そうそう。

ネタになるからね。

ラジオのハガキみたいなもんだよ。


否定するにしてもオシャレな返事でも考えておきなよ。


「いや、タケやんこそ、ていの良い言い訳考えておかないとさ、マネージャー的な人がいるんだろ?


仕事管理してくれてる人が。


事後報告にはなっちまうけど、ちゃんと伝えた方がいいぜぇ。


礼儀だろ、人としての。」


え、僕、幽霊に軽く説教された?


それはそうなんだけどなぁ。


僕にはモーさんというマネージャー的な人がいる。


専属のマネジメント業を承ってる人じゃなくて、出版社に勤める社会人。


単に僕への仕事の依頼がその出版社になっていて、その担当がモーさんってだけ。

出会いは僕が中2の頃に漫画を投稿したときまで遡る。

いや、語るほど劇的なものではないんだけど、普通に担当としてついてくれたのがモーさんなのだ。


そいで、僕の漫画が見事にスマッシュ打ち切りをくらった後も、なんとなく担当はモーさんって感じになったまま。

もはや漫画家としてはやる気を失って描くことがなくなった今でも、いろいろと窓口の役割をしてくれている。


なにを個人の仕事を社畜極まりない編集に管理させてんじゃいって話はごもっとも過ぎて反論のしようもない。


元々親戚みたいな、ご近所の幼馴染だからって甘えちゃってる所もある。

編集者をやってるなんて知らなかったから、出会いというか、再会なんだけれども。


一度自分でやるから良いよと言った事もあるんだけれど、マネジメントをする上で必要な知識をチラッと聞いただけで無理かもって思ってしまったので、そのままモーさんに投げっぱなしだ。


正直、こういうのに絵を使うから描いてって言われるがままに描いて送っているだけだから、自分の作品が何にどう使われているかなんて全然知らない。


僕はSNSもアカウントがあるだけで運営していないし、個展を開いたり、売れない絵描きが傷を舐め合う集まりにも顔を出したりしないから、仲間もいない。


だから大丈夫だと思ったんだけどね、デルタを勝手に出してもさ。


あぁ…。


デルタのエゴサと僕のイラストレーターとしての仕事がひと段落ついて、買い置きしていたシュークリームのクリームを啜っていると、僕の電話がブルブルと震え出したのがみえた。


寒いのかな。

寒いんだろう、きっと。


「出ないん?」


まだ言い訳を考えてないから出ない。

本当に仕事で必要な事なら、メールで来るし。


「朝にも鳴ってたし、タケやんが集中して気がついてないだけで、2時間ぶり7回目の着信なんだけど。」


甲子園出場校紹介みたいに言うなよ。

出ないったら出ない。


「じゃあ、俺がでちゃお。」


あっ。


「もしもし、はい、はい?

そうです、俺がデルタですね。


あ!見てくれたんですか?嬉しいです。

どうでした?


はい、あー、はい。

いやー、そうですねぇ、それは俺がまだまだって感じっすね。


はい。


はい。


あっはっは!

確かに!タケやんってそういうところありますよね!」


……何盛り上がってんのよ。

モーさんもモーさんだよ。

普通かけた相手と違う人が出たら、代わってって言って終わりでしょ?

話し込んでんじゃないよ。


なんか友達が家に遊びに来た時に、母さんが変に構ってきて恥ずかしかった時を思い出すわ。


「え?はい、あー、そうっすねぇ。

嫌がってるって言うよりは、うまく説明出来ないから電話に出たくないって感じってすね。


あ、はい。

んー、そうすね。

それはそうだと思います。


えー?

あはは、良いっすねそれ。

俺は全然良いっすよ。


いやでも、あっちのパターンもありますかね。

えぇ?


あはは。

それかも!」


気になるわー。

親族みたいなモーさんと、初対面…初会話のはずのデルタが謎に盛り上がってるのは気になるわー。


しかも僕の話題っぽいし…何が良いっすねなんだ?

サプライズの打ち合わせみたいなセリフが断片から漏れてんだよ。


「そりゃ…。


あ、モーさん、タケやんがこっち見てますわ。

え?いやいや、流石に舐めすぎじゃね?


そうかなー。」


あ?なんだよ。

塩でも撒いてやろうか。

効果があった試しはないけど。


「なー、タケやん、モーさんがな、仕事終わったらウチに寄ってくって。

食いもん買ってくから、何食べたいか教えてくれってさ。」


食べ物が何もしないでも目の前に現れるのは助かる。

なにかなー、何食べたいかな。


無難にカレーでいいか。


カレー。


「プッ!プププ」


なんだよ。

何その音。

笑ってんのか?


「ダッハッハ!マジでした!無難にカレー!

一字一句おんなじ!


あ、タケやん福神漬け多めに貰ってきてくれるって。


あ、はい、分かりました。

また後で。


はい。


はい。


はーい。」


…無難にカレーだろ。

どこにでも売ってるし、ハズレは少ないし。


そうだ、買うか。

そうしよう、買おう。


最近のゴキは殺虫剤に耐性がある奴もいるとか。

コイツもその類のお化けで、塩ならなんでも良い訳じゃないんだろう。


…塩は粗塩とかの方がいいんだっけか。

なんか神社とかが清めて売ってるやつあったよな。


それを買おう。

金なら惜しまん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ