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ある日、鬼を拾いました。だけど早速捨てたいです。  作者: ことりおと


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40/42

40 取られる


 今日はみんなで私の実家に行く日だ。


 ヒロくんと安藤くんの2人に合流すると、早速電車に乗り実家へと向かった。もちろん凛もいる。


 家に着くと、母が温かく出迎えてくれた。


「いらっしゃい。どっちがヒロくんで、どっちがナオくん?」


 母はそう言った。

 

 “ナオくん”とは安藤くんのことだ。安藤くんの下の名前は直弘だと、事前に伝えていたから母はそう言ったのだろう。


 それを聞いたヒロくんは自己紹介をしていた。


「初めまして。吉野裕人(よしの ひろと)です」


 安藤くんも続けて挨拶をしていた。


「ママっ、ただいまぁ」


 そう言ったのは凛だった。


「凛くん久しぶり。元気にしてた?ずっと会いたかったんだからぁ」

「僕も会いたかったっ」


 凛と母は楽しそうに話していた。


 そこへ安藤くんが私に近づき、耳元でコソッと話しかけてきた。


「本当に立花さんのお母さんは、凛くんのことを鬼だって知ってるんですか?」

「うん。知ってるよ」


 私がそう言うと、安藤くんは「本当に……」と呟きながら、驚いた顔をしていた。


 そこへヒロくんが話しかけてきた。


「モモちゃん家って、でかいんだね。すっげ、天井高っ、部屋広っ」


 リビングに入ったヒロくんは興奮していた。


「もしかしてモモちゃんちって金持ち?」

「私は金持ちじゃないよ」

「親が金持ちとか羨ましい」

「でも私は金持ちじゃないよ」


 帰った時間が昼時だったから、みんなでお昼を食べた。弟の楓も学校が休みだったから一緒に食べた。もちろん楓にも凛が鬼であることを内緒にするように、予め話しておいた。


 楓はすぐにヒロくんや安藤くんにも懐いていた。


 母はみんなに気遣い、もてなしていた。


「お母さん、妖怪図鑑の話をモモちゃんから聞いたんですけど、見せてもらえませんか?俺そういうの大好きなんで」


 ヒロくんは母にそう言っていた。


 母はそれを聞くと嬉しそうにしていた。


 それから母とヒロくん、安藤くんと凛と楓は楽しそうに妖怪図鑑を見ながら話していた。


 私は仕事の疲れが残っていたから2階の自室へと向かった。


 ベッドに寝転ぶとすぐに目を閉じた。


 あー……疲れ溜まってんな。


 安藤くん、大丈夫かな……。


 でもさっき、母と楽しそうに話していたし。


 家に着いてすぐは緊張していた様子だったけど、お昼を食べ終わる頃には肩の力が抜けたように見えた。


 大丈夫だよね……?


 本当は私がそばにいないといけないことはわかってるけど、ごはんを食べたら急激に眠くなってしまった。


 私はそんなことを考えているうちに、眠りについた。


 次に目を覚ますと、目の前には凛がいた。


「……なにしてんの?」

「モモ見てた」

「なんで?」

「見たかったから」


 ……。


 本当にこいつ、成長してんのか?


 寝起きのぼーっとした頭でそんなことを思っていたら、凛が私を抱き寄せキスをした。


 当たり前のように、それはすぐに深いものになった。


 でも……ここ実家。


 私は凛の胸を押し返した。


 あれ……?


 押し返せない。


 こういう状況なら、凛はやめてくれると思ってたのに。


「凛、やめて」


 唇を離すと、私はそう言った。


「なんで?」

「下にみんないるんだよ?」

「だから?」


 次に凛は私の両側に手をつき、覆いかぶさってきた。


「こら」

「……」


 ん?


 なんか凛の様子が変だ。


 少し泣きそうな顔をしてる。


「どうしたの?下で何かあった?」

「……」


 凛は何も言わなかった。


 その時──


 ドアがノックされた。


「凛くん、こっちにいる?」


 母の声だ。


「うん、いるよ。でもドア開けないでね。今モモと──」

「なにっ?お母さんっ?」


 こいつ、今何を言おうとしたんだよ。


 なんだか嫌な予感がして、凛の言葉を遮るように私は母にそう聞いた。


「おやつにケーキがあるから、下りてきて?」


 母の声に、凛は私よりも早く返事をした。


「わかったぁ。終わったら行くね」

「あらあら。そういうことね。ふふっ」


 ……。


 は……?


 ……クソ……。


 なんなんだよこいつらは。


 凛は“終わったら”としか言ってないのに、母は何か察したようだった。


 なんでお母さんも凛も、そんな普通にしていられるの?


 ホント変人……。


 結局私は、凛に流されてしまった。


 その間も、凛はずっと不安そうな顔をしていた。


 絶対なんかあったな?


 私は乱れた服を直しながら、凛に話を聞いた。


「どうしたの?何かあったんでしょ?」

「僕いつも……」

「なに?」

「……」

「凛?」

「……モモと別れたら、僕ひとりぼっちになっちゃう」

「……別れないよ?」


 いきなりなに?


「凛、どうしたの?」

「モモが取られる。モモの家族も取られる」


 え?


「ママも楓も、ヒロくんと安藤くんに取られる。

2人ともあっという間にモモの家族と仲良くなった。僕のなのに……モモもママも楓も僕のなのにっ……」


 ……嫉妬か……。


「凛、大丈夫だよ。私は凛が大好きだよ?みんな仲がいいのはいいことでしょ?取るとかそんなんじゃないよ?」

「……うん……」


 私がそう言うと、凛は切ない顔をした。


 凛もいろいろと考えてるんだな……。


 それで不安になったりして、少し強引になったり、わがままになったりするんだ……。


 私の部屋に来たのも、きっとヒロくんたちが私の母と仲良くなったのを見て、不安になったからなんだ。


 なんとか凛を励ますと、私たちは1階に下りた。


「ナニしてたの?」


 私に近づいたヒロくんは、ニヤニヤとしていた。


「昼寝。私疲れてんの」

「ふーん」

「何?」

「別に?」


 ヒロくんはやっぱりニヤニヤとしていた。


 それから私の耳元に口を寄せると、コソッとこう言った。


「声、聞こえてたよ?」


 私はそんなことはないと思いつつも、驚いてヒロくんの顔を見た。


「ははっ。うっそーん」


 このヤロー……。


「……性格悪いね、ヒロくん」

「まぁね」


 そう言うヒロくんは、やっぱり楽しそうにしていた。


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