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君のいない灰色と//異世界  作者: シマミ
機奇怪械編
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第192話〜機奇怪械編㊼//同じ青の上で〜


『ミチオ! ここから先は、()に……!』


「イメージ通りにやってくれ! そうすれば幾らかは保つ!」


 雲の先、何一つ無い青空の中、道夫は全身を結晶の鎧で覆わせる。そして空へと昇る一筋の流星となって、(そら)より先へと飛び続ける。

 空を裂き、青空は次第に暗くなる。音は次第に遠くなり、今はもう自分が飛ぶ音しか聞こえない。


「……!」


 前代未聞、前人未到の瞬間に、道夫は思わず目を閉じる。それとほぼ同じタイミングで、遂には自身からも音が消えた。


〜〜


『……これが、星の外』


 静寂。その二文字が全てを包む宇宙空間。無音の果てで星が煌めく黒一色の空間で、道夫とクリスタルは背後の光景に目を奪われる。


『そしてこれが、星……』


 故郷と何も変わらない、青く大きな命の星。海の色は青く、どこを見渡してもその大地に国境なんてなかった。道夫にはその光景が、どこか嬉しくて仕方なかった。


『ミチオ、終わらせよう』


 今度こそ終わりにする。道夫は納得する様に小さく頷くと、押さえ込んでいた魔力全てを解放する。結晶の翼が更に大きく広がり、空色の光が背後に巨大な陣を描く。

 輝きを増す胸の光に手を添えて、道夫は祈る様に剣を天に掲げる。


 繋がりよ、どうか力を。


〜〜


「待ってたぜ、ミチオ!」


「僕らの力、遠慮なく使って……!」


 彼の光が胸に灯る。仲間達は空の光に向かって手を伸ばした。


「……ミチオ」


〜〜


「っ、この感じ……」


「えぇ、間違いありません。彼ですよ」


 遥か南の地、街一つを覆う大樹の下で二人の男女が胸の光に手を添える。その手に温もりが、光を通じて彼へと届く様祈って。


〜〜


「?……」


 青空にポツンと浮かぶ夜空の下、刀を携えた青年が西の方角を見上げる。流星が空を渡る中で、彼は空に一際輝く光を見た。


「……ミチオ?」


〜〜


「この感じ、分かるぞ。ミチオ!」


「ウチらで良いんなら幾らでも使って、ミッチ」


「どうか、届いて……!」


 薬の材料を届けに来た三人は、遥か遠くの青空を見上げる。そしてそこにもう一人、静かに両手を組んで祈りを込める女性がいた。


「私達も祈るわ。だから必ず、帰って来て……!」


〜〜


『すごい……光が届く度に、力が!』


 星から伸びる光が道夫の中に入り込むと、翼の光が黄金色へと変わっていく。その光から湧き立つ熱は、彼を宇宙の寒さから守ってくれていた。

 下では黒い点がその大きさを増しながら近づいて来ている。さながら光に誘われる蟲の様に、アレストは道夫の元へと接近を開始したのだ。


『でも一つ……後一つだけ、足りない、足りてない!』


 心配ない。道夫は胸の中の『魔ヲ断ツ白(トアイコルス)』を発動させる。宇宙に光る小さな白は、道夫の腕ごと結晶の剣を包み込む。

 光の中で剣が砕け散ると、光が反射で煌めいてまた一つの剣へと作り替えられた。


『その剣、は……』


 それは一言で表すなら『白』、混じり気一つ無い純白の剣であった。記憶を取り戻した彼女が使った聖なる剣。その刃に残る思い出を覚悟に変えて、道夫はその柄を両手で握る。

 握った瞬間、両腕が少しずつ白に変わっていく。身体の中からガラスの破片が生え出す様な鋭い痛みの中で、彼は剣に力を送り込み続けた。


『っ!? 鎧が……!』


 魔力を吸われた事で顔を覆った結晶に亀裂が走る。道夫は掲げた剣の切先を迫る黒点に向けた。

 未だ成長を続け、遂に星を飛び出したアレストはその目蓋を開いた。中にあった『目』が道夫を直視するが、今の道夫(かれ)はそんな事では揺らがない。


『今!放って!』


 クリスタルの声に道夫は剣を横に捻る。それを引き金に溜めていた力が光の奔流となって放たれたその時、自らを侵す『白』に呑まれた右目が、全く異なる風景を映し出した。

 見覚えのある街並みの外れ、雪の中クリスマスを告げる大型ビジョンに照らされる森林公園の中、木にもたれかかる様に倒れるボロボロになった機械人形の姿。


「たすけて……」


(っ、今のは……)


〜〜


 その日、青空が白に染まった。空から放たれた白き光は宇宙にまで迫ったアレストを消し飛ばし、光は更にホズバグ大陸全土へと広がっていった。

 その光は敵を跡形も無く消滅させ、そこにいた人々さえも呑み込んでいく。だが身体が消滅する事なく、ただ優しい温もりが全身を包み込んでくれていた。


「この光は……」


「えっ……!? あ、あれは……!」


 中央星堂の中で鳴井が見たのはアレストがいた場所に塔の様に立つ、雲を突く程に巨大な結晶と、そこを中心に広がる白い荒野だった。


「……終わったんだな」


「そう、みたいだね……」


 ビルにいたクライスやアレンもその光景に唖然とし、同時に何もかもが終わったのだと確信する。


「ミチオ、やったんだね……って言ってる場合じゃないよ! みんな早くミチオを迎えに……!」


 道夫の元へ駆けようとしたナナシだったが、何故か他の皆はその場から動こうとしない。後ろへ振り返ってみれば、誰もが怪訝な表情を見せていた。


「ナナシちゃん、ごめんなんだけど……」


「ミチオって、誰のことだ?」

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