第53首
第53首お届けできました。
第53首
塀の上
キコキコキコと
ついてくる
幼児が乗った
三輪車
短歌解説
すっかり冬になりましたね。寒いときに友人Sから聞いた話です。
その話を聞いたのは、私が大学生の時ですから、もうずいぶん昔のことです。
Sがその怪異に会ったのは、真夜中に近い時間帯だったそうです。その日友人たちと飲んだSは、その帰り道、酔いも醒めるような木枯らしに震えながら自宅への道を歩いていたそうです。
すると後方から、キコキコキコという音が聞こえたので、何だろうと思って振り返ると、4,5歳くらいの男の子が三輪車をこぎながらついてきていたそうです。
こんな夜中の寒空の中、まだ遊んでいるなんてと、まだ酒が抜けきっていない頭で、その光景を別に異常だとも思わなかったそうです。
その男の子を見ると、空ろな目でSを見上げてきたそうです。Sは気味悪くなって前を向いて足早に歩き出しました。すると、まだキコキコキコという音は背後から付いてきました。
しかし、不思議なことに背後の斜め上の辺りから聞こえているようでした。恐る恐る振り返ると、道の横にはブロック塀が続いていたのですが、そのブロック塀の上を男の子が三輪車をこぎながら付いてきていたのでした。
もちろんブロック塀は普通の物ですから、幅は10センチほどしかありませんから、そこを三輪車をこいで走ることなど不可能です。
Sが男の子を見たとき、男の子は空ろな目のままニヤッと笑ったように見えたそうです。
Sは、「うわぁ」と大きな叫び声を上げて全速力で走って逃げたそうです。
Sから聞いたこの話に似たような体験談は、その当時ラジオの恐怖コーナーにも多く紹介されましたので、Sの話の真偽は分かりません。
ですが、この話をしようと思ったのは、つい先日飲んで帰る夜中の道で、背後からキコキコキコという音が聞こえたからです。
ええ、もちろん振り返ったりはしませんでした。もしそれが三輪車に乗った男の子の霊ならば対処の仕方が分かりませんもん。
残り47本
酔っているにもかかわらず、久しぶりに走りました。




