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あ、お前の推し、死んでるから  作者: まつり


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3/9

配信してみよう

おら、早くやるんだよ。

男だろ。


あ?時代錯誤?

死人には通用しないんだよ、人権問題なんか。


「でもよー、緊張するってー。」


いいんだよ、別に失敗したってなんだって。

暇つぶしだろう?

やってみないと改善点とか分からないじゃん。

分からないことって気持ち悪いじゃん。

とっとと始めろ。


「そうだけどさー。

あれ、俺さ、善良極まりない系お化けだけどさ、アンチが増えまくったら悪霊になったりしない?」


知らんわ。



はい!はじめまして!


化野デルタと、申します〜。


ね!


えーと。

えーと。

あのー、あー、えーと。



はいカット。

なんだ初回7秒配信って。


そこまでノープランだとは思わなかったわ、流石に

なんだお前、やること決めたって言ってただろうが。


「決めてたんだけどよぉ、いざとなるとなかなかパッとは出てこないって。

人が見てると思ったら、縮こまるもんだろ!」


縮こまるもんがないだろ。

身体が無いんだから。


凝ったサムネイルを作らせといてその体たらくは許されないぞ?

見ろ!僕のサムネイルパワーで、今のクソみたいな配信でも4人も見てくれているんだ。


お前はその4人を裏切ったんだぞ。


「ごめんて。

そうだな、そうだよな。


もっかいやるわ。


初回は自己紹介って決めてたから、元々考えてた事を言うだけ。


そう考えたら気は楽だし、そんなことも出来ないなら、これからやっていけないもんな。」


よし、立ち直ったならすぐやれ。

まだ客は逃げてないかもしれないぞ。


「そんな、釣り人みたいに言うなよ。

俺のかわいいリスナーさんだぞ。」


おー、心構えだけは立派だ。



はい!はじめまして!

化野デルタと、申します〜。


はじめましてでしょ?はじめましてじゃない?

たった今機械の不具合で7秒で配信が途切れた新人Vtuber、化野デルタです。


お見知り置きを。


はじめましては自己紹介から。

これはどこに行っても付き纏うよね。


聞いてくれてる、えーと、7人のみんなは、入学式とか入社式とか、そういう挨拶の場面でうまく行ったかな。


なかなか難しいよね、どんな人たちが見てるか分からないし、まだ場もキャラクターも出来上がってないし。


あ、初コメント。

ありがとう。


えーと…?


[流石に初めましてで失踪したことはないけどな。]


不具合だっての。

確かにしどろもどろにはなっちゃったけど。


なんだっけ。

あ、自己紹介か。


あ、まずなー、SNSアカウントも作ったからフォローしてくれなー?


そこにピン刺して貼っておいたけど、プロフィールもちゃんとあるのよ。


第一回はそれを読み上げていこうと思います。


名前、化野デルタ。

バケノデルタな。


お化けなんだぜ、俺。

あ、信じてないだろ、マジなんだって。

死んでんのよ。


足がないどころか、身体も命もないから。


[ちょい痛設定]


自己紹介1行目から痛い人扱いすんなって。


んでな、お化けだからさ、よくあるプロフが無いわけよ。

身長は不定形だし、血液型は血が流れてないし、歳もないわけよ。

定型分ってあるんじゃんか、プロフのさ。

その殆どが消えたわ。


あはは。


あ、体重は21gね。


ほら、魂の重さはあるわけだから。


んでな、お化けっていっても色々ある訳じゃん?

彷徨いてたり、カメラに写ったり、録音に紛れ込んだり。


俺はいわゆる地縛霊ってやつで、ある建物に取り憑いてたんよ。


[未練とかあるでござるか?]


ござる?

いや、それが拙者にも分からないでござるなぁ。


んでな、取り憑いた家にやって来た奴に話しかけまくってた訳。


[草]


草?


んでな、お前そんなに喋りたいなら、身体をやるから世間様にお話ししろって、仏様みたいなこと言い出しやがったのよ。


そうしてVtuberになったって訳。


[その取り憑いた絵師がママってこと?]


ママ?


[Vを描いてくれた人]


あー、そうそう。

住んでたやつが偶然絵を描けるやつでさ。

絵も好みに合うしお願いしたのよ。


偶然。


だから住んでたやつがメタラーだったら、俺はいまメタルを配信してるわ、多分。


あ、こういう、中身がいますよ的な事言わない方がいいんだっけ。

ま、いいか。


身体のない可哀想なお化けちゃんが、代わりにガワを貰って喋ってるんだから、別に設定的に破綻してないだろ。


ま、そんな感じよ。


[ちくりん絵感謝 ¥1000]


え?あ、これがスパチャか。

ありがとうございます。


ちくりん?タケやんって有名なの?


[そこそこじゃな]

[有名っちゃ有名]

[ちくりんなの?訳分からん設定に絵描いてて草]


訳分からん設定って言うな。

へぇ〜。

なんか俺しかタケやん知らないと思ってたから、嬉しいわ。


いい奴なんだよ。


[ちくりんに取り憑いたってことでおk?]


違う違う。

タケやんの家に取り憑いてんの。

俺が先、あいつが後。


精神的家主は、俺。

法的な家主はあいつ。


[迷惑www]

[ちくりん見てるー!?]

[ちくりんって本名出してないのに、タケやんって言っていいの?]


うっそ。

…ま、いいんじゃね?

フルネームは言ってないし、みんなもなんとなく竹が付く名前なんだって気がついてはいたろ。


安直だもんな。


俺の名前も出る夫にしようとしやがってさぁ。

ギリギリで、俺のセンスが炸裂してデルタに変えてやったけども。


でなー、タケやんがなー…………。



こいつなんで初配信で僕のことばっかり話してんだ?

っていうか、早速僕の関与がバレた。


そんなに人気のイラストレーターじゃないんだけどなぁ。

高校生の頃に漫画の連載してたけど、人気なかったし。

画集も一冊出してるけど、チビるほど売れなかったし。

ちょくちょく仕事はあるから知ってる人は知ってるだろうけども…。


あんまりデルタが有名になったら、僕のマネージャー代りをやってくれているモーさんに怒られそう。

勝手な事すんなって。


ないか。

デルタが有名になるとか。


登録者数12人だもんな。

ギリギリサッカーが出来る人数に僕の遊びがバレたからって…ま、大丈夫でしょ。

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