ミカドタケト
「タケ、またディーン読んでんのか?」
うん、まぁね。
ほら、自分の作品だから、ちゃんとなってるか気になってさ。
作り直した方が良くなるとは限らないけど、なるべく全部をぶつけたいじゃん。
「まぁな、俺も作る側だから理解は出来るけども。
手伝えることあったら言えよ。
手が届かないところだってあるだろ?」
ん、先輩。
ありがとね。
…あー、このあともうちょい盛り上げた方がいいかな。
「あんまりやり過ぎたら大オチに苦労するぜ?
そういう時は大人らしく溜めるところだろ?」
そんなこと言われたって、これ少年誌どころかもう一つ下の年代の雑誌の連載作品よ?
大人らしさ出してどうすんのさ。
「マジで?この感じで?
俺もちゃんと読んでるけどよォ、流石に子供向けだとは思ってなかったわ。」
マジだって。
雑誌で読んだら笑えるよ。
シリアスな漫画が、うんこで笑わせようとする漫画に挟まれてんだから。
「大分シュールだな。
ディーンはオシャレな絵な漫画なのに、ページめくったらけつ丸出しの子供が大はしゃぎしてんのか。
編集部はそれでいいのか?何か間違ってないか?それ。」
知らないよ。
ま、自分なりに全力を尽くすしかないからね。
「それもそうな。
…おっと、姐御がこっちを睨んでるわ。
そろそろ戻ろうぜ、タケ。」
うん。
◆
お邪魔します。
なんやタケ、音楽流してるのなんて珍しいやんか。
「そうかもね。
昔よく聞いてたバンドなんだよ。
CD引っ張り出したのよ。
次の次の曲が一番有名だったから、それのサビを聴いたらモーさんも分かるかもよ。
これ、CDジャケット。
見たことないかな。」
…あー、あるかも。
どこで見たんやろ。
こういうの、デジャブって言うんやっけ。
めっちゃ最近見た記憶になってるわ。
「結構前のアルバムだから、当時じゃない?」
そうかもなぁ。
…あれ?デルタ君は?
「出掛けてるよ。
幽霊の友達に会ってくるんだって。
じゃなきゃ…聴けないよ。
モーさん、本当に聴き覚えない?
このバンド。
デュールっていうんだけど。」
…えぇ?
そんな音楽聞かんからなぁ…。
アニメ関連の部署なら山ほど聴かなあかんねんやろけど、漫画に音は流れへんからな。
仕事に関係ないとなかなか…。
ん?
いや、あるわ。
この子だけ見たことある。
しかも多分テレビとかや無くて仕事で。
なんやタケ、知ってたんか、ボクが仕事してたこと。
いやー、知らんだなんて悪いこと言ったな。
「知ってたよ。
だって、この人たち、ディーンのアニメ化のOP歌う予定の人たちだもん。
それに…。
そのブックレット開いて。
3ページ目に大きく写ってるその人、ミカドタケトって人が劇奏もやる予定だったんだ。」
あー、そうやそうや。
記憶が掘り起こされて来たわ。
そういや、あんときタケがリクエストしたんやったな。
デュールってバンドが良いって。
「うん…………で、ね。
この写真見て。」
これはアレやな。
デルタを撮ったと言い張った写真のアレやな。
何も写ってない、物件写真かってシリーズのやつ。
結局これに描き出してポストカードにしたから無駄にはならんやったけど。
これがなんや?
「その中に一枚ボツ写真あったでしょ。
人っぽいものが写っちゃってるからって。」
あった。
謎のロック兄ちゃんが写ってた…。
マジやん。
この人やん。
ミカドさん。
「そう。
その人ね、もう亡くなってるんだよ。
事故だってさ。
デルタを写したつもりのところに写ったんだ。
ミカドさんが亡くなってるなら…多分そのミカドタケトさんがデルタだよね。」
…断言はせんけど、そうかもな。
じゃあ、奇跡やな。
「何が?」
ブックレットの一番後ろに漢字表記で名前書いてあったわ。
三角 丈人。
サンカクさんや。
デルタって三角形やろ?
ギリシャ文字で。
「本当だ。
適当に付けたんだけどなぁ、僕も、アイツ…タケトさんも。」
デルタでええよ、これからも、多分。
デルタって呼んだ方がええ。
「そうかな。
そうかも。」
うん。
そうやと思うわ。
◆
「タケトぉ、暇。」
なんだよ姐御。
俺は今仕事してんの!
邪魔すんなって。
「漫画読んでるだけじゃん。」
あのな、俺たちみたいなマイナーもマイナーなバンドの曲をわざわざ使ってくれようっていう神様みたいな作者様の作品ぞ?
ちゃんと意を汲んで、邪魔せず最高の音を届けたいじゃん!
「まっじめー。」
そりゃそうだって。
作者さんから貰ったんだし、この本も。
ちゃんと手紙も付いてたよ。
「なんて?」
どうか、楽しんで、ってさ。
信頼を感じるだろ?
やる気が出たよ俺は。
OPも劇奏も全力を尽くすよ。
だから姐御も良いベース弾いてくれよな。
先輩も、ドラム、頼むよ。
「分かってるわ。
タケ、お前が漫画独占してるから、俺らはまだざっとしか読んでないんだよ。
どんな感じかお前なりに説明してくれよ。
お前の中のディーン像に合わせるから。」
はっはっは!
今の俺ならいくらでも語れるぜ?
先に到着しちゃうんじゃないかな。
「到着まで3時間ぐらいあるんだけど。
ま、暇つぶしには丁度いいかも。
聴かせてよ、タケト。」
お任せあれ。
始めての大仕事だぜぇ。
しかも客は俺らのファンだ。
最高のモノをお届けしないと、死んでも死に切れないね。
未練が、残るわ。
ははは。




