4/7
第四話 椅子を削る猫
工房の日当たりの良い一角には、椅子がある。背もたれのある、古い揺り椅子だ。
いつの頃からなのか、猫の爪痕が年輪のように刻まれている。
ぎぃ……ぎぃ……と、老魔法使いが座る椅子が小さく揺れた。
「……なんでじゃ……なんで毎回、ワシの椅子なんじゃ……」
カリリ……、カリリ……と、乾いた音が重なる。
「師匠の居眠り椅子は、猫にとっては爪とぎ椅子、ということですね」
猫は答えない。
代わりに
ガリガリガリガリ……!
「なんでじゃあぁ〜……!」
爪を研ぐ音は、しばらく続いてから、ようやく止まった。




