第29首
第29首
第29首
足ひかぬ
山のアケビを
求めたが
眼下に広がる
青色の池
短歌解説
私自身の実話です。
ホラーというよりファンタジーに近いかもしれません。
小学生の頃、近くには簡単に登れる山が何カ所もありました。
山にはアケビが自生していましたので、秋の頃にはアケビの実を取りに山に入ることがありました。
アケビを食べたことがある人は分かると思いますが、食べるときには多少面倒くさいのですが、口に入れるとほんのり甘く大変美味しく感じられます。お小遣いの少ない少年たちにとって格好のおやつでした。
ですから、そろそろ実がなっているかなという時期には、他の者が収穫してしまわないうちに見つけ出そうと、少人数の気の合う仲間と山に入っていました。
6年生の時でした。アケビ取りに行こうということになって、自転車に乗って山の入り口に向かいました。入り口には自転車なども置いていなく、幸いにも他の者は誰も来ていないことが分かり、収穫の期待でワクワクしました。山の入り口は一つでも、人一人が通れるような道は途中で別れていましたので、私たちはそれぞれに別れてアケビの実を探しました。
私が木立を抜けたときです。思いもしない光景が目の前に広がっていました。
コバルトブルーの池が山の中にあったのです。池の対岸までは30メートル程あり、横の方は、もやがかかったようになって見えませんでした。
えっ? なんで池が? と思いました。
じっと見ていると吸い込まれそうになったので、慌てて来た道を引き返しました。
仲間と合流したときには、アケビが幾つ取れたかが話題がメインとなり、誰も取れていなかったので、まだ時期が早いんだろうと来週再び挑戦することになりました。
私は山の中で池を見たことを仲間には話しませんでした。
翌週、再び山の中に入った時、私は池を見たことを話し、興味を示した仲間を伴って、先週歩いた道を進みました。しかし、この辺りだったろうと思う場所に着いても池はありませんでした。更に進んでも水たまりさえありませんでした。
目の前にあんなに広がっていたコバルトブルーのきれいな池が、たった一週間で消えてしまうなんて。
私は驚きました。そして焦りました。仲間が私の話を嘘をついたと思いはしないかと。 でも、仲間はそんなことを気にせず、水が蒸発したんじゃないと言ってくれました。
しかし、あんなにきれいな水をたたえていた池が消え去るなんてあるのでしょうか?
静岡県浜松市の亀ノ甲山に、七年に一度現れる幻の池があるそうですが、私が登った山には、そんな伝承もありません。
気になって中学生になってからも行ってみましたが、やはり池はありませんでした。
では、私が見たあの池の正体は何だったのでしょうか? もしかして私は霊界の池を見たのでしょうか? いや、池じゃなくて三途の川?
冒頭でファンタジーに近いかもと書きましたが、やはりホラーの要素が強いようです。
あ、それから「山」の枕詞が「あしひきの」ということくらいは知っていますよ。足を引きずって登るほどの高い山ではありませんので、わざと「あしひかぬ」としています。
残り71本
今更ながら、念のためグーグルマップで調べてみました。やはり池はありませんでした。




