第4話 ネグロ
──前回の終わり方を見てこう思った人、一人はいるんじゃないでしょうか(そんな見てないか)
いや、どんな終わり方だよ。
──と。
すみませんね、あそこで一先ず終わりとなってしまうんですよ。
実はあの後シルフォがそこに残り敵と対峙。
そこから一人ずつ減っていって……最上階、22階に着いた時にはもう俺しかいなかった。
何せ他のモブ達は一階に数人ずつ残ったからね。
何だよビワの連中。バカじゃねぇの?
「さてと……どうすっかなぁ」
俺の目の前にはいつも通りの大きな部屋の扉がある。これを開ければ恐らくアシュレイドが居るだろう。
だけど、アシュレイドが必ずしも一人とは限らないんだ。二箇所目が既に違ってたし。
つまりだよ? 俺別に強くないから一人でやるのが不安な訳なんだよ。
逆に言うと、今まで残った皆全ての相手がアシュレイドじゃなかったんだよ。この世界の住人だったんだよ。
戦闘が出来るように訓練された唯の人間……だったと思うんだよ。普通に武器だったし。
「ん? あら? ありゃりゃあ~?」
軋みながら独りでに開いていく扉。なぜ? 怖。
「よ~こそビワの戦士よ。我が国に侵入し、隊を攻撃するとは無礼な連中だ」
部屋の広さは恐らく過去最大で、いつもの何も無い部屋とは打って変わって大きなカーテンやデケェ窓、デケェ玉座にデケェ絵画……いやデケェのしか無ぇじゃねぇか。趣味どうなってんだ?
もしかしてデカければ王だとか思ってんの?
そしてそのデケェ玉座にはスポーツ刈りっぽいつぅか坊主っつぅか、そんな頭のおっさんが座ってる。
背後の絵画にはかつての王と思われる人物が描かれているけど、もっと優しそうな面してるわ。
「侵入したのには間違いねぇけど、それはテメェらアシュレイドをぶっ潰す為だ。どっちかっつーと隊を攻撃してきたのはテメェらだろうがよ」
……さてと、別に口喧嘩しに来た訳じゃないからさっさと戦おうと思ったんだけど、まあ予想通り一人じゃなかったみたいだ。
王の左右にそれぞれ一人ずつ。んで俺を180度囲む様にその隊っぽい奴等が数十人程……こりゃまずいね。俺死ぬんじゃね?
「アシュレイド!? グソ侵入者が何言ってやがる! 俺達はネグロ王国の国民だ!!」
俺を囲む隊士の一人が叫ぶ。怒りに満ちた声で。
「あ、ここネグロっつうのね?」
やっぱり国民は全員騙されてる訳なのね。
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そこの成りすましキングに。
知ったらうるせぇだろうなぁ。
でも騙されたまま王を倒したらそれこそ恨まれて……呪われるんじゃねぇかな。呪われるのはないか?
うーん。分からんな。
「あー、お前ら少し勘違いしてんだけどよ……」
「黙れぇ!!」
説明しようとしたけど、王の右側にいる鉢巻の巨漢に掻き消された。
なるほどな、中心の3人がアシュレイドか。
だけどこの人数とこの状況……どうやって勝つってんだ? 囲まれてるし。
国民は銃だの剣だの構えてやがるし、王は薄ら笑い浮かべて余裕ぶっこいてやがるし、何より左右に居る二人の殺気がすげぇ。
強そうだなぁ……。これって他の奴等待った方が良いんじゃねぇか?
「皆の者! 照準を合わせろ!」
「はっ!」
巨漢の指示で銃を持つ国民が一斉にしっかりと狙いを定める。
──ダメだこりゃ。待たせてくれそうにもないな。
死ぬかも知れねぇけど、先に始めさせてもらうぜ皆。
巨漢の男は玉座のある段差を三段全て飛び降り、俺へ人差し指を向ける。
人を指差すんじゃありません!
「他のゴキブリ共がやって来る前に此奴を始末しろぉ!!」
「あらまヒデェ」
何だろうな……敵全体が引き金をもう引きそうな感じなのに、前の時ほど緊張もしねぇし怖くもねぇ。
今なら、全てに勝てる気がする。気がするだけ。
俺は既に持っていたビジョン・コントローラーを構え、中心のスイッチを押す。
「ビジョン・クローズ・オン!!」
久々の変身だぜぇ。そうでもねぇぜぇ。
「撃てぇ!!」
「シャドウ・ビジョン!!」
ーーシャドウ・ビジョン ニンショウシマシターー
俺は消え、逆に身代わりとなる為出てきた影と共に走り出す。
──が、当然全ての弾を『影』の俺が受ける事になる。すまんね何か。
「はっはっは!! ザマァねぇなぁビワのガキ!!」
影の俺が倒れ、倒したと思い込む巨漢は高笑いを上げている。
だけど残念ながらそれは俺じゃねぇ。俺だけども俺じゃねぇ。俺の影なんだけど俺なんだけど俺でもねぇ。
意味わからんやめとこ。
俺は自分の影が消えると同時に巨漢の顔面を蹴り飛ばした──。
「ごがぁあ!?」
「残念だったな木偶の坊!」
超絶に決まった……!! とか思ってる暇はないみたいだ。
何せあの巨漢、結構本気の蹴りを入れた筈なのにあんまり効いてなさそうなんだもん。
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その上他の連中も再び俺に銃を向けて来る。左側の服から延びたマスクを着けている奴も王も全員俺を睨みつけている。
今度はうまく行かない気がするけど、巨漢の奴も国民も俺が見えてなかった。もう一回使って国民達先に気絶でもさせといた方が良いかな。
「シャドウ・ビジョン……!」
「うらぁああ!!」
「おわぁ!?」
ーーシャドウ・ビジョン ニンショウシマシターー
発動直後に思い切り吹っ飛ばされたけど、何とか出来たみたいだ。
影、なるべく耐えといてくれよ。
『任せろ俺、なるべく当たらねぇようにすっから』
俺は影が逃げ回っている間にストップボタン(俺命名)を押し、時間を止める。
そして一人ずつ失神させていく。ごめんね。邪魔でよ。
俺が数十人全員を部屋から閉め出すと、影が消えた。
「ま、今は時間止まってるから解ける前に全員なるべくぶっ飛ばして……」
巨漢をぶっ飛ばそうと近付いて行きながら、俺はある事に気が付いた。
さっきまで王の隣で俺を睨み付けていたマスクの男が居なくなっている。
「あれ? アイツどこ行ったんだ?」
王も巨漢も止まってるのに……アイツだけいない。
間違って閉め出したとかあるか? それはそれで良いんだけどさ。
まあ時間終わっちゃうし早く巨漢ぶっ飛ばすか。
「お……どわぁ!?」
何かに打撃を入れられ、俺はカーテンに激突する。
あんまり痛くないね。
それより何だ!? 何があった……!? ──つっても、何となく分かるよね。
いつかまたウォーブみたいな奴が出て来るとは思ったんだけどさ……まさかボスじゃねぇ奴とはね。
「警戒心弱過ぎじゃないか? お前。その身のこなしの悪さ……お前はビワの人間じゃないな?」
「ご名答……!」
マスク野郎はストップが効かねぇらしく、俺が使用した直後から動き出していた。
つまりはビジョン・コントローラーの真髄が効かねぇ訳だから、物凄くやりたくねぇ相手だ。
電話のコール音のようなものが響き渡り、ストップが解除される。まさかの俺がダメージ受けただけ。
まあ、何十対一から3対1にはなったけどさ。
「うお!? 隊士達はどこに消えた!?」
「残念ながら御退出願いました」
巨漢の男と王も動き出す。最悪だぜ。
マスクの男は巨漢と王の方に掌を向け、止まるよう声をかける。
「こいつはお前達にとって厄介な相手だ。俺がやる」




