配信してみよう
おら、早くやるんだよ。
男だろ。
あ?時代錯誤?
死人には通用しないんだよ、人権問題なんか。
「でもよー、緊張するってー。」
いいんだよ、別に失敗したってなんだって。
暇つぶしだろう?
やってみないと改善点とか分からないじゃん。
分からないことって気持ち悪いじゃん。
とっとと始めろ。
「そうだけどさー。
あれ、俺さ、善良極まりない系お化けだけどさ、アンチが増えまくったら悪霊になったりしない?」
知らんわ。
◆
はい!はじめまして!
化野デルタと、申します〜。
ね!
えーと。
えーと。
あのー、あー、えーと。
◆
はいカット。
なんだ初回7秒配信って。
そこまでノープランだとは思わなかったわ、流石に
なんだお前、やること決めたって言ってただろうが。
「決めてたんだけどよぉ、いざとなるとなかなかパッとは出てこないって。
人が見てると思ったら、縮こまるもんだろ!」
縮こまるもんがないだろ。
身体が無いんだから。
凝ったサムネイルを作らせといてその体たらくは許されないぞ?
見ろ!僕のサムネイルパワーで、今のクソみたいな配信でも4人も見てくれているんだ。
お前はその4人を裏切ったんだぞ。
「ごめんて。
そうだな、そうだよな。
もっかいやるわ。
初回は自己紹介って決めてたから、元々考えてた事を言うだけ。
そう考えたら気は楽だし、そんなことも出来ないなら、これからやっていけないもんな。」
よし、立ち直ったならすぐやれ。
まだ客は逃げてないかもしれないぞ。
「そんな、釣り人みたいに言うなよ。
俺のかわいいリスナーさんだぞ。」
おー、心構えだけは立派だ。
◆
はい!はじめまして!
化野デルタと、申します〜。
はじめましてでしょ?はじめましてじゃない?
たった今機械の不具合で7秒で配信が途切れた新人Vtuber、化野デルタです。
お見知り置きを。
はじめましては自己紹介から。
これはどこに行っても付き纏うよね。
聞いてくれてる、えーと、7人のみんなは、入学式とか入社式とか、そういう挨拶の場面でうまく行ったかな。
なかなか難しいよね、どんな人たちが見てるか分からないし、まだ場もキャラクターも出来上がってないし。
あ、初コメント。
ありがとう。
えーと…?
[流石に初めましてで失踪したことはないけどな。]
不具合だっての。
確かにしどろもどろにはなっちゃったけど。
なんだっけ。
あ、自己紹介か。
あ、まずなー、SNSアカウントも作ったからフォローしてくれなー?
そこにピン刺して貼っておいたけど、プロフィールもちゃんとあるのよ。
第一回はそれを読み上げていこうと思います。
名前、化野デルタ。
バケノデルタな。
お化けなんだぜ、俺。
あ、信じてないだろ、マジなんだって。
死んでんのよ。
足がないどころか、身体も命もないから。
[ちょい痛設定]
自己紹介1行目から痛い人扱いすんなって。
んでな、お化けだからさ、よくあるプロフが無いわけよ。
身長は不定形だし、血液型は血が流れてないし、歳もないわけよ。
定型分ってあるんじゃんか、プロフのさ。
その殆どが消えたわ。
あはは。
あ、体重は21gね。
ほら、魂の重さはあるわけだから。
んでな、お化けっていっても色々ある訳じゃん?
彷徨いてたり、カメラに写ったり、録音に紛れ込んだり。
俺はいわゆる地縛霊ってやつで、ある建物に取り憑いてたんよ。
[未練とかあるでござるか?]
ござる?
いや、それが拙者にも分からないでござるなぁ。
んでな、取り憑いた家にやって来た奴に話しかけまくってた訳。
[草]
草?
んでな、お前そんなに喋りたいなら、身体をやるから世間様にお話ししろって、仏様みたいなこと言い出しやがったのよ。
そうしてVtuberになったって訳。
[その取り憑いた絵師がママってこと?]
ママ?
[Vを描いてくれた人]
あー、そうそう。
住んでたやつが偶然絵を描けるやつでさ。
絵も好みに合うしお願いしたのよ。
偶然。
だから住んでたやつがメタラーだったら、俺はいまメタルを配信してるわ、多分。
あ、こういう、中身がいますよ的な事言わない方がいいんだっけ。
ま、いいか。
身体のない可哀想なお化けちゃんが、代わりにガワを貰って喋ってるんだから、別に設定的に破綻してないだろ。
ま、そんな感じよ。
[ちくりん絵感謝 ¥1000]
え?あ、これがスパチャか。
ありがとうございます。
ちくりん?タケやんって有名なの?
[そこそこじゃな]
[有名っちゃ有名]
[ちくりんなの?訳分からん設定に絵描いてて草]
訳分からん設定って言うな。
へぇ〜。
なんか俺しかタケやん知らないと思ってたから、嬉しいわ。
いい奴なんだよ。
[ちくりんに取り憑いたってことでおk?]
違う違う。
タケやんの家に取り憑いてんの。
俺が先、あいつが後。
精神的家主は、俺。
法的な家主はあいつ。
[迷惑www]
[ちくりん見てるー!?]
[ちくりんって本名出してないのに、タケやんって言っていいの?]
うっそ。
…ま、いいんじゃね?
フルネームは言ってないし、みんなもなんとなく竹が付く名前なんだって気がついてはいたろ。
安直だもんな。
俺の名前も出る夫にしようとしやがってさぁ。
ギリギリで、俺のセンスが炸裂してデルタに変えてやったけども。
でなー、タケやんがなー…………。
◆
こいつなんで初配信で僕のことばっかり話してんだ?
っていうか、早速僕の関与がバレた。
そんなに人気のイラストレーターじゃないんだけどなぁ。
高校生の頃に漫画の連載してたけど、人気なかったし。
画集も一冊出してるけど、チビるほど売れなかったし。
ちょくちょく仕事はあるから知ってる人は知ってるだろうけども…。
あんまりデルタが有名になったら、僕のマネージャー代りをやってくれているモーさんに怒られそう。
勝手な事すんなって。
ないか。
デルタが有名になるとか。
登録者数12人だもんな。
ギリギリサッカーが出来る人数に僕の遊びがバレたからって…ま、大丈夫でしょ。




