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ある日、鬼を拾いました。だけど早速捨てたいです。  作者: ことりおと


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7/40

7 いつの間に?


 今日は遅番で、仕事が終わったのは22時過ぎだった。


「このあと、飲みに行かない?」

「いいよ」


 スタッフルームで吉野くんに誘われて、そう返事をした。


 凛は……別に大丈夫だよね?


 私たちは帰り支度を済ませると店を出た。


「モモッ」


 ……凛がいた。


「なんで……」


 凛は私の腕を掴んだ。


「帰るよ」

「いや、私今から飲みに──」

「飲みたいなら家で飲めばいいだろっ?」


 いやいや……


 何をムキになってんの。


「帰るよ」

「ちょっとっ」


 凛は力強く私を引っ張った。


 力すごっ……。


「放してっ」

「……」

「放してってばっ」

「やだっ」


 やだって……


 凛、怒ってる……。


「吉野くんごめんっ。今日は帰るねっ」

「あ……うん。またね」


 こいつ……やっぱり男に敏感だ。


 凛は繁華街を、ずんずんと進んでいった。


「ちょっとっ。あんたツノ出てるよっ?引っ込めてっ」

「モモが僕以外の男と仲良くするから……」


 だからそれって……


「モモがいけないんだ」

「なんでよ……」

「僕以外の男と仲良くすんな」

「……私のこと好きなの?」

「好きじゃない」


 じゃあなんでよ……。


「何で私の職場を知ってるの?」

「モモのお母さんに聞いた」


 ……お母さん……教えちゃったのか……。


「なんで店に来たの?」

「心配だったから」

「大丈夫だよ?」

「だめ。夜は危ないから」


 家に帰るまで、凛はずっと私の腕を掴んでいた。電車の中でも、家までの帰り道でも。


 ずっとムスッとした表情で、途中からは黙ったままだった。


 季節はもう夏になろうとしている。


 凛のペースで歩くと、ベタッとした汗がじんわりと滲み、とても気持ちが悪かった。


 家に着き、凛は部屋に入ると……


「あいつ誰?」


 すぐにそう聞いてきた。


「ただのバイトだよ」

「……仲良さそうだった……」


 すると凛は私をベッドに押し倒した。


 凛はツノを出したまま私のことを見下ろしていた。


「凛……」

「好きじゃない」

「わかったから」

「モモは僕のこと好き?」

「……好きじゃない」

「僕もモモのことなんか好きじゃない」

「だったらもうどいて」

「……」

「どいてよ」


 なんだよ……こいつはホントにもう……。


「……なんで僕のこと好きじゃないの?」

「は?」

「なんで?」

「なんでって……そもそもタイプじゃないし」


 凛はツノを引っ込め、すぐに私から離れた。その表情は見えなかった。途中から凛は、私に頭頂部を見せつけるかのように、項垂れていたから。


 もう……どうすればいいの?こいつ……。


 難易度高すぎ。


 ベッドに押し倒すとか、一体何考えてんの?


 凛のあの給料なら、数ヶ月もすれば引っ越し代貯まるよね?安いアパートだったら十分に足りるよね?早く追い出さないと。


 私は凛から受け取った給料から必要な分だけを抜くと、あとは手をつけずに取っておいていた。


 だからそれが貯まったら……。


 凛は私から離れたあと、家を出て行ってしまった。


 このままもう、帰ってこなきゃいいのに。


 まぁ……もういいや。


 放っておこう。


 だけど結局凛は、5分もしないうちに帰ってきた。




 それからはまた、日常に戻った。




「おかえり」

「ただいま。はぁ……疲れた」


 本当に疲れた。しかし、なんでうちの店はあんなに混むんだ?他の店舗はちゃんと波があるのに、うちの店はオープンからわりと忙しい。まぁ、場所が場所だしな。仕方ないか。


「お疲れさま」

「凛も疲れてるでしょ?体を使う仕事だし」

「全然。鬼だから体力もある」

「……そうなんだ」


 鬼ってすごいな。私も鬼の血が欲しい。


「明日休みになった」

「そうなの?私も休みだから一緒に実家に行く?」

「行く」


 母が凛に“会いたい会いたい”とうるさかったから、連れて行くことにした。


 でも母は凛としょっちゅうビデオ通話をしているようだった。


 それはこの前判明した。


 ある時家に帰ると、凛の楽しそうな話し声が聞こえてきた。それはこんなふうに──


「またお母さんの、手作りお菓子が食べたいな」


 え?“お母さん”?


『嬉しいこと言ってくれちゃって。またいつでもおいでね。凛くんひとりで来てもいいんだからね』


 ……お母さんの声だ。


「ありがとう。でも行くならモモと一緒に行くから」

『ふふっ。本当に仲良しさんね』

「うん。仲良しだよ。この前ちゅーしたんだ」


 は?


 お前が勝手にしてきたんだろーが。


『あらあら。らぶらぶなのね』

「これらぶらぶなの?」

『だってちゅーしたんでしょ?』

「ふふっ」


 こいつら2人とも頭沸いてんな。


 そこで私は部屋に入った。


「ちょっとっ。あんたなんてこと言ってんのっ。お母さんもだよっ」

『あら桃。おかえり』


 画面の中の母はそう言った。私は通話を強制的に終わらせ、凛に聞いてみた。


「なんでお母さんと電話してたの?」

「なんでってお母さんと話したいから」

「あんたから電話してんの?」

「ん?こっちからもするし、かかってもくるよ?」


 ──と、まぁ、こんな感じのことがあった。


 私よりも早く家に帰ってくる凛は、その時間に母としょっちゅう電話をしていたようだった。たまに弟の楓とも。


 なに私の知らないうちに、仲良くなってんだよ……。


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