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45/56

第45首

第45首お届けできました。

第45首


某トイレ

鏡に映った

男の霊

映るはずはない

そこにそれはない


短歌解説


 私が、大学の時の友人から聞いた話です。

 仮にこの友人をK男としておきます。

 K男はドライブが好きで、よく彼女を乗せて車を走らせていました。ただし、秋から冬にかけては、まだ良いんですが夏の暑い季節になってくると、ドライブが苦行のようになるのだそうです。なぜならK男の車のエアコンが壊れたままになっていたからです。 それなら修理すれば良いではないかと進言したのですが、修理する金が無いと言っていました。ですから、夏場の間は夜中に窓を開けて外気を取り込みながらドライブをしていたそうです。

 そんなドライブを楽しんでいた夏のある日の真夜中のことだったそうです。

 K男は彼女と一緒に、N松原という松の林が道の両脇に続いている道路をドライブしていたのですが、途中で彼女にトイレに行きたいと言われたそうです。

 幸いにもそれから数分走ったところで、公衆トイレを見つけ、そのトイレの2台分くらいしかない駐車スペースに車を止めたそうです。

 車から見た公衆トイレは、設置されてから年数がたっているようで、お世辞もきれいとは思えなかったそうです。照明はちゃんとしているようで、トイレの入り口から中の方も明るく照らされていたそうです。

 彼女が行ってくると、トイレに入っていったので、K男も自分もついでだと思って男子トイレに入って用を足したそうです。

 すると突然、彼女の悲鳴が聞こえたそうです。

 K男は咄嗟に変質者が彼女を襲ったのではないかと思い、慌てて女子トイレに駆けつけたそうです。

 すると彼女が女子トイレの入り口の方を向いて、身体を縮こまらせるようにしてブルブル震えていたそうです。

 K男は、そんな彼女を抱きしめ、何があったんだと聞いたそうですが、彼女はトイレの洗面台の方を指さしながら、「か、鏡に、男の人が」と震える声で、何回も繰り返したそうです。

 K男は、彼女の悲鳴を聞いてから駆けつけるまでに誰にも出会わなかったので、もしかしたら幽霊かもと思ったそうです。なぜなら、そのN松原では霊の目撃例があったからです。

 K男は自分も霊を見たらどうしようと恐怖を感じながら、彼女が指さす方を見ました。しかし、K男が鏡に映る霊を見ることはありませんでした。

 なぜなら、洗面台の上には、そこに鏡を貼り付けていた痕跡はあったものの、鏡自体は無かったのだそうです。


残り55本


その話を聞いて数日後、例のOと行ってみました。場所が女子トイレなので、人が来ないか用心しながら(見つかったら変質者と疑われるので)入ってみました。確かに洗面台の上の壁には、かつて鏡が貼りつけられていた痕跡(周りと壁の色が違う)はありましたが、鏡自体はありませんでした。



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