歌ってみた
さぁ、始まりました。
初めましての方も、また来てやったぜの方も、どうも、化野デルタです。
こんちわ。
今日はお歌を歌いますよ。
普通は録音したのを流すんだろうけど、俺ぁライブ派でね。
その場でトラックを作りながら歌っていくよ。
[カラオケじゃないのか]
[トラックを…作りながら…?]
カラオケ苦手なんだよ。
あれって歌いやすいようにカスタムされてるから、ちょこっとの音程のハズレもめちゃくちゃ目立っちゃうだろ?
実際は音程なんてそんなに大切じゃないから。
男はハート!
ロックもハート!
それにキーも違うからね、自分に合わせないと喉を痛めちゃうよ。
ま、俺は幽霊だから喉はないけども。
さー、歌っていきますよー。
まずはこの間ディーンのPVに使われてた曲にでもしようかな。
リクエストあったらコメントしてくれなー。
◆
「間違いないわ。」
あ、そう?
先輩がそういうならそうなんだろうね。
「おー。
声はもとより、音のセッティングのクセまで同じだからな。
なんか涙出てくる。」
メッセージのやりとりじゃ涙は見えないよ。
…でも、うん。
デュールのCDとおんなじだ。
「タケトが歌う曲は少ないから、気づく人はいないだろうけどな、俺が歌う曲が多かったからさ。
お前はどっちのボーカルが好きなんだ?」
ポヒュッ
「見たことないキャラクターのスタンプで誤魔化すな。
まぁ、アイツもいい声だったよ。
歌詞が遅いからボーカル曲が少なかっただけで。」
歌詞?
歌う人を選ぶのに関係あんの?
「あるある。
ウチはその曲を歌うやつが歌詞を書くってルールだったから。
その方が歌いやすいし、感情も乗るだろ?」
へぇ。
クレジットだけじゃ分からないね。
全部作詞作曲がデュールってバンド名義になってるから。
「印税の関係でバラしたら揉めるんだよ。
先輩バンドがそれで揉めに揉めたのを山程見てきてたからさ、ウチは最初に誰が作ってもバンド名義にしようって決めてたんだよ。」
印税ねぇ。
そう考えたら一人親方の漫画家は気楽なもんだね。
「そうな。
独り占め出来るしな、お金も。
…まぁ、いまだに入ってくるデュールの印税は、唯一の生き残りである俺が独り占めしてんだけども。」
笑えないんだよ。
でもまぁ、デルタが記憶を取り戻したとしても…気にしないと思うよ。
お金に興味なさそうだったし。
「元からそういうところあるからな、アイツ。
っていうか稼ぎたいやつが選ぶ道じゃないから、バンドマンなんてギャンブル。」
それは確かに。
そういえば、バンドマンってどうやって生計立ててるの?
アルバイト?
「そういう奴もいるし、普通に昼は働いている奴もいるよ。
あとは…あの、彼女に養って貰ってたり。」
ヒモかー。
夢を追う奴にハマる人はいるからね、漫画家の卵にもいたよ。
「ヒモって…まぁ、実際そうなんだけど。
アイツにも彼女いたんじゃなかったっけな。
あんまり詳しく突っ込んだりしたら、何が出てくるか分からないから聞いたことなかったけど。」
まぁねぇ。
芸術系を志す若者あるあるだよね。
っていうかさ、デルタのメンタルヤバくない?
カップルに挟まれながらバンドやってたんでしょ?
気を使うって。
「あー、まー、ねぇ。
知らなかったんじゃないかな。
こっちが突っ込まないってことは、アイツも突っ込んでこないってことだから。」
気づくでしょ、普通。
ポヒュッ。
「なにこのゆるキャラのスタンプ。
気づいてたけど、どうでも良かったのかもね。
俺らよりも年下だったし、2人の弟って感じだったからさ。
だから不思議と旦那が死んだことよりも、タケトも死んだって聞いた時の方が、何故か悲しかった記憶があるね。
比べる物でもないし、もちろん両方とも悲しいことだったんだけど、なんというか、罪悪感がね。
旦那も悲しかったろうな。
嫁が別の男を思って泣いてんだから。」
だから笑えないんだって。
やめてその遺族ジョーク。
「あはは。
あ、タケトこの野郎、ベースライン簡略化しやがった!
人にはテクニカルフレーズ押し付けてくるくせに!
打ち込みなんだから一緒だろうがよ!」
ちょっと前に言ってたよ。
人が弾くならむずくても映えるけど、打ち込みでやると微妙だって。
「俺は根っからのアナログ奏者だから分からないけど、それもそうか。
難易度なんて上げようとしたらいくらでもどうにでもなるもんな、打ち込みだと。
漫画も同じだよなー。
デジタルぢと一コマを拡大出来るからいくらでも描き込めちゃうもんなー。
ある程度でやめないと見づらくなっちまう。
タケ、お前も気をつけろよ。
描き込み癖あるだろ。」
はい、全くその通りでござんす。
…色々、見抜かれてるな、僕もデルタも。
「ところでさ、こないだ俺が手伝った原稿、次の次の月の分まであったろ?
なんでそんなに描き溜めてんのよ。」
…色々、見抜かれてるな、僕もデルタも。
◆
「あー、歌いすぎて声が枯れてるかも。」
幽霊の声は枯れないだろ。
いつも通りだよ。
「そう?そんな気がしたんだけどなー。
ところで着いてこいってさ、どこに向かってんの?」
散歩。
乗り物に乗れなくても、歩く僕に着いては来れるだろ?
「うん、まぁね。
俺が人に取り憑くタイプの幽霊だったなら、タケやんに取り憑いて電車とか乗れたのかなー。」
あー、人に取り憑くパターンもあるか。
…生前にもっと仲良くなってればそうなってたかもね。
会う機会、なかった訳じゃないし。
「ん?なんか言った?」
いや、歩くには遠いなって。
「え、散歩じゃないの?」
散歩だよ。
ただ、今日と明日は7時間歩く予定だけど。
旅館はいいところにしたよ、せめてもの慰めで。
「いやいや、それって散歩っていわないだろ。
歩くスピードが時速4キロとかだろ?
…50キロ先まで行こうとしてんの?
旅やんけ。
俺を置いて電車に乗りなよー。
運動不足だろー、タケやん。
漫画家なんて座りっぱなしなんだからさー。」
旅じゃないよ。
それに、デルタと2人で行かなきゃ。
なんというか、罰当たりだから。
この為に原稿を先の先まで上げて、仕事に影響しないようにしたんだから。
はい、シノゴの言わず着いてきなさい。
「亭主関白ぅ。
いいよ、着いていくけどさ。
俺は疲れないし。
んで、どこいくの?」
墓参り。




