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ある日、鬼を拾いました。だけど早速捨てたいです。  作者: ことりおと


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3/39

3 拾わなきゃよかった


 次の日、凛の希望通り街中を案内した。


 凛はキョロキョロと周りを見渡しながら、子どものように色々なものを指差しながら、質問してきた。


「モモーっ、あれ何?」

「クレープ」

「あれは何?」

「電動キックボード」

「楽しそう……」

「ほらもう行くよ」

「ねぇねぇ、あれは何?」


 あーうざ。


 凛は知らないことが多すぎる。


 バスも電車もひとりじゃ乗れない。


 それに大の大人がこんな感じではしゃいでいるのも、恥ずかしかった。


 田舎者のレベルじゃない。


 まるで初めて人間界へ降り立った何者かのようだ。


 テレビは子どもの頃にはあったようだけど、凛が引っ越したいと言うようになってから、家からなくなったと言っていた。


 だからあんなにテレビが好きなのか。


 きっと色んな情報を遮断したかったんだ。村に凛を留めておきたかったんだ。


 凛の両親は、凛のことを守りたかったんだ……。


 この日はバスや電車の乗り方を教えた。


「ねぇ、ラーメン食べたい」


 どうやら凛は、お店でラーメンを食べたのはあの時が初めてだったようだ。


「ラーメンっ、ラーメンっ」


 凛はグーにした両腕を上下に振りながら、そう言った。


「わかったから」


 今度は町中華ではなく、家系ラーメンに連れて行った。


「うんまっ。なにこれうんまっ。これもラーメンなのっ?」

「そうだよ」


 凛は美味しそうに食べていた。


 それからまた街中を歩いた。


 あ、ティッシュ配ってる。


 今日ちょうど忘れてきちゃったから、もらっておこう。


「ちょっとモモッ。あの男から何もらったの?あの男、モモのことが好きなんじゃねーの?」


 は?


「ただのティッシュ配りだよ。見ててごらん?みんなに配ってるから」

「……本当だ」


 次に服屋に入った。

 

 凛は2〜3着しか、服を持っていない。何着か買ってやんないと……。


 凛は目を輝かせお店の中を見渡していた。


 私が商品を手に取って見ていると、店員さんが接客をしてきた。サイズなんかの確認をしていると、凛が走ってきて私の腕を掴んだ。


「ちょっとモモッ。こっち来て」


 私は引っ張られるままについて行った。


「なにもうっ」

「さっきの男だれ?仲良さそうにしてたけど」


 ……めんどくさぁ……。


「誰?」

「見りゃわかるでしょ。ただの店員さんだよ」

「……そっか。店員さんっておじいちゃんとかおばあちゃんのイメージだったから」


 どんなイメージだよ。


 そんなに閉鎖的な村だったのか……?


 それから何着か凛の服なんかを一式買った。


 夕方になると、今度は適当な飲食店に入った。


「凛は何がいい?」


 そう言って凛にメニューを見せるも、目を輝かせるばかりでなかなか決まらなかったから、私が勝手に決めた。


「ねぇ、今の店員、モモに笑いかけてたよ?モモのことが好きなんじゃねーの?」


 本当になんなんだよこいつは……。

 

 凛は怒っていた。


「接客っていうのは、そういうもんなんだよ」

「……そうなんだ……」

「さっきからなんなの?」

「なにが?」

「男に敏感だよ?」

「……嫌なんだよ。モモが他の男と仲良くしてるのが」


 は?


「あんた私のこと好きなの?」

「……好き……?」


 私が聞いてんだよ。


「まぁ、いいや。ほら食べよ?」


 凛は目の前に運ばれてきたハンバーグに目を輝かせた。


「うんまっ。なにこれうんまっ」


 本当に美味しそうに食べるな。


 よかった。


 あー……でも今日は結構お金使っちゃったな。


 凛が働きだしたら、キッチリ返してもらおうっと。


 最寄駅に着き、電車を降りると、家まで歩きながら気になったことを聞いてみた。


「昨日なんでツノ出してたの?」

「ん?あー……興奮したからかな?」

「興奮?」

「うん。家の引き出しを色々漁ってたら、モモのパンツ見つけて興奮した」


 …………。


 引き出しを漁って……?


 え?


 パンツ……?


「興奮すると勝手に出てくるんだよな。嬉しい時とか、怒りすぎてる時とか」


 いやいやいや。


 何平然と話の続きをしてんの……。


「人の引き出しを勝手に開けてはいけません」

「なんで?」


 なんでって……


「私の引き出しだからだめ」

「わかった」


 あー……この男を追い出したとして、ちゃんと生きていけるのかな……。


 だからといってこのまま家にいられても困るし。


 どうしよ。


 どうしたらいい?


 ……実家に……預けるとか?


 この前お母さん“犬と暮らしたい”って言ってたし、それにお母さんは鬼が好きだ。たまにそういう人がいる。いわゆる変人だ。

 

 その他の、いるかいないかわからない妖怪なんかも大好きで、母は妖怪図鑑を愛読している。


 ……いいじゃん。


 それいいじゃんっ。


 凛は、なんだか躾のなってない犬みたいだし、人懐っこいし。


 ……。


 お母さん、犬と暮らせるよ?


 よかったね。


 家に着くと早速話した。


「ねぇ、ここで2人だとやっぱり狭いからさ、私の実家に住まない?」

「モモも一緒に?」

「いや、凛だけ」

「やだ」

「実家なら美味しいごはんが出てくるよ?」

「……美味しいごはん……」

「そう」

「ラーメンも?」

「ラーメンも」

「ハンバーグも?」

「ハンバーグも。それに可愛がってもらえるよ?」


 きっとあの母なら凛のことを可愛がるはずだ。


「でもモモは一緒じゃないんだろ?」

「私は仕事があるから」

「……」

「ね?いい話でしょ?」

「……」

「ね?」

「僕は出ていかないからな」


 なんでそんな頑なに……。


 

 本当に……拾わなきゃよかった。


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