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ある日、鬼を拾いました。だけど早速捨てたいです。  作者: ことりおと


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30/38

30 告白


 職場に着くと、すぐに安藤くんも出勤してきた。


「おはよ」

「おはようございます。あ……あの……」


 安藤くんは俯き、両手はそれぞれ握り込まれていた。


 ……その姿はやっぱり、少し怯えているように見えた。


「この前はすみませんでした。なかなかシフトが合わず、謝るのが遅くなりました」

「大丈夫だよ」

「……ちょっと……2人きりで話したいことがあるんですけど……」


 2人きりか……。


 この前のこともあるし、どうしよう。


「あの……今、手短に話したいことを言いますね」

「うん」

「助けてほしいんです」


 助けてほしい?


 要点を言われてないから、何もわからない。


「どうしたの?」

「立花さんの彼氏って……その……もしかして……いや、やっぱりこんなこと……」


 ……なに?


 ハッキリしないな。


「もしかして知り合いなの?」

「いえ」


 じゃあなに?


「……匂いが……」


 は?


 匂い?


「私、臭い?」

「……いえ……そうじゃなくて……」


 一体なんなの?


 ……。


 …………。


 ……匂い……?


 まさか……鬼の匂い……?


 だけどそんなことは聞けない。


 万が一、間違っていたら……。

 

 自ら危険なことは発したくない。


「……彼氏と……その……うまくいってるんですよね?」


 なんでそんなことがわかるの?


「……まあ……」

「彼氏のこと、好きなんですか?」

「……好きだけど……」

「彼氏のことを、どこまで知ってますか?」


 どこまでって……


 なにこれ……。


「彼氏の全部を知っているんですか?付き合ってどのくらいですか?」


 全部……は、知らない。


 だいたいは知ってる……と、思う。


「なんで?」

「知っているんですか?」

「……全部は知らない」

「……」


 安藤くんはそこで黙ってしまった。


 やっぱり“鬼”のことを安藤くんは言ってるんじゃ……。


 前に凛は、私から鬼の匂いがするから、鬼が近寄ってくるかもと言っていたこともあったし……。


 安藤くんも、もしかしたら……。 



 だったら……一か八か掛けてみるか。



「……ハーフ」


 私の言葉に、彼は目を見開いた。


「え?」

「彼はハーフ」

「……それって……」


 その時、他のスタッフが出勤してきた。


 ……。


 やっぱり安藤くんも……?


 安藤くんがもし、鬼のハーフだとすると、凛と同じようにきっと鬼の匂いを感じていたはずだ。


 さっき“匂い”と言っていたし。


 それに“助けてほしい”?


 なにか困ってるんだ。


 安藤くんは、鬼の話がしたいから2人きりがいいんだ。


 朝礼を済ませると、他のスタッフをホールやキッチンに送り出し、安藤くんと休憩室で2人きりになった。5分くらいならいいだろう。


「……ハーフって、“何”とのですか?」


 安藤くんは“何人”とは言わなかった。“何との”と聞いてきた。


 なんて答えよう。


「なんでそんなに気になるの?」

「……今までに何回か見かけたんです。彼氏が迎えにきてるところ。それで……」

「それで?」


 私がそう聞くと、安藤くんは休憩室のドアの鍵を閉めた。


 安藤くんの顔は真っ青で、額には汗が滲んでいた。


 それから私の顔をじっと見た。


 すると……


 安藤くんの頭からは──



 ツノが出た。



 ……やっぱり……安藤くんも鬼だったんだ……。


「……彼氏は……鬼とのハーフなんですよね?」


 私は頷いて返事をした。


「……よかった……。俺のこと、怖く思いますか?」

「ううん。思わないよ。それで助けてほしいってのはなに?」

「……すみません。それは大袈裟に言いすぎました。あの……俺、怖いんです。それでちょっと話を聞いてほしくて」

「私の彼と3人でならいいよ」

「それで大丈夫です」



 まさか……こんなに近くに鬼がいただなんて……。



 昼休憩になり、私は凛にメッセージを送った。


 仕事が終わりメッセージを確認すると、『わかった。むかえに行く』と返事がきていた。


 店を出ると、すでに凛は待っててくれ、3人でカラオケに行った。


 ここならゆっくりと話せると思った。


 凛はすぐに匂いでわかったようだった。


 ドリンクバーで飲み物を用意し、部屋へと向かう。安藤くんは、ずっと不安そうにしていた。


 凛はなぜだかニコニコとしていて、歩きながら、メロンソーダが入ったグラスのストローに口をつけて飲んでいた。


「うんま。なにこれうんまっ」


 私の後ろを歩いている凛からは、そんな声が聞こえてきた。


 他の部屋からは気持ちよさそうに歌う歌声が漏れている。マラカスやタンバリンなんかの音も耳に届いた。


「モモー、ここ歌うところなの?」


 だまれ。


 今、そういうんじゃないんだよ。


「そうだよ」

「僕たちも歌うの?」

「違う。今日は話すの」

「ふーん。僕歌ってみたいな。最近好きな歌があってね、よくそれを聞いてるんだぁ」


 なんでこいつは、こんなに能天気なんだよ。


 安藤くんの不安そうな顔を見ろ。


 それどころじゃないだろ。


 部屋に着くとL字型のソファの短い辺に、安藤くんを座らせ、長い辺に私と凛が座った。


 すると安藤くんはゆっくりと口を開いた。


「あの……ニュースはご存知ですよね?鬼の……」

「もちろん」

「あのニュースになった鬼……俺の父なんです」


 え……?


 ……うそ……。


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